どんどん分からなくなってくる。


「あたし」ってだれだったっけ?


また弟から言われた。


「お姉ちゃん、恩を仇で返さないでよ」


なに。


あたし、あんたになんかした?


あんたになんかしてもらった?


『恩を仇で返さないでよ』


分かんないよ。


さらりとそんなこと言わないでよ。


簡単に重い言葉押し付けないでよ。


知らないくせに。


あんたに見せてやりたいよ、私の視界を。


あんたに聴かせてやりたいよ、あたしに聴こえる音たちを。


ねえ、あんたにわかる?


右手首に剃刀を置いて、流れるアカい雫が。


切った後にのしかかる自己嫌悪とか。


毎日毎日声を押し殺して泣きながら迎える朝が。


なにもかもが、絶望に充ち溢れてるセカイを。


嗚呼、最後に心の底から笑ったのって、何年前だっけ?


もう、思い出せない。


こわいよ。


紅い世界が広がっていく。


早く終止符を打ちたい。