前回
今日も朝から雨が降りしきっている。
「さて」
リングライトを設置。
明度や位置を調整し、顔が画面にちゃんと映るのを確認する。
エンジニアさんに、ビデオ通話の招待を送る。
事前確認のメッセージには
1時間もしないうちに返事が来たので、
おそらく大丈夫だろう。
ほどなく入室の通知。
画面にエンジニアさんの部屋が映し出された。
うーん。
「こんにちは。音声聞こえてますか?」
「はーい、聞こえてます。
こっちはどうですか?」
「音声は問題ないです」
そう、音声は。
「ちょっとこう、
後ろに下がってもらってもいいです?」
画面には彼女の顔が下の方で、
ぴょこぴょこ動いていた。
画面のほとんどが部屋の天井だ。
「? はーい」
「あ、マシになった。
じゃあはじめましょう」
かろうじて、
彼女の首から上が映るようになった。
オンラインお見合いは制限時間が短いため、
前回のお見合いではあまり話が出来なかった。
したがって、今回はその延長のようなもの。
--ではあったが、一度話しているせいか、
いくらか話題を消化しているうちに、
だいぶ緊張が消えたように見える。
自身もほぼ緊張はない。
よくあるお見合いの
質疑応答みたいなものは早々に終わり。
チビッコあるあるや、
(エンジニアさんは背が小さい)
自身の高身長あるある話、
一人暮らしあるある、
地方民あるある、
などなど。
だいぶ笑い話が多くなってきた。
**
ふと窓に視線をやると、
もう日が落ちており。
(・・・これ、何時間経った?)
まだ知り合って間もないうちに、
長時間拘束はよくない。
楽しかったことよりも、
疲れた印象が大きくなってしまうからだ。
「あー、もう夜になりましたね」
窓の外を見ながら言う。
「ほんとだ、いつの間に」
背後の時計に目を向ける。
時々敬語ではなくなっているのは、
良いかもしれない。
お開きを提案する。
「来月は長期の休みもあるし、
どこか行けたらいいですね」
「あ、そうでしたね。どこがいいかな」
「それじゃ、また今度ゆっくり。
今日はありがとうございました」
「こちらこそ、
ありがとうございました。
また!」
にこやかにおじぎをして、通話を終了した。
**
リングライトを片付けながら、
今回でだいぶ距離は詰めれたかな、と振り返る。
女性としてはまだなんとも思っていないが、
これから先の話だろう。
初回としては良い感触では、
と締めくくる。