あらすじ

1918年、テキサス。
スクリーンの中で踊る華やかなスターに憧れるパールは、敬虔で厳しい母親と病気の父親と人里離れた農場に暮らす。若くして結婚した夫は戦争へ出征中、父親の世話と家畜たちの餌やりという繰り返しの日々に鬱屈としながら、農場の家畜たちを相手にミュージカルショーの真似事を行うのが、パールの束の間の幸せだった。

ある日、父親の薬を買いに町へ出かけ、母に内緒で映画を見たパールは、そこで映写技師に出会ったことから、いっそう外の世界への憧れが募っていく。そんな中、町で、地方を巡回するショーのオーディションがあることを聞きつけたパールは、オーディションへの参加を強く望むが、母親に「お前は一生農場から出られない」といさめられる。

生まれてからずっと“籠の中”で育てられ、抑圧されてきたパールの狂気は暴発し、体を動かせない病気の父が見る前で、母親に火をつけるのだが……。 

  感想

A24配給作品。

前作「X エックス」の前日譚で老婆パールが10代だった頃を描く作品。

 

前作と比較して、とにかく発色が美しいと思ったら、テクニカラー撮影だと知って納得でした。

テクニカラーの代表作「オズの魔法使い」を確実に意識していて、前作「X エックス」に引き継がれる原点が、そこかしこに散在していて、続編である記憶を上手く利用している表現が美しく残酷で、前作に引き続き「悪魔のいけにえ」のオマージュでもあるかけ算がクロスしていて、映画的魅力に溢れた作品だったと思いました。

あくまでホラー映画の系譜なので、パールの殺害衝動や動機付けにリアリティを求めるのはエンタメとして少し違うベクトルになるので、次回作まで先送りにすべき案件のようにも感じますし、「Xファクター」に囚われた精神的つながりのある主人公の未来は、今作では未知の存在として、謎は残りますので、2作目の段階では是非は問えないです。

 

分からない部分はありつつも、前作で謎だった言動や行動の意味のルーツが、今作で分かる仕掛けになっていて、前作より観やすく、ホラー映画としてもエンターテインメント映画としても満足度は高まったと感じました。

 

特殊メイクのようですが、今作も主演のミア・ゴスの演技がすごすぎました。

前作を観てる前提で、未来の姿が分かっているのに、スターを目指して希望を抱く姿が、残酷でありながらも、少し応援したくなる感覚もあって、感情としても面白く誘導される作品になっていて、良かったです。

 

完結編の『MaXXXine(原題)』へ向けて、期待しかないです。

 

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