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農林中央金庫のCLO(ローン担保証券)の増加は危険なのか?

 

「CLO市場の「クジラ」、農林中金に世界が注視」

「CLO残高8兆円、農林中金 6月末 新規投資は抑制」

CLO(Collateralized Loan Obligation:ローン担保証券)資産担保証券の一種。金融機関が事業会社などに対して貸し出している貸付債権(ローン)を証券化したもの。ローンの元利金を担保にして発行される債券のこと。

 

というような記事を日経新聞で見かける

 

サブプライムローンと構造と似ている事から、危険だと思われ、注目されている様子。

 

本当に危険なのか、

次のバブル崩壊の原因・トリガーとなり得るのか

農林中央金庫のIRをもとにして、調べてみた。

 

https://www.nochubank.or.jp/ir/pdf/cap_results31_01_02.pdf

 

農林中金の運用資金は64兆円。

その内訳は・・・

 

 債券 58%(37兆円)

 株式 6%(3.84兆円)

 クレジット 37%(23.4兆円)

 -クレジットCLO 13%(8.32兆円)

 -クレジットCLO以外 24%(15.4兆円)

 

つまり、全体の運用資金64兆円に対し、

CLOは13%の約8兆円だけであり、

運用資金の大部分は安全性の高い債券で運用されている。

 

また、CLOも安全性の高いAAAの格付けを対象としている。

因みに1994-2013年までのデフォルト率は

 

  AAA格付け 0.00%

  AA格付け  0.00%

  A格付け   0.45%

 

となっており、サブプライムショックの期間を含んだ状態で非常に低い値となっている。仮に保有しているCLOの格付けがAAAから2段階下がったとしても、デフォルト率は0.45%程度であり、影響は限定的である。

 

ちなみに、格下げされる割合は

 

AAAから格下げの割合(1981-2018)

 1年以内
  AAA→AA 9.12%
  AAA→A   0.53%

 3年以内
  AAA→AA 22.21%
  AAA→A    2.34%

 

となっており、2段階格下げは稀(0.53%)である。

 

サブプライムの時は、忍者ローンと言われたように、誰が借りているのか判らない状態でもローンの審査が通ったと言われているが、企業の社債は審査されるし、流石に忍者屋敷ローンにはならないだろう。

 

通常、社債を発行する際は、会社はコベナンツ(制限条項・誓約条項)を満たす必要がある。例えば、財務観点での制限条項では、「純資産維持率、EBITDA維持、利益維持、インタレストカバレッジレシオ、負債比率」等について条件を満たす必要があり、これらの条件を違反した場合は、ペナルティとして高い金利の支払いを要求されるか、即時返済を迫られることになる。

 

(まとめ)

 

農林中金のCLOについて

 

 ・CLOが占める割合は13%で低い。

 ・格付けの高いCLOだけを対象としている。

 ・対象の格付けAAAのCLOのデフォルト率は0%。

 ・2ランク低い格付けAでもデフォルト率は0.45%。

 ・2ランク格付けが下がる割合は0.53%。

 ・社債のため審査はサブプライムの住宅ローンより厳格。

 

以上より、農林中金はしっかりとリスクを抑えて運用しているように感じる。

 

世間の反応を見ていると

CLOはサブプライムローンと構造が似ているから

羹に懲りてあえ物を吹くの状態になっているように感じる。

 

警戒して注視するべきだが、必要以上に過敏になる必要はない。

と思われる。

 

(補足)

モラルハザードの兆候について

最近、低い格付けのローンは審査(コベナンツ、誓約条項)が緩くなっているという話があったり、リスク・リテンション規制5%が一部廃止になったりと、モラルハザードの兆候は見られる。それに対応して、金融庁は、発行主体が5%保有していないCLOはリスクウェイトを3倍でリスクを見積る必要があるという日本ルールを作成して牽制している。

そもそも、複数の社債が混在したものを証券化して売却した場合、コベナンツ・誓約条項が順守されていることを誰が担保・確認するのか?という疑問はある。そのため、リスク・リテンション規制5%は必須だと思われるのだが…

 

これに対しては、トラスティ(社債権者の利益を代表して社債の管理を行う受託者)と呼ばれる第3者機関(債権者と利益相反にならない立場)が、条件を違反した会社に対し、債権の回収や金利等の社債の管理を行い、健全性を担保している。具体的なトラスティとしてはバンクオブニューヨークメロンやUSバンコープが、その役割を担っている。

 

リスク・リテンション規制とは、

CLOの発行主体にCLOを5%保有させる規制。サブプライムの時は、証券化した住宅ローンを売れば、ノーリスクで手数料が稼げる状態でだったため、格付け会社と協力してサブプライムに高い格付けを与えて、売りさばいていた。これと同様の事象が発生するのを牽制するため、発行主体に5%のCLOを保有させることで、質の悪いものを売り抜けることを抑制し、正しくインセンティブが働くようにした規制。

 

(おまけ)

国債・社債(自社株買い)・住宅ローン・カードローン・教育ローン・IPO、いずれも安い金利を背景に膨れ上がっている状態にあり、現在は未来の収入をあてにして、前借りをしながら経済成長している状態である。一度、デフォルトが発生したら、スパイラル状に信用の収縮が起こり、ダメージは大きくなると思われる。しかし、どこが引き金になるのか今のところ思い当たるところがない。個人的には、赤字や利幅の少ない会社の不正会計・デフォルトを警戒している。

 

(おまけ2)

本来、銀行は自分たちで融資先を審査して事業の価値・リスクを見極めて、事業者に融資をして利益を出す機関であるはずなのに、他人が出しているCLOを買っていて、それで良いのか?という根本的な問題がある気がする。

 

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