超1 〜限界突破編〜 | 日本地図を作ろう

日本地図を作ろう

自転車です。宿もご飯も全部お願いします。


「ところであいついまどこいんの?」

「さぁね。俺も全然連絡取ってないしなぁ。たしか自転車で旅行してるとか聞いた気がするなぁ。」

「自転車?あいつもばかだね。なんだってそんなことやってんだか。つねに引きこもってるくせに、たまにいなくなったと思ったら変な事ばっかやってるよね。一人で。」

「まぁ、彼は一人が好きなんでしょ。家でも、遊びにいくにしても。」

「一人かぁ。俺なら無理だと思うね。だって寂しいじゃん。なんか感動とか共有する相手が欲しいし、うまい~~!って言い合える友達も欲しいしなぁ。大体一人で旅行とか意味わかんないよね。さみしくないんかね?」

「いや~~、寂しいでしょ。なんか○○とかは、しょっちゅう電話かかってきてうざいとか言ってたし、そんな旅先から電話するとか意味わからん事するなら、やんなきゃ良いのにね。でもきっと電話してまで続けてるってことは何かしら意味があるんだろうなぁ。よくわからんけども。とにかく早く戻ってきてひきこもればいいのにね。」

「なんか話によるとあいつすげー痩せたって。いいなぁ。俺も痩せたい~!」

「おまえもやれば良いじゃん。ちゃりんこのるだけだよ。簡単じゃん?」

「そっか、じゃあ、いろいろ準備しないとな!まずは自転車買って、うーんと、あと何必要なんだろ?」

「どーでもいいけど君バイトの時間じゃないの?」

「あー、やべ!おれいくわ!じゃ、これはらっといて!」

「まったく、みんなしっかりしてほしいね。」

「全くだね。そういえば昨日さ、、、、、」

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実家を出たのが午前5時。3日ぶりに早起きをした。
僕が起きると既にばあちゃんは起きていて、おにぎりを作ってくれていた。
まだ温かいそれを受け取り、荷物をすべて持って出発の準備をする。
天候は昨日よりは悪くない。雲が空を覆ってはいるが雨は降っていない。風も吹いていない。
いい感じだ。
母とばあちゃんに見送られ、家を出る。まだ薄暗い道に車は少ない。僕はペダルに置いた足に力を込めた。




午前7時過ぎ。
自転車を押し続けて1時間程経っただろうか。町中を抜けてバイパスになっている道は、整備されているものの、歩道が古いのか所々木の根のせいでぼこぼこになっている。ゆるい上り坂が続く道の途中でタイヤの空気が抜けている事に気づいた。3日連続のパンクである。いい加減にして欲しい。強まる雨の中ひたすら自転車を押し続けている。
おそらくあと2キロほど進めば道の駅があるはずである。とりあえずそこでどうするか考えよう。今はひたすら進むしかない。とにかく自転車を押して歩いていくだけだ。








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「生と死」
自転車をひたすらこいでいる。今は休んでますけども、もちろん。すると、これは危険だろうと思う場面に多々遭遇する。
例えばトンネル。歩道の整備されたトンネルはほとんどなく、自転車が走るのは、端っこにかろうじであるどぶのふたのような50センチ程のスペースである。トンネルに入ると、嫌でも集中する。まっすぐ進まなければ行けない。1メートル右にずれようものなら、待っているのはあの世での長い長い休息である。リアルに死が隣接しているという事を感じる。自分がいくら注意していたとしても運転者が見逃してちょっと左にハンドルをきればそれでおしまいである。
あるいは山道。繰り返し蛇行する道を押し続ける。当然歩道などはなく、大型トラック脇を通るときは彼らに先を譲らなければならない。
下りの道でも事情は異なるが危険はつきまとう。ひたすら上り、たいがいトンネルと抜けると下りの道に入る。するとそれまで時速5キロ程で走っていたところを50キロくらいで進む事になる。ノーヘルで、車に囲まれながら50キロで蛇行運転を繰り返す。これはなかなかスリル満点である。こっちはママチャリである。いつタイヤが外れてぶっ壊れてもおかしくないのではないかと思える。普通に乗っているときには気にならない様な小さな凹凸が、命取りの危険に変貌する。
そんな危険がいっぱいである。そんな事ばっかり続くと、自分はどっかで死んでて、でもやんなきゃという意思が走ってると思わせてる、まぁ自爆霊みたいな存在になってんじゃネーの?とおもったりする。だって、あの時ちょっとおかしくなってりゃ死んでても何の不思議もないわけで。現実に自転車旅行で死んだ人の話は旅行中にたまに耳にしていた。
僕は生きているんでしょうか?この実感は本当の実感なのか?疲労は?
というわけで、知り合いに会うときはちょっぴりドキドキしている。
彼らの顔が青ざめない事を。僕の顔を見て驚いている(ヒゲと黒さに)皆の顔にドキドキしている。

のだ。











               つづく          


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