バンカ錫銭 15 四港合行と合利
インドネシアからのグッドニュース(その2)です。バンカ錫銭2枚です。
バンカ錫銭の収集は今年に入って全然進んでおらず、1月に一枚、そして6月に一枚やっと入手できました。
前回記事にしたボルネオ錫銭3枚と合わせて発送してもらい先日無事到着したものです。(送料を節約するためにある程度まとまってからの送付としていますが、今年は殆ど新規のタイプの出物がなく、今年初入荷(半年分)となってしまいました。おかげですっかり忘れていました。)
今年初めからから少し本腰入れてやろうと思っていたバンカ錫銭の紹介は、なかなか時間が取れず滞ってしまいましたが、今回2枚新たなタイプが入手できたので、さっそく紹介します。この分野のコインは整理がちゃんとできてないので、ブログ記事も正に思いつくままとなっています。
さて、今回紹介の中では、特に6月に入手した「四港合行」は久々のヒットで、嬉しくて仕方がありません。
① 四港合行/満州字(#662)
5.83g/27.7mm, Ref. N./A.
表:四港合行
裏:えせ満州字 寶泉?(左右)と2曲線(上下)
縁上左右にドット。(裏表共)
このタイプは、Harsonoの図録にも、Dr. Yihの文献にも収載されていません。
購入時の写真写りが悪く、「西港台行」と誤って読んでいたため、「西港」はどこの事だろう?「台行」の意味も分からないと思っていました。
到着した実物を見ると、「四港合行」と判明。ガツーンと一発食らいました。意味は「四つの港で使用できる」と考えられ(*注)、通常の公司の名前や縁起の良いものとは異なり、やや特殊な銘です。何故この銘が自分にとってインパクトがあるのか?
バンカ錫銭は、当初、各公司の中での使用の為だけのいわゆる「プランテーショントークン」的なものだったはずです。しかし、実際にはバンカ島だけではなく、島の外のパレンバンで多数出土することから、公司の外の広い範囲で流通する通貨としての性格が与えられていたとされています。この「四港合行」はそれを銘で表している可能性があると考えられるからです。(もちろん、大きな公司が複数の鉱山・港を所有していた可能性はゼロではないですが…。)
実は、図録には「三港通用」銘のタイプがあり、同様の理由で未保有品の中で欲しいものの筆頭。もう長年市場に出てくるのを待っているのですが、チャンスがあったのは一度だけ。ある海外オークションで140枚ぐらいの複数ロットの出品があり、その中の一枚でした。欲しかったのですが、未保有タイプが「三港通用」含めて20枚程度しかなく、残る既保有タイプは重複品として後日転売でもよいから、まず入手というオプションもあったのですが、全部合わせるとかなりの金額になるので迷った挙句入札を断念したという経緯があります。
「三港」とは、多分、バンカ島の中心都市のパンカルピナン、スルタンのいる首都のパレンバン、もう一つは、スマトラ島とバンカ海峡を挟んだ対岸で、パレンバン側から見て島の玄関口となる「Muntok」か、当時有力な鉱山のあった他の積み出し港のどこか、と思っていました。
バンカ島とスマトラ島パレンバン
今回のものは、これが、三港ではなく、四港という事になり、流通範囲がより広いことを示しています。
② 合利・3ドット/2ドット (#661)
5.34g/25.9mm, Ref. N./A.
表:広縁に「合利」(上下)。「合」の下、平地に3ドット。
裏:平地・孔の上に2ドット。
これも、図録未収載タイプです。「合利」の摩耗で、見た目パットしませんが…。
*(注):中国語で「行」は日本語と同じ「行く」という意味ですが、そこから派生して「OK」みたいなニュアンスで使用されます。自身の短く拙い中国語の経験では、「不行!」というフレーズ(ダメ、不可、嫌!みたいな感じか?)が妙に頭に残っています。ビジネスでもプライベートでも、「不行!」とダメ出しされることが多かったからでしょうね。
同じ漢字でも日本語と中国語でニュアンスや意味が異なることがあり、日本人としては特に記憶に残りやすいのだと思います。例えば、台湾で、奥さんの事を「老婆」と悪い意味ではなく普通に呼ぶのですが、最初に聞いたときは吹き出してしまいました!
参考資料:
Puji Harsono, Seraja Dan Mata Uang Bangka 1740—1813, 2019 (The History and Coins of Bangka 1740-1813)→PH
Mitchiner, M. and Yih T.,Coin circulation in Palembang (Sumatra), circa AD 1710 to 1825 2. Coins minted for the mining communities on Bangka Island, JONS. 217/218
→M&Y
(続く)
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