古代インド24 ペーンガンガ地方(Painganga/Wainganga River)のPMC 

 

これも、同じ7月のオークションでの落札品です。

 

ペーンガンガはインド・マハーラーシュトラ州東部の川の名前で、古代の都市や地名としては出てきません。ウィキで同名を冠した野生保護区がヒットしたので、多分この辺りではないかと思います。(ミッチナーの図録には収載されておらず、オークションの説明はナーグプルの南西としか書いてありません。ウェブ上のCoinIndia等でもペーンガンガは記載されておらず情報が限られています。)

 

 

ペーンガンガと思われる地域(Nagpurの南西)

 

いずれにしてもデカン高原のど真ん中。現代では乾燥した不毛の台地というイメージで、文明はありそうもないところですが、ペーンガンガの北東のナーグプル付近は、古代にはヴィダルバ国(Vidarbha Janapada)があった地域で、象のパンチマークの入ったペーンガンガのものと似たタイプのPMCが発行されています。更に北のBhopal付近は、サーンチー仏塔やシュンガ朝の副都Vidishaがあって古代遺跡の多いところですので、ペーンガンガ地方にも古代にはPMC発行した小さな国があったのでしょう。

 

尚、ペーンガンガとヴィダルバのPMCは特徴が似ており、地域的にも近いので混同され易いので注意が必要です。

 

 

PAINGANGA: Anonymous, ca. 500-400 BC, AR ½ karshapana (1.69g/16.8x16.6mm

), Ra-, 4 punches: elephant right, 4 crescents & pellets around annulet with dot in center (cf. R-195 for similar with 5 crescents) (twice), and peculiar critter (R-) (type B1), round flan, lovely example. Painganga was located to the southwest of Nagpur.

 

表:右向きの象(上)、ペレットのある環の周りに三日月とペレットが4個ずつあるシンボルが二個(左右に1個ずつ)、そして、奇妙な生き物(下)。

裏:無

 

(パンチマークが光の反射で分かり難いので、明るさを変えた表面の二枚の写真を表示しています。)

 

ペーンガンガのPMCは十年程前には稀に市場に出ていましたが、比較的価格が高かった記憶があります。今回の個体も、一緒に付いてきたメモには落札価格の三倍の値札が付いていました。本来は落穂拾いでは入手できないもののはずですが、殆ど競合なく落札できました。

 

古代インドコインについてはインド国外のコレクターが減ったのかもしれません。ここ10年程は入手が難しくなった印象があり、数年前オークショナーも古代インドコインは海外にあるものがインドに里帰りする方向ばかりだという話をしていました。私もそうですが、市場に出なくなると徐々に興味が薄れてしまうのかも知れません。

 

 

参考:

Oriental Coins and Their Values, The Ancient & Classical World, 600 B.C. – A.D. 650, by Michael Mitchiner, 1978年(無収載)

Painganga River - Wikipedia

The COININDIA Coin Galleries: Vidarbha Janapada

ヴィダルバ - Wikipedia

 

(続く)

 

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