あらすじ

高校2年生のココロとミクは体育教師の山本から、夏休みに特別補習としてプール掃除を指示される。水の入っていないプールには、隣の野球部グラウンドから飛んできた砂が積もっていた。2人が嫌々ながらも掃除を始めると、同級生で水泳部のチヅルや、水泳部を引退した3年生のユイも加わる。学校生活や恋愛、メイクなど何気ない会話を交わすうちに、彼女たちの悩みが溢れ出し、それぞれの思いが交差していく。

  感想

「リンダリンダリンダ」「カラオケ行こ!」などの山下敦弘監督最新作の完成披露試写会(有料)に行ってきました。

 

徳島市立高等学校演劇部によって制作された舞台演劇作品の映画化作品となります。

 

体育教師から夏休みに補習としてプール掃除を指示された高校2年生のココロとミクが、同級生の水泳部のチヅルや水泳部を引退した3年生のユイとともに、何気ない会話の中から溢れ出す悩みや想いを昇華していくお話。

当時高校生だった中田夢花さんが映画版でも引き続き脚本を担当しており、子供から大人の世界に踏み出していく、女性としての悩みが赤裸々に物語に組み込まれているものの、単なる共感性を求めるような女性あるあるに留まっていなくて、それぞれの考え方の違いや会話のぶつかり合いによって、それなりの答えとして各々の登場人物がその悩みを昇華していく姿に葛藤があり、男性の私が観ても、映画として理解できるレベルの物語として成立していることが大変良かったです。

 

学校生活を通して、恋愛やメイクのこと、水泳部としての悩みと佐渡おけさの踊りのことが、男性との性差や女性として社会進出への戸惑いが会話劇としてクロスしていくシナリオの美しさは光っていました。

 

ただ、会話劇として盛り上がる中盤以降に対して、前振りとしての序盤が怠惰なほどに退屈に感じてしまうことと、折角水のないプールというロケーションで撮影しつつも、元々の会話劇であることから、その広さを生かすシーンがほとんどないことが、演劇作品映画化の難しさでもありました。

比較対象として同じく高校演劇の映画化「アルプススタンドのはしの方」は会話劇である地味さと高校野球の試合展開を上手く掛け合わせて、試合シーンを見せなくてもそれを外野として伝える面白さに長けていたので、比べるともう一歩という感じは残りましたが、後味は大変良かったので、5月の公開時にはまた観直したいと感じました。

 

舞台挨拶では、ディスカッションを重ねてシーンや台詞を作っていった過程を知ることができて、良かったです。

公式サイト