日本人、特におじさんから見ると、ニヤッとする言葉ですが、立派な銭銘です。

 

Tin 14.58g/40mm, ref. Harsono-55 var.

 

表:長命富貴

裏:金玉満堂

 

長命富貴は、長生きで地位が高く多くの資産があるという意味で、「旧唐書」の「姚崇伝(ようすうでん)」から来ているそうです。長生きリスクを言いはやして儲からない投信を売りつける銀行にはうってつけの銭銘かもしれません。

 

金玉満堂は、直感的に、金や玉(翡翠)が部屋に満ちあふれるほど金持ちという事だと思いますが、豊かな才能や学識があふれることのたとえでもあるそうです(「老子九章」)。後者の解釈は私レベルの人間には今一つ合点がいきませんが…。

 

両方とも華人には普通に使われる四字熟語だと思います。特に、「金玉満堂」は縁起がいいというか・商売繁盛というか好んで使われるようで、同名のレストランは、台北や、今回調べてみたら東京にもありました。台湾では、どこかの普通の民家で、家の入口に貼ってあるのを見たこともありました。新年の「春聯」みたいなものだと思いますが。

 

写真の個体は比較的大型の錫の絵銭と思われます。オークションの説明では、マレーシアのパハン州又は、タイ南部・マレーシア・インドネシア等の東南アジア地域となっていて、要は東南アジアのどこかという事で全く説明になってはいないのですが……。

 

重量やサイズからは、南タイの錫銭が近いですが、絵銭と思われるため東南アジアの華僑が作成したもので、やはり発行地・年代の特定はできません。マレーシアでは錫のJokohと呼ばれるプライベートトークンが多種あり、いずれも発行数は少なく、狭い範囲でしか流通していないので、パハンで入手されたのであれば、発行地もパハンである可能性は高いと思います。

 

一応、インドネシアのバンカ錫銭の図録には同じ銭銘の錫銭(又は絵銭)が収載されていますが、重量・大きさ・縁のデザインが異なるので、同一のものではありません。

 

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