AWのeAuction 13について、少しコメントです。

 

☆    Lot 407 インドコイン象デザイン(との説明ですが…。)

オークション, INDIA インド コイン 象デザイン (auction-world.co)

 

これはインドクリークのLysias (c.145-135 BC/ c.130-120), AE Hemi-obol, (ref. Mitchiner-1838var, Mitchiner-1839 var., Bopearachchi 8F var.)で、C/M(像の後ろ足の下)はパキスタン北西部ガンダーラ地方の Pushkalavati のものです。

 

 表:ヘラクレス頭部、銘はギリシャ文字でBAΣIΛEΩΣ / ANIKHTOY / ΛYΣIOY(無敵の王リュシアス)

裏:右向き象、銘はカローシュティー文字でmaharajasa / apadihatasa / lisikasa(音をアルファベット表記しています。)

 

表のヘラクレス頭部の摩耗が激しく、ギリシャ文字銘と、裏のカローシュティー文字銘およびC/Mがかなりはっきりしているものの、コンディションを勘案すると厳しいですね。Lysiasのコインは市場にはあまり出ないので、私のように特定の分野の中でできるだけ多くのタイプを揃えたいというコレクターには入札する価値があるかもしれませんが。

 

実は、私もこのタイプは持っていないので、もう少し状態が良ければ、この記事は書かず安値入札を期待してドキドキしていたでしょう。安値で落札できれば、AWさん手抜きの説明ありがとうと言うところでしょうね。

 

 

☆    Lot 417 アチェクパン金貨

オークション,スマトラ・アチェ-土候国 Coupang ND  重約0.6g (auction-world.co)

 

これは、スマトラのアチェスルタン王国、Sultana Zakiat al-Din Inayat Shah, (在位1678-1688年)のAV kupangです。たまたま、自分も同じタイプを保有していたので同定できました。(この分野は時々気まぐれに買うだけで包括的な図録を持っていませんので、すべてのAV kupangのタイプが分かるわけではありません。)

 

表面は以下の写真です。(AWのものでは二枚目の写真・向きが正しくなるように回転させたのでインスクリプション部分だけの写真です。)右の写真は私が保有しているもの。

 

銘:Zakiat al- Din Berdaulat Shah

 

裏面の写真は以下です。AWのものは1枚目の写真で、やはり向きが正しくなるよう回転させています。右は同様に私の保有するものの写真です。一見、全然違うように見えますが、字を辿るとほぼ同じだと思われます。

 

銘:Paduka Sri Sultana Inayat Shah

 

銘の「スルタン」が「スルタナ」となっていますが、これは、女性(女王)であったためです。原理主義のタリバンや、ISを見るとイスラム教では女性の地位が低いという印象を受けますが、アチェスルタン王国では彼女は歴代3番目の女性首長です。(以前紹介したタイ南部パタニスルタン王国でも女性首長が4代続いています。)

 

写真で見る限りは、AWの方がコンディションは良さそうですね。

 

余談。

 

イスラムは一夫多妻や姦通罪等、西側の受けの悪い制度がありますが(実は台湾も姦通罪があります。日本の戦前の刑法の名残です。)、逆に面白い経験をしたことがあります。

 

以前、サウジアラビアの国内線で大幅な遅延が生じたときに、複数のフライトのオリジナルの予約を全部ガラガラポンにして、女性に優先的に早いフライトの席を割り当てていた事に驚いた記憶があります。

 

国内線の東部主要都市ダンマンから首都のリヤドに向かう幹線で4便ほど数珠つなぎに大幅に遅延したのですが、再開した最初の2便はオリジナルの予約に関係なく全て女性を搭乗させて運航しました。自分がなぜオリジナルのフライトに乗れないのか理由が分からずロビーで右往左往しましたが、結局、私は4番目のフライトでした。このフライトの乗客は全員男でした。CAも含めて野郎率100%のフライトは初めての経験。

 

彼らに言わすと女性は保護されるべきだという事で、究極のレディーファーストとも言えますね。チェックインした荷物や夫と一緒の人はどうするのか等、本当に意味があることかはわかりませんが、イスラム教の元祖の地で、考え方の一端を見た気がしました。

