あらすじ
郊外のすずめ野団地に静かに暮らす、江井家。江井家は、英夫、英子、そして1人娘の英美の3人家族である。英夫は、娘の英美が2016年2月から、階下に住む家族”備井”の部屋からくるタバコの煙害に苦しめられていることを問題と思う。備井家の家族構成は、美井夫、美井子、そして長女の美井美。江井家と同じく3人家族である。英美は、歌を歌うことが好きでよくベランダで歌っているのだが、タバコの煙害によってベランダに出ることが出来なくなり、歌を歌えなくなってしまう。
感想
団地で起きた訴訟裁判にまで発展したタバコの受動喫煙問題をフィクションとして描いた作品です。
題材としては、近年よく聞く話題ですし、描き方としても面白みはありましたが、裁判シーンを省略して、結末を語るのは大変もったいないと思いました。
階下の住人が喫煙する事実から、タバコの煙による健康被害を受けたとする娘のために、奮闘する父親の記録(日記)だけを追い続け、その盲信的な思い込みが、異常行動に発展していく様だけが終盤まで描かれていて、それがミスリードとして、被害者的立場であった当人が、喫煙者=悪人というイメージの恫喝を加害的に植え付けていて、映画としては決して悪くはなかったです。
鑑賞後、実際の訴訟問題について検索したところ陳述書などの書面を閲覧することができたのですが、映画では端的に流れているところの意味、階下の住人の観察や、診断書のさじ加減、団地全体の呼びかけなど、階下の住人側からの事実の側面が見えてきました。
これを踏まえると裁判では診断書を書いた医師の責任が重く、父親が隠しているある事実も含めて、訴訟による訴えが的確かどうかという視点、複眼的な見せ方を後半で時間を割くことができたなら、真実というどんでん返しが、より効果的なクライマックスが作れたように感じました。
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