認知症のお年寄りや、知的障害・精神障害のある方が、現在の財産を活かしながら、終生その人らしい生活が送れるよう、法律面や生活面から保護し支援する制度が求められます。
高齢や障害などにより判断能力が低下したり欠けたりしたため、必要な財産管理や生活、療養看護などに関する事務を自分で決めることが困難になることがでてまいります。
そこでそのような場合に、成年後見人などが家庭裁判所の監督の下におかれ、本人の自己決定をできるだけ尊重しながら、権利や利益を保護するとともに、本人が持っている能力を活用して、普通の生活が維持できるように支援していく制度が設けられました。
それが、「成年後見制度」であります。
例えば、精神上の障害により判断能力が不十分な者について、契約の締結など本人に代わって行う代理人を選任したり、本人が誤った判断に基づいて契約をした場合に、それを取り消すことが出来るなど、本人を保護する制度でもあります。
その基本理念は、一つには、「自己決定の尊重」 二つには、「残存能力の活用」 三つには、「ノーマライゼーション」( 障害者と健常者とは、お互いに区別することなく、社会生活を共にすることが正常なことであり、本来の望ましい姿であるとする考え方 )です。
即ち、この新しい理念を取り入れて、従来の「本人の保護理念」との調和を図りながら、弾力的に利用し易くするものです。
尚、これは家族や親族の利益を考えて作られた制度でないことも知る必要があります。
また単に、身体に障害を抱えているが判断能力に問題のない方、浪費者、性格に偏りがあるだけでは対象になりません。
加えて、これまでの制度は、本人の判断能力に応じて、「禁治産」と「準禁治産」の二つの類型がありました。
禁治産は心神喪失の状況にある者を、準禁治産は心神耗弱者を対象とし、それぞれの判断能力に応じて保護の内容が法律で定められていました。
しかし、判断能力の不十分な状況は、心神耗弱に至らない比較的経度な者を対象としておらず、硬直的であり、時間や費用の面でも当事者に負担をかけ、利用しにくいとの指摘がありました。
そこで新しい成年後見制度は、これら点を改め、本人の状況に応じて種々柔軟に活用し易いものとし、平成12年4月1日から施行された制度であります。
この新制度には、従前の禁治産・準禁治産を改めた「法定後見制度」と、「任意後見制度」の二つがあります。