真実の相続権のない者、例えば、他人の子でありながら戸籍上に相続人の子として記載されている者、或いは、被相続人の直系卑属ではあるが、「相続欠格者」となっている者などを、「表見相続人」と云います。
一方、真実の相続人を、「真正相続人」と云います。
先の「表見相続人」が、「真正相続人」の相続権を否定し、相続の目的たる権利を侵害している場合に、相続回復の問題が出てまいります。
この場合、「真正相続人」が、自己の相続権を主張して「表見相続人」に対して、侵害された権利を回復するため、侵害の廃除の請求をすることになります。
これを「相続回復請求」と云います。
相続権が侵害されているとは、「真正相続人」が「表見相続人」によって、本来の自分の相続分の全部、又は一部の相続財産を占有管理されていることです。
相続回復の方法は、必ずしも、訴訟提起を必要としません。
真正な相続人間で遺産分割協議して、相続人各自の取得財産が決定されていることに基づき、各自が個々に、回復請求することもできます。
訴訟手続には、月日を要することからも、執行不能とならぬよう「給付目的物の特定」を、先ずは急がなければなりません。
なお、「相続回復請求権」は、相続人、又はその法定相続人が、相続権の侵害された事実を知ったときから、5年、又は相続の開始から20年経過したときには、時効により消滅します。
行政書士 平 野 達 夫