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北出明「命のビザ、遥かなる旅路 杉原千畝を陰で支えた日本人たち」(交通新聞社新書044)(交通新聞社、2012年)

 読了しました。

 私は鉄道貨物を中心に交通全般が好きなので、交通新聞社のこの新書のシリーズも好きで何冊も読んでいます。

 おそらく人脈的な理由で鉄道がテーマになるものが多いですが、この本はジャパン・ツーリスト・ビューロー(日本交通公社(後のJTB)の前身)の国際マンをキーにしたもの。同所属の大迫辰雄さんが遺した第二次世界大戦中のユダヤ難民に関する記録を元に、彼に縁のあった北出さんが消息を追います。大迫さんって有名人なんですかね? 私も(所属はともかく)名前はなんだか聞いたことのある方でした。

 最近私は読み物で杉原千畝づいているのですが、ユダヤ系のロビー活動的なものが作用しているのでしょうか。ま、本書はともかく、前書は「あの」杉原はカウナスに行く前に云々ということが含まれていただけだったので、ちょっと違うはずなんですが。

 取り上げられたエピソードに、シベリア鉄道・ウラジオストク経由で敦賀港に到着したユダヤ難民が、敦賀駅まで歩いて移動する際にりんごを持ち、回し食べする姿を目撃されていたというものがあります。更なる渡航先である北南米へのビザ取得までの間を神戸のユダヤ人コミュニティで過ごしていた間にもりんごを持っていたという話もありました。

 これらはそれぞれ敦賀の日本人・神戸のユダヤ人から提供してもらったものだったようです。特に敦賀の方は、難民のくたびれた姿とりんごの組み合わせが、憐れみを誘い、それが強烈な印象を遺していたということなのかと想像しました。難民を生み出してはいけないよな…とあらためて思いました。他にも、新型コロナウイルス禍にあるためもあるでしょう、いろいろ今の社会状況に照らして考えることもありました。

 私は国際的な何かを志したことはこれまでありませんでしたが、この本に出てくる国をまたがって活動する人には憧れを感じました。今の子ども達は遠い時代でない偉人として国際的な活動をした日本人を知る機会ってあるんでしょうか? 私の世代も既にそうではなかったような気はしますが、今は尚更そうでなくなっていそうな気がなんとなくします。それも含め、視野が狭くなっていなければいいな…とこの本を読みながら考えていました。