アラカンのアラカン王国2補足
以前紹介したアラカン中期発行のコインへの補足です。紹介が抜けていたものと、先月のオークションで新たに入手できたものです。
相変わらず、見た目同じようなコインですが…。
① BE1075年(西暦1713年)Sanda Wizaya王(在位 BE1072-93)AR tanka
9.46g/30mm, 「1075、黄金の宮殿の支配者、Sanda Wizaya Raja」、ref. Robinson 7.26b, Phayre 12。裏表同じ銘。
以前紹介した「アラカン中期のコイン」の⑦(BE1072年/西暦1710年、Robinson 7.26a/Phayre 12)との年号違いとなります。
アラカンのタンカ銀貨は、本来は実際の発行年に関わらず当該王の即位年がコインに記載されているはずですが、何故かSanda Wizaya王は即位年(BE1072年)とBE1075年銘の二つが存在します。BE1075年に王にとって何か重要なことがあったのか、又は、単なるエラーコインなのかもしれません。
見た目非常に分かり難いので、BE1072とBE1075を比較すると:
BE1072 BE1075
結局、一番上の列の年を著す一番右の文字(赤字部分)が、「2」か「5」かという違いなのですが、並べて見るとちょっと見、同じ(どちらも「5」)に見えます。BE1072の「7」(青字部分)と「2」の間の上から垂れている部分が、字と字の間のスペースなのか、「5」の字の一部なのかがポイントですが、拡大すると字と字の間のスペースであることがわかります。
② BE1099年(西暦1737年)Madarit Raja王(在位 BE1099-1104)AR tanka
9.97g/26.6mm, 「1099、黄金の宮殿の支配者、Madarit Raja」、ref. Robinson 7.26b, Phayre 15。
在位5年と短いので、比較的入手は難しいタイプです。左の写真で、年の「1099」が明瞭です。
(参考までに以下は前回紹介した中期のコインです。
アラカン中期発行のコイン:
一行目左から右へ;
① BE1000年(西暦1638年)Narapadigyi王(在位BE1000-07) AR tanka
10.10g/29mm, 「1000、白象の支配者、Narapadigyi」、ref. Robinson 7.20, Phayre 7
白象は即位時には健在。トライリンガル銀貨の発行はやめ、アラカン語だけの銀貨になります。このコイン発行時期はまだチッタゴン地方を領有していたにもかかわらず、ペルシャ語やベンガル語を外した理由は良く分かっていません。(ムガール帝国のチッタゴン地方進出は1666年。)
② BE1000年(西暦1638年)Narapadigyi王(在位BE1000-07)AR tanka
10.3g/27mm, 「1000、白象の支配者、赤象の支配者、Narapadigyi」、ref. Robinson 7.21, Phayre n/a
同じ王ですが、赤象を在位中に手に入れ、銭銘に追加・再発行したものと思われます。(原則として発行年に関わらず即位年を記載するので、実際の発行年は不明。)赤象が何なのか?は分かりませんが、白象に次ぐ意義があるものだと思われます。紅白揃えたという事ではないとおもいますが…。
③ BE1007年(西暦1645年)Thado王(在位BE1007-14年)AR tanka
10.17g/28mm, 「1007、赤象の支配者、白象の支配者、正義の王Thado」, ref. Robinson 7.22, Phayre 8
赤象が先になりましたが理由は不明。
④ BE1014年(西暦1652年)Sanda Thudhamma王(在位 BE1014-46)AR tanka
10.07g/29mm,「 1014、黄金の宮殿の、Sanda Thudhanna Rja」, ref. Robinson 7.23, Phayre 9。象がいなくなりました。
二行目左から右へ:
⑤ BE1047年(西暦1685年)Waradhamma Raja王(在位 BE1047-54)AR tanka
9.75g/29mm, 「1047、黄金の宮殿の、Waradhamma Raja」, ref. Robinson 7.24, Phayre 11, Mitichiner 370
⑥ BE1059年(西暦1697年)Kalamandat王(在位 BE1059-60)AR tanka
9.95g/27mm, 「1059、黄金宮殿の支配者、Kalamandat,正義の王」、ref. Robinson 7.25, Phayre n/a
⑦ BE1072年(西暦1710年)Sanda Wizaya王(在位 BE1072-93)AR tanka
9.46g/30mm, 「1072、黄金の宮殿の支配者、Sanda Wizaya Raja」、ref. Robinson 7.26a, Phayre 12
⑧ BE1093年(西暦1731年)Sanda Thuriya王(在位 BE1093-96)AR tanka
10.06g/28mm, 「1093、黄金の宮殿の支配者、Sanda Thuriya Raja」, ref. Robinson 7.27, Phayre 13
これで、中期から後期のアラカンのタンカ銀貨でまだ保有してない王は:
BE1097(1735年):Narapawarn(在位BE1097-98) ref. Robinson 7.28
BE1098(1736年):Sandawizala(在位BE1098-99) ref. Robinson 7.29
BE1139(1777年):Sanda Thaditha(在位BE1139-44)ref. Robinson 7.35
となりましたが、在位期間が短く、現存数が少なく、稀に市場に出ても競合が激しいので、揃えるのは相当難しいと思っています。
尚、前期のトリリンガルコイン(ペルシャ語、ベンガル語、アラカン語の3言語銘)は、ある程度状態の良いものは、もう価格的についていけないレベルとなってしまいました。例えば、以下の様なものです(↓)。
ARAKAN: Min Palaung (Sikandar b. Zafar), 1571-1593, AR "½ Spanish dollar" (12.98g), ND, Mitch-308/310, Goron-RA1, trilingual, ruler cited as Sikandar bin Zafar in Persian, Min Tya Gyi in Arakanese, and Sikundur Saha in Bengali; undated, gorgeous deep strike, choice EF, RR, ex David Cashin Collection. Sold for US$3,750.
参考資料:The Coins and Banknotes of Burma, M. Robinson & L.A.Shaw
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