あらすじ 

そう遠くない未来。人工的な環境に適応するため進化し続けた人類は、その結果として生物学的構造が変容し、痛みの感覚が消え去った。体内で新たな臓器が生み出される加速進化症候群という病気を抱えたアーティストのソールは、パートナーのカプリースとともに、臓器にタトゥーを施して摘出するというショーを披露し、大きな注目と人気を集めていた。しかし、人類の誤った進化と暴走を監視する政府は、臓器登録所を設立し、ソールは政府から強い関心を持たれる存在となっていた。そんな彼のもとに、生前プラスチックを食べていたという遺体が持ち込まれる。

 

感想 

デヴィッド・クローネンバーグ監督最新作。

近未来、環境変化に対応するために痛みの感覚を失い、体内で新たな臓器を産み出す病気をを抱えたアーティストののソールは、パートナーのカプリースとともに、臓器にタトゥーを施して摘出するというショーを披露する後に起きる顛末を描く作品。

 

1999年に書かれた脚本が、現在のマイクロプラスチックの体内残留の問題が取り沙汰されるようになるタイミングで、映画として作られた作品のようで、近年のクローネンバーグ監督作品よりも、「ビデオドローム」や「戦慄の絆」など初期のSFボディホラーを彷彿とさせるようなテイストが多く含まれていて、ちょっと懐かしい感じもありました。

 

ここから先ネタバレを含む感想となります。

 

映画全体の感想としては、冒頭のプラスチックを消化してしまう少年の描写と、臓器摘出やアートパフォーマンスをどのように物語に絡ませて、昇華させていくかという流れの中で、ある犯罪組織の行動と主人公ソールのつながりの見せ方に、もう一歩踏み込んだ描写がほしい感じがしました。

 

ソールとパートナーのカプリースの信頼関係は充分に描けているので、それ以外の登場人物の輪郭、物語に及ぼす影響力が難解な物語の中に、悔い足らない部分も多く見られました。

 

人間が環境耐性として変化していく流れで、痛みの喪失が倫理観を越えて、アートとしての臓器摘出をアートとして捉えるアンダーグラウンドな世界の中で、明確な犯罪を示す描写があまりにもアナログで、その対比は面白く感じるのですが、そこも含めて、ある意味説明不足に見えてしまい、行動言動のなぜに、観客側に答えが示されないモヤモヤが最後まで残るのは、やはり消化不良と感じました。

 

ラストシーンは、食事を促す装置が止まっていたので、あれを食べたことで死に向かう終わりと捉えたほうがよいと推測しました。

 

最近の他のR18+作品を見慣れているせいで、PG12の今作の制限は表現の甘さを感じるところもあり、多少冗長に感じてもディレクターズカット版などがあれば、見てみたいところです。

 

公式サイト