昨日行われたWBC準々決勝で、侍ジャパンは奮闘及ばずベネズエラに敗れた。侍ジャパンの戦い方や敗因については詳しい方に譲るとして、以下コンサルタント目線でWBCについて感じた周辺事項を何点か記しておこう。
第1に、野球の世界的な勢力図が大きく変化していることに驚いた。イタリアが全勝で予選リーグを1位通過し、さらに準々決勝も勝ち、ヨーロッパ勢初のベスト4に進出した。一方、本家のアメリカは辛うじて予選リーグを通過するという苦戦だ。1990年代まで世界トップ級だったキューバが予選敗退した。
日本では大人気の野球だが、世界的にはマイナー・スポーツである。今回のイタリアの大躍進を受けてヨーロッパでも野球人気が高まるのか、大いに注目したい。
日本には、柔道のように国際化した競技もあれば、相撲のように国内限定を貫く競技もある。個人的には相撲も国際化して、もっと多くの世界の人たちに相撲のすばらしさを知って欲しいと思う。
第2に、侍ジャパンでは大谷翔平・吉田正尚・鈴木誠也といったメジャーリーガーの活躍が目を引いた。元々日本で実績を残した超一流選手がメジャーに移籍しているので当然の結果かもしれないが、世界最高の舞台で真剣勝負の競争をしてきたことが、彼らを一段とレベルアップさせていると思う。
日本人は競争嫌いであることが、各種の国際比較調査から明らかになっている。個人はともかく企業も、GAFAMや中国企業との競争を避けて、「日本には日本のやり方がある」とニッチな分野でひっそりと生息しているケースが多い。競争を避けると、競争力が弱まってしまう。大谷らの活躍を見て、改めて競争の大切さを痛感した。
第3に、前大会まで地上波で侍ジャパンの試合を無料放映していたが、今回はNetflixでの有料放映になった。近年の地上波の凋落とネットメディアの台頭を考えると、当然の現象ではあるが、東京ドームで繰り広げられている日本人の活躍をわざわざアメリカ企業に視聴料を払って観るというのは、やや複雑な気持ちになった。
野球選手だけでなく、わが国には工業製品・アニメ・食事など、素晴らしいコンテンツがたくさんある。しかし、多くの日本企業は「良いものを作れば売れる」ということで、儲ける仕組みを作ることやマーケティングすることには無関心だ。今回をきっかけに、日本企業は「良いものを作るだけじゃダメ」と気づいて欲しいものである。
ところで、今回私は、娘と一緒に横浜駅前のパブに行って、大画面で侍ジャパンの試合を堪能した。そのパブには野球ファンが集って、大いに盛り上がっていた。Netflixに加入するのは大した手間でも経済的負担でもないが、他のファンと一緒にワイワイ盛り上がって楽しみたいという人が、私たち親子を含めて多いようだ。
いま、世界的に孤独が問題になっている。孤独は人の精神を蝕み、経済的にもマイナス影響がある。イギリスでは、孤独問題担当大臣を設置して対策を進めている。
高齢化や非婚化が進むわが国でも、今後、孤独の問題が深刻になることは間違いない。しかし、政府は孤独対策に及び腰だ。「戦略投資」として半導体とか造船とか終わった産業に資金を投じるよりも、パブリックビューイングやライブといった孤独を解消するイベントに支援をする方が個人の幸せにも経済的にも効果が大きいと思う。
(2026年3月16日、日沖健)
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