デジタル生存競争 ダグラス・ラシュコフ(著)の書評です。

この本は、テクノロジーの発展によって生じる社会的な問題や危機について考察した一冊です。著者ダグラス•ラシュコフは、自分で起こした現実から逃れようとする億万長者たちのマインドセットや終末観を批判し、デジタル経済の限界や科学の歴史的背景を明らかにします。また、人間らしい交友やコミュニティの重要性を訴え、テクノロジーを中央集権的でない方法で利用することを提案します。

著者は、メディア論や歴史学、社会学、哲学などのさまざまな分野の知識を駆使して、現代社会の矛盾や課題を浮き彫りにします。また、著者自身がテクノロジーに精通していることもあり、その利点や可能性も認めながら、その落とし穴や危険性も指摘しています。テクノロジーに関心のある人はもちろん、その影響や社会全体に関心のある人にも読み応えのある本です。

かなり極端な主張も多いです。著者は、テクノロジーに依存することを否定し、人間の経験や感情を重視することを肯定します。しかし、それは理想主義にも見えます。テクノロジーは、人間の生活や社会に多大な影響を与えており、それを無視することはできません。また、テクノロジーによってもたらされる利益や価値も無視できません。テクノロジーと人間の関係は、単純な二項対立ではなく、複雑な相互作用です。その点をもっと考慮してほしかったと感じました。

総合的に見て、この本は、テクノロジーの発展に伴う社会的な問題や危機に気づき、それに対処するための視点や方法を提供してくれます。また、テクノロジーに対する批判的な視点や人間らしい価値観を持つことの重要性を教えてくれます。しかし、テクノロジーに対する肯定的な視点や利用方法も忘れないようにしたいと思います。テクノロジーと人間の関係について考えるきっかけになればいいと思います。