「遺産分割協議」は、その性質上、財産権を目的とする法律行為でもあります。

従がって、これには、相続人の全員が,法律行為を行うことが出来る能力を有していることが、必要条件となります。


そこで問題となりますのが、その相続人の「認知症」の症状が、どの程度のものかということです。

相続人の症状が重く、相続の状況を認識し意見を述べたりする能力を、欠く状態にある場合には、その人を「遺産分割協議」に参加させることが出来たとしても、後々に「意思能力を欠いていた」という理由から、「無効」とされるおそれがあります。


 このようなケースの場合には、配偶者又は親族が、家庭裁判所に「成年後見開始」の審判の申立をすることになります。

症状の程度により、家庭裁判所は、「成年後見人」、「保佐人」、「補助人」の選任の審判をいたします。

その後、選任された成年後見人等を交えて相続人全員で、「遺産分割協議」をいたします。


 ここで注意しなければならないことは、家庭裁判所へ後見開始の審判を申立をした時から、後見開始の審判があり、東京法務局への登記完了までには、およそ数ヶ月を要するということです。

相続税の「申告期限」は、相続の開始があったことを知った日の翌日から起算して、10ヶ月以内となっています。


従がって、それまでに「遺産分割協議」を、有効に終了させたいところですね。

すなわち、申告期限に間に合うように、スケジュールを立てる必要があります。

とにかく、出来るだけ早い時期に、有効な遺産分割協議を終えることが先決と云えましょう。


   行政書士  平 野 達 夫