もし、どうしても法定相続分に従って分割するならば、売るしかないかも知れませんね。
しかし、たとえば評価額9000万円の土地・家が、実際に9000万円で売れるとは限りません。
仮に売れたとしても、譲渡税など税金や手数料がかかってきますので、手取りはもっと減ってしまうでしょう。
その前に、自宅を売ってしまったら、そこに住んでいた人は、何処で暮らせばよいのでしょうか。
自宅があれば、家賃はかかりません。
早急に、他に住むところをさがさなければなりませんよね。
今まで住んできたと同じような、くつろげる住まいが簡単に見つかるでしょうか。
お母さんの希望する条件にマッチする家を見つけることは、そうそう容易ではありません。
家を買ったり、借りたりするお金は、誰が、どうやって負担するのでしょうか。
長男なり、長女なりが、家を持っていて、「お母さん、一緒に住もう」と言ってくれるなら、また、話は別です。
そうでもなければ、自宅を売ることは、非現実的な話と言えましょう。
このようなケースでは、いっそのところ、自宅も預貯金も全部、配偶者のお母さんがもらい、子たちはゼロという選択肢は如何ですか。
子がそれぞれ独立し、経済的にもそれなりにやっていけるのなら、なおさらのことです。
場合によっては、それぞれに子が、「気持ちの何がしか、たとえば200万円ずつ受け取り、あとはお母さんが全部」ということで、良いかもしれませんね。
いずれにせよ、自宅を処分してまでの分割だけは、避けたいと思います。
どこまでも法定相続分に捉われる分割は、実情にあわず、先が見えません。
行政書士 平 野 達 夫