 

因みに、国際線がサウジに到着するときは、到着30分くらい前に畿内の普通の衣装を着た女性がチャ―ドル(イスラム教の女性が身に着ける全身を覆う衣装)を着け始めます。もちろん街中では全ての女性がチャ―ドルを付けていますが、ショッピングモールにはチャ―ドル専門店も沢山あって、表が黒でも裏地が色とりどりでおしゃれなものが多いですね。更に、結構女性の下着専門店が堂々と目に付くところにあって、色とりどりの派手な下着が表に飾られて売られています。理屈上は関係ないのですが、日本人から見るとなにか不思議に感じるとともに、必ずしもチャ―ドルが女性差別の象徴ではないような気もしました。

 

サウジの会社で働いているインド人とバンコクで食事をしたときの話。バンコクのセントラルデパート本店のカフェテリアで一緒に食事をしたとき、何を話しても相手は上の空で視線は私を通り越して遠くを見ています。丁度お昼時だったので私の後方にハイソっぽいきれいなタイ人のOLが数人和やかに食事をしています。彼女等を文字通り血走った目で凝視しています。これはチャ―ドルが必要かもと思ったものです。保護されるべきという事か。

 

彼の方も決して色情魔ではなく、あの殺伐としたサウジで仕事をしているとこうなるのはしょうがないのかもしれません。当時サウジでは女性は全く職場にいません。受付や秘書もすべて男性。(アラムコだけは、Tシャツを着たアメリカ人女性らしき人が働いていて、逆にびっくりしましたが…。アメリカとの合弁で戦略的・外交的・財政的に重要な会社だから?)外は殺伐とした風景ですが、事務所の中も実に殺伐とした雰囲気でした。

 

コインに戻ります。アチェは東南アジアのスルタン王国では最強国の一つで、経済・文化・軍事等侮れない国であったと思います。マラッカがポルトガルに占領されて以降、イスラム商人が集まって交易が盛んになったとの事です。

 

尚、「土侯国」という言う表現は元々「藩王国」と同義で、英領インドの領域内の英国の間接統治下の保護国・地方領主国という事だそうです。英語では{Princely State}と表現されオークションでも使用されます。当時のアチェは独立国ですので、「土侯国」という言う表現は当たらないと思います。

 

また、個人的には「土侯国」という表現は、ヨーロッパの列強がアジアに植民地を広げていった時に現地人を蔑んで呼んだ、又は脱亜欧入で日本がアジアを蔑視した時代の名残のような響きを感じます。英語の{Princely State}には土侯的なニュアンスは感じません。薩摩藩を、薩摩土侯国と呼ばれたら日本人はどう感じるでしょう?

 

いずれにしても、少なくともスルタン名と在位時期の記載は欲しいですね。これがないと、せっかく買っても、詳しいコレクターでない限りなんだか分からないコインになってしまいます。AV kupangを発行したのはアチェだけではありませんし。

 

 

☆    Lot 1084 英領ボルネオ弾丸貨幣なるもの

オークション,英領ボルネオ 弾丸貨幣 2個組 重約1150,1170g 返品不可 Sold as is No returns 国内送料別途500円 (auction-world.co)

 

これは、以前紹介したジャワの鉄球のように見えます。(かなり大きいですが。)

 

ジャワの鉄ボール | アジア古代コイン (ameblo.jp)

 

念のため当方手持ちのマレーシアのコインのカタログでも、英領北ボルネオ(現在のサバ州)、サラワク州、ブルネイに当該物の掲載はありません。

 

ジャワ鉄球も、以前はボルネオの不明スルタン王国のもの("Borneo Bullet Money")という(多分意図的に)誤った情報で市場に出ていたようですので、そのことをベースに説明をしているのかもしれません。そうであれば、スーベニア級の品物をコインとして表示していることになり、非常によろしくないですね。コインのオークションに登場させるような代物ではないと思います。間違っていたらごめんなさい。

 

 

以上あまりお役に立たない情報で、しかも辛口コメントになってしまいました。