あらすじ
愁いを帯びた瞳とあふれる好奇心を持つ灰色のロバ、EO。
心優しきパフォーマー、カサンドラのパートナーとしてサーカス団で生活していたが、ある日サーカス団から連れ出されてしまう。
予期せぬ放浪の旅のさなか、善人にも悪人にも出会い、運を災いに、絶望を思わぬ幸福に変えてしまう運命の歯車に耐えている。
しかし、一瞬たりとも無邪気さを失うことはない。
感想
「エッセンシャル・キリング」「アンナと過ごした4日間」などのイエジー・スコリモフスキ監督最新作。
サーカス団で活動していたロバのEOは、動物愛護団体の横やりにより表舞台から退き、その後の流転していく運命を描く作品。
観る人によって賛否分かれる思いますが、人間の都合に左右されながらも、ロバの境遇の不遇さとその目線から見える人間の愚かさやエゴを端的に見せる手法、台詞をできるだけそぎ落とすことで生まれる間合いと動物たちの醸し出す鼓動と叫びが忘れられない体験となりました。
ここから先は、ネタバレを含む妄想的考察をします。
今回初見なので、正確と言い切れませんが、以下のように考えると物語の違和感がなくなると思います。
映画の中盤にて、ある汚名をかぶってしまい、動物病院のようなところに運ばれますが、その後、4足歩行ロボットのカットが入った後に、何もなかったように普通に荷車を引く仕事に復帰している描写に飛んでしまいます。
ここから先の寓話的な展開を単なるドラマチックと捉えるよりも、動けなくなってしまったEOの第二の人生(ロボット?)または、EO自身の夢や妄想と考えられます。
残酷な事を言えば、ファーストシーンのサーカスでも蘇生が試みられているし、そしてこの中盤、そしてラストシーンでも描かれていないものの、その先に待つのは家畜の宿命としての屠殺ということです。
人間の都合によって、不遇な宿命を続けている動物たちの繰り返す運命(死)を露骨に残酷になりすぎないように描いてるのが今作であると感じます。
若干分かりにくい表現になっているとも思いますが、ロバのEOのまなざしの悲しげさが、余計に情感を生み出しますし、人間の贖罪を感じずにいられない、居たたまれなさを感じるラストの重さ、格別の作品だと思います。
公式サイト