医療法人聖仁会 松本医院

 

@matsumotoclinic

 

【やはりクエン酸はあえて摂取する必要はない】 先日、「重曹」が身体をアルカリ化する作用があり、それにより簡単にいえば「がんをおとなしくさせる」作用があることを解説しました。 ですから、がん患者さんは「重曹」を飲んだほうが良いことは間違いありません。 一方で、「クエン酸」については、当院ではやはりあえて摂取する必要はないと考えています。 私が調べた限りでは、クエン酸には「身体をアルカリ化する作用」はありませんので、SNS上では重曹と同様の作用があるように語られていることが多いのですが、それは明確に間違いであることをここではっきりと述べておきたいと思います。 それどころか、クエン酸投与によりマウスの肝細胞などの組織が障害されることが示されている研究報告があります。 https://ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3918259/pdf/10616_2013_Article_9567.pdf… この研究では、クエン酸濃度依存性にフリーラジカルスカベンジャーであるSOD(スーパーオキシドディスムターゼ)や、生体内で最も重要な抗酸化物質であるGSH-Px(グルタチオンペルオキシダーゼ)活性を低下させることがわかっています。 また、上記研究ではクエン酸投与量の増加に伴って、脂質過酸化産物の一つであるMDA(マロンジアルデヒド)濃度が上昇していたことから、クエン酸が抗酸化酵素活性を失わせ、脂質過酸化反応を促進してしまう作用があることが示唆されます(生体内MDA値は、脂質過酸化反応の程度を示す指標として用いられる)。 さらに、上記研究ではクエン酸摂取により細胞アポトーシスの重要な指標となるカスパーゼ-3の活性化と核DNA断片化が検出されることが示されており、クエン酸は用量依存的に肝臓などの臓器にダメージを与え、細胞アポトーシスに導くことが示唆されます。 逆に、比較的高用量(1〜2g/kg)のクエン酸投与量では、脳や肝臓などの組織に対して抗酸化・抗炎症作用がもたらされ、さらに高用量(4g/kg)になると逆の効果が現れる(細胞障害性が現れる)とする研究報告もあります https://ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4026104/pdf/jmf.2013.0065.pdf… 天然化合物であっても、その濃度によって炎症反応(免疫応答)に対して両刃の効果を示すことがあり、生理的な量は有益な効果をもたらす可能性がありますが、高用量では有害な効果をもたらす可能性があることがわかっています。 クエン酸に関しては500mg/kg未満でも、4g/kgという高用量でも組織障害性がもたらされるとするデータが出ているので、炎症が強く起こっていると想定されるがん末期の患者さんなどが、厳密に用量を定めて内服するのであればありかもしれませんが、それ以外の人(ましてや健康な人)が積極的にクエン酸を摂取する必要は全くないと思います。 クエン酸がミトコンドリアの糖のエネルギー代謝に関わるクエン酸回路(TCA回路、クレブス回路)の重要な基質でもあることを考えると、クエン酸を積極的に摂取する必要はないと思います(過剰摂取でミトコンドリアの糖のエネルギー代謝を阻害してしまう可能性がある)。 以上のことから、むしろ当院ではクエン酸摂取を控えたほうが良いのではないかと考えています。 以上、参考になれば幸いです。

最終更新

·

16.8万

件の表示

27

320

1,755

1,120