スクリーンが いっぱいに 広がります・・・・・

  丘の上に 一人の女性が 立ち

   じっと  見下ろします  ・・・・・

    音楽が  流れます・・・・・

 ”  Love is A Many-Splendid Thing ”

  ・・・・・ ♪♪・・・・・ ♪♪ ・・・・・ ♪♪ ・・・・・

  ----- ” 恋は  すばらしきもの ” ------

 私は、今都内のある映画館のスクリーンを見ています。

涙をこらえ・・・・・、ただただ、こらえ・・・・・

胸がジーンとしめつけられて、・・・・・見ています。

 皆さん、このシーン、ご存知ですか。

そうです。あの不朽の名作「慕情」のラストシーンです。

 もう50年以上前になるでしょうか。

私は中学三年の期末試験を終え、開放感を求めて映画館に入りました。

それがこの「慕情」の映画でした。

 当時は、一人で映画館に入るなんて叱られます。

でも入ってしまいました。

最初のうちは、何となく見ておりました。

 未だ中学生ですから、人の情感なんて分るものでなく、ましてや恋なんてとんでもないです。

でも私の心は引き込まれていきます。

涙なんて、ケンカして負けた時か、親に叱られた時くらいです。

それが何故か、私の目に涙がにじみ、それがこらえ切れなくなるんです。

これが感激・感動と言うのでしょうか。

初めてです。もうどうでもいいです。

そんな気持にしてくれます。

 昨年暮の12月、新聞の社会面下欄に、ジェニファー・ジョーンズ逝去が掲載されました。90歳です。

1940~50年代に数多くの映画に出演しています。

「終着駅」「白昼の決闘」等など主演し、「慕情」の作品で5度目のアカデミー主演女優賞を受賞しています。

 この「慕情」では、彼女は中国人の父とイギリス人の母を持つ混血児の女医ハーン・スーインを演じています。競演のウイリアム・ホールデン演じる新聞記者マークとの出会い、香港のビクトリア港を見下ろす「丘の上」での二人の仄かな逢引き、そして海水浴の岩場の陰で煙草に火をつけるシーンなど、誰の記憶にも忘れられないものでしょう。

それらシーンでは、必ず「慕情」のテーマ音楽が流れ、更に叙情をそそります。

 気品を持つ顔立ちに加え、何処か野性味を備える魅力の女性が、ジェニファー・ジョーンズです。

 女医ハーン・スーインに悲しい別れが訪れます。

朝鮮戦争の従軍記者で行ったマークの死の知らせです。

彼女は、悲しみ苦しみます。死を考えます・・・・・・・・。

そして彼との忘れられない「丘の上」へ駆け上ります。

 マークは、ハーン・スーインに語ります。

 「僕の分も長く、幸せな一生を送って欲しい。僕との真実の愛を、医学を通じて、たくさんの人に広めて欲しい。」

 彼女は、苦しみ悲しみます。

彼との思い出のこの「丘の上」から、じっと港を見下ろします。

   「慕情」テーマ音楽が流れます。

  ” Love is A Many-Splendid Thing.”

  ・・・・・ ♪♪ ・・・・・ ♪♪ ・・・・・ ♪♪ ・・・・・・

 今日は、古き名作の数々をビデオで見ることが出来ます。

誰もが、忘れかけていたストーリーを堪能出来ます。

 私達の時代は、名作を映画のスクリーンで見てきました。

迫力が違います。衝動が直で伝わって来ます。

時には、胸が痛くなるほどの感動を覚えます。

その時代に生きた私達は、幸せです。

 数多くの名作の中でも、「慕情」は最高です。

いつまでも、いつまでも、私の脳裏から離れることは、ないでしょう。


   懐かしい、リカルド・サントスの演奏が流れます。 

    -----  ” 恋は すばらしきもの ”  -------

  ” Love is A Many-Splendid Thing ."

  ・・・・・ ♪♪ ・・・・・ ♪♪ ・・・・・ ♪♪ ・・・・・