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♪乾杯ヴォルフガング
♪借金の手紙
♪パパが亡くなったわ
♪ヴォルフガングの混乱
♪影を逃れて(二幕ラスト)
……がこの衣装。

チラシもこの衣装ですし、コンスタンツェの印象が一番強いのはこの衣装かもしれません。

カーディガンを脱いでジャケットを羽織ったバージョンでの登場が、
♪ダンスはやめられない(リプライズ)
♪あのままのあんた
……となっています。

昔と今を思い比べることが多く、リプライズの歌詞はほんの僅かな差だったりします。
それでグッと切なくなるんですから凄いですよね。

♪乾杯ヴォルフガング では、訥々と歌詞を話すことを心掛けました。
決して泣かずに、むしろ笑って歌えるように。
その方が一段とコンスタンツェの悲しみが伝わると思いました。

♪借金の手紙 は、悪夢から目覚めたヴォルフガングがさらに追い詰められる。
しかも自分の家族に。
コンスタンツェが初めて家族に対して怒りを露わにします。
それまでは逆らえないという恐れから真っ向から対立することはなかったのが、
もう耐えられなくなりついにヴォルフガングを精一杯の力で守る。
コンスタンツェの爆発が見えます。

そこからの ♪パパが亡くなったわ 。
本当に辛いです。
「気にしないで」と言えてしまうコンスタンツェの本当の想いを感じながら、
結果ヴォルフガングを追い詰めてしまっていることに悲しくなります。
「大人になるのよ」ということがこの時一番伝えたいことだから大切に歌うようにと、
小池先生から言われていました。

そして ♪モーツァルトの混乱 です。
毎回傷付きおかしくなっていくヴォルフガングを、袖でアマデのように見つめていたのですが、
両ヴォルフガングともに毎公演、混乱具合が変わります。
こここそ、ヴォルフガングに委ねてひたすら振り回されていました。
ヴァルトシュテッテン男爵夫人の幻影に諭され、ヴォルフガングの世界からコンスタンツェがいなくなる瞬間が本当に寂しくて……。
そして拒絶。
お互いの進むべき道が別れてしまったことを示すラストになっています。
呼び止めても振り返らずに去ってしまうヴォルフガングを見て、
何も出来なかった自分に打ちひしがれている時に流れているインストは、 ♪コンスタンツェの慟哭 。
ボロボロのまま何もなくなってしまったと思い知らされ、そして別れへ……。

♪ダンスはやめられない(リプライズ) はシカネーダーの用意したアトリエで浮気現場を目撃したところから始まります。
とはいっても、本当はこの時ヴォルフガングは相手からのキスを拒絶しているんですよね。
コンスタンツェとしてはきっとこれまでも幾度となくこういうことはあったが、さすがに我慢の限界だったんだろうと言われていました。
ヴォルフガングに「帰ってくれ」と言われる時も、その時のヴォルフガングの心情に合わせて振り返るか全く顔を見ないで去って行くかを決めていました。
背中で感じる方が辛かったりします。
振り返れないんです。

そしてラストの ♪あのままのあんた 。
絶対ため息をつかない、気持ちを切り替えないというのが私の中の決まりで、
気持ちの整理が全くつかないまま去らなければいけないことがニッセンに繋がれば良いなと思っていました。
どんなことがあろうと、 ♪このままのあんた を歌った時のように、
何もかもが輝いて愛し合っていけると思っていたのに。
何もかも失ってしまった虚無感だけが残る。
もう彼に何も求めてはいけないことは分かるから、だから ♪モーツァルト!モーツァルト! にコンスタンツェはいないんだと解釈していました。

私はスタンバイが早いらしく、なるべくヴォルフガングの動向を袖から見るようにしていて、
だからこそエピローグのニッセンでスタンバイしている時、
ヴォルフガングが死ぬ様子を近くから見ていると、まるで自分が死神のような気持ちになったりしました。
(ニッセンについては①をご覧ください)

♪影を逃れて
1幕は役として。
2幕は演じている役者自身として歌うという演出が初演の時からついています。
ひとつひとつの歌詞が私自身に訴えかけてくるので、
この作品は兎に角、最後の最後まで戦い抜かなければならないという印象でした。
音楽も言葉も、ギリギリまで追い詰めてくる。
でもそんな極限状態のなか出された答えが本音だと思うので、
いつも自分に鞭打って究極の答えを出すように心掛けていました。

大千穐楽のご挨拶でもお話させていただきましたが、このモーツァルト!という作品、そしてコンスタンツェという役は、
全力でぶつかっていかないといけないかなりハードなものでした。
のめり込みすぎて本気でボロボロになったりもしましたが、
その度に作品が問いかけてくるものに必死で答えを出そうとし、
全力で表現することで昇華されていったのだと思います。
きっとこの作品は観るタイミング、環境の変化によって色々な役に感情移入できるはずです。
だから永く愛していただけ、何度観ても飽きません。
また登場人物の誰しもが自分の欲で動いているので、
人間ドラマがとても生々しくて個人的に大好きです。
ヴォルフガングが中心となって発生した台風に様々な人が巻き込まれているように見え、
でも結局その威力が大きすぎて全て空へ巻き上がり、台風自体が消滅してしまうような。

その中で唯一、才能も彼自身も愛し、捧げ、尽くしたコンスタンツェは、
果たして世間にいう悪妻だったのでしょうか。
コンスタンツェの存在があったから数々の名曲を残せたのか。
それとも、コンスタンツェがいたからあんな死に方をしてしまったのか。
皆さんのご想像にお任せ致します。

長らくお付き合いいただきありがとうございました。
コンスタンツェまとめ、これにて終了です。