Aさん夫婦は、長い間両親の世話をしてきました。

それはそれは、大変でした。

その両親も、相次いで旅立ちました。

その後、夫のAさんも急病のため、亡くなってしまいました。


ところが、Aさんの葬儀の日、Aさんの兄弟が、「遺産の一部をよこせ」と、Aさんの妻に要求してきました。

一体、どういたしますか。


Aさんが残した財産といえば、自宅と妻がやっと生活していけるだけの預貯金だけです。

Aさん夫婦には、子供がいませんでした。


一人残されたAさんの妻は、悲嘆にくれてしまいました。

「まさか、こんなことになるなんて・・・・・・」

「遺言さえ、残しておいてくれていたら・・・・、どうして・・・・・」


子供がいない夫婦で、夫が遺言も残さず死亡した場合、遺産の分割はどうなるでしょうか。

Aさんの例で考えますと、Aさんの両親が生きていれば、Aさんの妻が3分の2、両親が3分の1の法定相続となります。


両親が死亡していれば、Aさんの妻が4分の3、兄弟姉妹が4分の1の法定相続となります。

すなわち、亡くなったAさんの遺産の一部は、兄弟が相続放棄をすればともかく、Aさんの兄弟に取られてしまいます。


しかも、兄弟には、印鑑証明書を準備してもらったり、書類に署名と印鑑をもらわなければなりません。

Aさんの妻にとっては、耐え難いことかも知れません。


生前から仲が良く親しければ、それも容易なことかも知れません。

普段めったに会わない間柄でしたら、どうでしょう。

その気苦労は、並大抵のものではありません。


しかし、「財産の全てを妻に相続させる」という遺言さえあれば、兄弟は何も言えません。

兄弟に遺産の一部を、分ける必要がありません。


兄弟には、「遺留分」がないからです。

もしも、Aさんが遺言をしていたら、こんなことにはならなかったはずです。


このように、妻に財産の全てを残したい、兄弟に残す意思がなければ、先ずは遺言書を作りおくことをお勧めいたします。


     行政書士  平 野 達 夫

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