ドバーラバティーのコイン 11 (最近入手したバラエティー)

 

 

ドバーラバティーのコイン5でご紹介した典型的な同国のコインのバリエーションを、一つ入手しましたので、追加で紹介します。

 

かなり昔(2020年9月)ですが、以下のコイン群のバリエーションになります。


 

 

さて、今回入手のコイン:

 

 AR 80 rattis, 8.22g/27.2mm, ref. Mahlo-63.1.2 var.

 

表:開口部が左向きのほら貝。ほら貝上部の溝は4本(通常三本)。

 

裏:スリバッサ。内部にアンクーシャ(アンクーシャのカギが左向き(通常は右向き))。スリバッサの上部に左右共に中空円。左側に金剛杵(こんごうしょ・ヴァジュラ)、右側にカマラ(fly whisk )、カマラのカギも左向き。下部に左向きの魚。

 

(注)下線は、通常のタイプと異なる部分。ほら貝の開口部の向きは、Mitchinerのスタイル(貝の頭を下にして右左を述べているので、上記写真とは逆になる)を踏襲。

 

コインの形状は通常このタイプは表が僅かに凸面、裏が僅かに凹面となっているが、この個体は両面ともに全くの平面。やや気になる。

 

今回のコインのオークショナーは、説明文で、「KYAIKKATHA: late 9th or 10th century」としています。タイのドバーラバティーとは異なり、ミャンマーのマルタバン湾地域のより新しいコインとのMahloの説を採用しています。ドバーラバティーの典型的な銀貨とする説は、タイで一般的に言われている解釈です。出土地はマルタバン湾岸が正しいのですが、このタイプのコインはタイのドバーラバティーの主要都市からも多数出土するため、私はドバーラバティー王国がマルタバン湾迄その領域としていた時のものではないかと考えています。

 

 

因みに、一番近いタイプは以下の個体です(集合写真の上段中・Mahlo-63.1.2)。

 

 

表の貝の上部は3本線。

裏のスリバッサ上部のシンボルはドットのある円と三日月。内部のアンクーシャと右側のカマラのカギは右向きです。

 

ドバーラバティーのこのタイプのコインや、ドバーラバティー王国については以下を参照ください。

 

マルタバン湾沿岸 5 | アジア古代コイン (ameblo.jp)

ドバーラバティー 9(補足) | アジア古代コイン (ameblo.jp)

 

 

参考資料:The Early Coins of Myanmar (Burma) Messengers from the Past, Dietrich Mahlo

The Evolution of Thai Money from its Origins in Ancient Kingdoms, Ronachai Krisadaolarn

 

 

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出典:UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)

UNHCR 日本