幼少期に親からの愛情を受けた思い出がない。


実際には受けていたんだろうけど、記憶がない。


父は、かまってほしくて話しかける私に対していつも面倒くさそうに返事していた。


母は今でこそ随分丸くなったけど、子ども達が小さい頃は育児が大変だったためかヒステリックでいつも怒っていた。


両親が仲良さそうにしているところは見た事がなかった。


ある朝突然母の実家に連れていかれ、それまで通っていた幼稚園とは別の幼稚園に通う事になった。


何の説明もなかったと思う。


母はあまり話を聞いてくれる人ではなかったため、私は疑問に思いながらも口にせず、その幼稚園に通った。


親に受け止めてもらえないと諦めていたからか、感情の表現とか、自分の思いを口にするのが苦手な子どもだったと思う。


その後両親は離婚した。


幼かったため、いつ正式に離婚したのはわからない。


幼稚園の運動会で、父親と子どもの競技があった。


他の子達が父親と競技をする中、私の相手は先生がしてくれた。


という事は母も来てなかったんだな。


子ども達が大きな紙袋を被って、父親が自分の子を見つけて紙袋を取る、という競技。


周りの子が父親に紙袋を取ってもらって笑い合ってる姿を見て、衝撃を受けたのを覚えている。


お父さんって笑うんだ…って。


私は父から優しく笑いかけてもらった事がなかった。


この頃からだんだんと、うちはよそとは違う事を意識していったと思う。


今でこそ離婚している家庭は多いけど、私が子どもの頃は周りにいなかった。


なんだかいつも心にぽっかり穴が空いたような、後ろめたいような気持ちだった。