インドパルティア王国 7 サナバレス(Sanabares):在位AD1世紀半ば、又は、AD135-160年頃?
インドパルティアは今回が最後です。
サナバレスは前回のパコレスの後継者(王位を簒奪?)と考えられています。サカスタンとツーラン(南アラコシアからパキスタン南西部)の二地域を支配した最後の王と考えられ、彼の治世の後は、アラコシアは完全にクシャン朝の支配するところとなり、小さくなったインドパルティアの領域も更に、サカスタンとツーランの二つに分裂、その後230年にササン朝ペルシャに併合されることになります。
① サカスタン発行のパルティアスタイルのドラクマ銀貨
INDO-PARTHIANS, Gondopharid Dynasty. Sanabares. Usurper, mid 1st century AD. AR Drachm (19.2mm, 2.93 g, 12h). Uncertain mint in Seistan. Diademed bust left wearing tiara; s’ in Pahlavi up right / King enthroned right, holding bow; monogram below bow. Senior 262.1D, Mitchiner 2645.
表:ディアデムを巻き、ティアラをつける王。王の後ろにパフラヴィー文字(アラム文字が起源でパルティアで使用が始まったと思われる中部イランの古代文字「S‘」。
裏:玉座に座り弓を引く王。弓の下にモノグラム。ギリシャ文字銘「ΒΑCΙΛΕV ΜΕΓΑC CANABA IOV GI IGT」。王銘の部分「CANABA IOV」の部分は下部で、「C」のみかろうじて判別できる。(本来は「Σ」のはずですが、他のコインでもよく見られるように「C」のように見えます。)
サカスタンミント。
② サカスタン発行のドラクマ銀貨(アポロタイプ)
INDO-PARTHIANS, Gondopharid Dynasty. Sanabares. Usurper, mid 1st century AD. AR Drachm (19.6mm, 2.71 g, 12h). Uncertain mint in Seistan. Diademed bust left wearing tiara; tamgha to right / Apollo standing right, holding laurel branch(?); A to right. Senior 264.1D = Alram 1194; S41.1D = ONS 171, p. 12, 34.
表:ディアデムを巻き、ティアラをつける王。後ろにタムガ。
裏:月桂冠(?)を持つアポロ神。右に「A」。
状態悪く銘の確認不能。
③ (参考)アラコシアスタイルのテトラドラクマ銅貨
INDO-PARTHIANS, Gondopharid Dynasty. Sanabares. Usurper, mid 1st century AD. Æ Tetradrachm (24mm, 8.00 g, 12h). Diademed and draped bust left, wearing tiata / Nike standing right, holding wreath. Senior 265.
表:ディアデムを巻き、ティアラをつける王。ギリシャ語銘は「ΒΑΛΕΥ... CΑΝ...」
のようではあるが、図録なく良く分かりません。
裏:レースの冠を持つニケ。周りの銘はカローシューティ文字だと思われるがやや違和感あり。
このデザインは他の王ではアラコシアやカピサ発行のものなので、同地方のものと推測されます。
④ 後期不明王発行のドラクマ銅貨
3.82g/13.9mm, Mitchiner 2653
表:ディアデムを巻く王。
裏:弓を引く王。
インドグリークもインドスキタイも同じでしたが、王国の衰退期はコインにも投影されます。
⑤ サウラシュートラ・グジャラート地方のインドパルティアから独立したインドスキタイ系・ウェスタンクシャトラパのナハパナ王のドラクマ銀貨
INDO-SKYTHIANS, Kshaharatas. Nahapana. 1st century AD. AR Drachm (16.7mm, 2.48 g). Capped bust right / Arrow pointing downward and thunderbolt; pellet between. Senior 303.1iD, Mitchiner 2686.
表:帽子を被る王の肖像。ギリシャ語銘 「PΔΝΝΙW IAHAPATAC NAHAΠANAC」。
裏:矢と雷電。左にカローシューティ文字銘「Rano Chaharatasa Nahapanasa」、右にブラフミ文字銘「Rajna Kshaharatasa Nahapanasa」。
分類上はインドスキタイですが、現在のインド北西部グジャラート地方のサウラシュートラ(カーティヤーワール半島)のウェスタンクシャトラパも、ゴンドファルネスの傘下となり、インドパルティアの一部となるのですが、AD78年に独立し、三代目のナハパナ(在位105-124/5年)は東に領土を拡張して、その後デカン高原のサータヴァーハナ朝とぶつかることになります。
インドパルティアのコインは、まだ他の王や異なるタイプも沢山ありますが、インドグリークやインドスキタイと比べると全体的に多分発行数は少なく、したがって、現存数も少なく、特に銘が確認できる状態のものは入手のチャンスは少ないと感じます。集める人も少ないのでバランスはとれているのかもしれません。
(インドパルティア終了)
参考:
Indo-Parthian Kingdom - Wikipedia
CNG-Ancient Greek, Roman, British Coins (cngcoins.com)
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