贈与税の課税制度では、一定の要件に該当する場合には、「相続時精算課税」を選択できます。
例えば、贈与時に贈与財産に対する贈与税を納めます。
その後贈与者が亡くなった時に、その贈与財産の贈与時の価額と相続財産の価額とを合計します。
そしてその合計金額を基に計算した相続税額から、既に納めた先の贈与税相当額を控除します。
すなわち、その相当額を控除することにより、贈与税・相続税を通じた納税を行うというものです。
これまでの生前贈与は税率も高く、相続を待って財産の移転をした方が有利と言われていました。
平成15年の税制改正で、この「相続時精算課税制度」が導入されました。
65歳以上の親から20歳以上の子供への贈与については、2500万円まで無税で財産を移転することが可能となりました。
子が亡くなっている時は、20歳以上の孫も含みます。
なお、贈与財産の種類、金額、贈与の回数には制限はありません。
この「相続時精算課税制度」の登場によって、贈与に対する考え方も変化してきたと言えます。
つまり、これまでは高い贈与税を気にするあまり、相続時に財産を移転させる考え方が一般的でした。
最近では、子供の結婚や家の購入、事業の開始など、お金の必要な時点で、相当額の金額を生前贈与できるようになりました。
将来の相続に際して、多額の相続税かからないと予想できる人にとっては、気軽に活用できる制度と言えます。
「相続時精算課税制度」が登場して、生前贈与が容易となったわけです。
これもまた、現代の相続を取り巻く背景の一つと言えましょう。
行政書士 平 野 達 夫