あらすじ

フォトグラファーを夢見る日和(古川琴音)は、派遣バイトで働きながら、 自分の写真をSNSにアップする日々。職場の上司ムツミ(新恵みどり)の パワハラにうんざりしながらも、先輩の栗井(大下美歩)と密かに 仕返しすることぐらいしかできず、何者かになりたい気持ちを持て余していた。 ある日、急な雷雨から逃れて忍び込んだ店で、 顔にピエロのようなメイクをした雨森(廣末哲万)と出会った日和。 思わずカメラを向けた彼の写真が思いがけずバズったことで、 このチャンスに賭けようと一念発起し、 街頭で風船を配るピエロ姿の雨森と再会する。 雨森を利用するために接近したはずなのに、 二人で過ごす自然体で穏やかな時間は、次第に日和の心をほぐしていく。 日和はいつしか雨森に惹かれている自分に気づくが、 彼の抱えるショッキングな秘密を打ち明けられ、 事態は予想外の方向へ転がっていく--。

 

  感想

映像ユニット「群青いろ」による新作が2作連続劇場公開されるとのことで、「雨降って、ジ・エンド。」の初日に鑑賞しました。

 

写真家を目指す日和が、顔にピエロのようなメイクをした雨森と出会い、瞬時にカメラで撮った写真がSNSでバズり、雨森を利用して投稿を続ける中で、深く交流していくうちに惹かれていくというお話。

 

変則的なラブストーリーに、「群青いろ」らしい、他者への不通、伝わらないパーソナルな心情をどのように解放していくかという要素が混ざり合い、観る人の立場によって、賛否の分かれる作品でありながら、重苦しいテーマを恋愛要素を通すことで、彼らなりの答えが示されていて、痛みを感じつつも開放感のあるラストは素敵だと思いました。

ここから先、ネタバレを含む感想となります。

 

「イット」を意識したピエロの影の部分、性的マイノリティ(小児性愛者)が生き続ける苦悩を昇華していくプロセスが、現実の残酷さと恋愛としての複雑な想いを交錯させていて、2人の関係性の中にある生き方の選択として、世間的な否定でも肯定でもないところに着地していることが、清々しく感じました。

 

主人公日和を演じた古川琴音さんと雨森役の廣末哲万さんの存在が際立っていて、それ以外の脇役の方々が記号的に見えてしまうことだけが、気になるところでしたが、前述したとおり、物語としての重くなりがちなテーマを軽やかに仕上げていることの手法の鮮やかさがあり、商業映画で描きにくいところに挑戦されていることは賛辞しかないです。

上映前に舞台挨拶があり、2019年の撮影ながら廣末哲万さんの演技と渡り合う当時新人だった古川琴音さんの堂々とした存在感が映し出されていて印象的でした。

公式サイト