今回入手したドバーラバティーのコイン⑤

 

(前回より続く)

 

5枚目です。

 

ラバプラ銀貨

 

AR 10/20 rattis(?), 1.20g/16.4mmref. Mitchiner SEA 679, Krisadaolarn A 604

 

表:後期ブラフミ文字「Lava」

裏:同「pura」

 

このコインは、ミッチナーとロナチャイの図録に収載されているコインです。

ミッチナーは8世紀のものとしています。

 

発行地は、ラバプラ(現在のロップブリ)。但し、ウートーンの出土が多いような気がします。タイのあるコレクターはこのタイプはラバプラというが、ロップブリで出土したことは無いと述べています。ラバプラ王国と言われる政体については支配者や領土の範囲にかなりの変遷があることがその理由かもしれません。

 

尚、このタイプのコインは20年ほど前まではかなりレアで、大御所でさえも以前は保有しておらず探していたことを記憶していますが、今では割とよく市場で見かけます。(と言ってもレアな事には変わりはありません。)

 

いつかは入手しようと思っていましたが、コイン自体はあまり魅力的なものではないので、先延ばしにしていましたが、今回実物を見て・価格的にも適正だったのでそろそろ頃合いと見て入手しました。

 

重量の個体差が大きいのですが、理由は不明です。

 

 

図録の情報・写真も参考までに掲載します。

 

(出典:The History and Coinage of South East Asia until thee Fifteenth Century, Michael Mitchiner, 1998)

 

(出典:The Evolution of Thai Money From its Origins in Ancient Kingdom, Ronachai Krisadaolarn, 2016)

 

 

ラバプラについて:

 

11世紀のラヴォ王国と周辺国(出典:ウィキ/アンコールとラヴォを合わせたものがいわゆるアンコール朝の版図と一般的には言われている。)

 

ラバプラは、ドバーラバティー諸都市のひとつですが、年代記(Northern Thai Chlonicles)によると、現在のナコンパトム県か、中西部ターク県と推定されるTakkasilaから来たとされる人物によって468年に建設されたとされています。(ナコンパトムはドバーラバティーの中心の一つ、ターク県はビルマ・マルタバン湾岸諸都市に近い所なので、どちらにしても興味深い話です。)

 

二代目の王が「ラヴォ」と命名。プラは町という意味です。いつの間にか、コインはラバプラですが…。

 

その後7世紀には、現在のタイ北部に王女を派遣してハリプンチャイを建設し、北部に領域を広げています。個人的にはアンコール帝国の前身で、扶南勢力を駆逐したチェンラ(真臘・6-9世紀頃)の脅威に対応するために、ラヴォ(ラバプラ)が北方に勢力を分散したと考えています。(扶南がチェンラの脅威に備えてマレー半島に勢力を分散し、それがのちにシュリビジャヤ帝国となった説に似ていますが…。)

 

ラヴォ(ラバプラ)はその最盛期には、ドバーラバティー諸都市のチャオプラヤ川流域の東側の中心的な(支配的な)都市(国)となり、スパンブリを中心とする西側(スヴァルナブミ・スワンナプーン)とドバーラバティー世界を二分する勢力となります。

 

10世紀初めには、本来は同根であるハリプンチャイが南下してラバプラに侵攻しますが、マレー半島のナコンシータマラートが漁夫の利的にラバプラを支配することになります。しかし、ナコンシータマラート系の支配は長続きせず、最終的にはクメール王朝の版図に組み込まれます。クメール朝の中の旧ドバーラバティーのチャオプラヤ川流域地域が属国であるラヴォ王国という扱いだったようです。

 

尚、11世紀にラヴォは南に遷都し、現在のアユタヤ近くのアヨダヤ(紛らわしいですが)を首都にしています。

 

12世紀にはスコタイやその後のアユタヤの勢力が伸長し、ラヴォは1388年アユタヤ朝に吸収されますが、結局ドバーラバティー(ラヴォ)がアユタヤ朝に継承されているようにも思えます。

 

ラヴォ(ラバプラ)については非常に複雑で難解ですので、上記は誤りがあるかもしれません。

 

参考:

The History and Coinage of South East Asia until thee Fifteenth Century, Michael Mitchiner, 1998

The Evolution of Thai Money From its Origins in Ancient Kingdom, Ronachai Krisadaolarn, 2016

The Early Coins of Myanmar (Burma) Messengers from the Past, Dietrich Mahlo, 2012

ラヴォ王国 - Wikiwand

Lavo Kingdom - Wikipedia

ランプーン/北のドバーラバティー都市・ハリプンチャイ | アジア古代コイン (ameblo.jp)

 

(続く)

 

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