あらすじ

夫の死を目の前で目撃してしまったハーパー(ジェシー・バックリー)は
心の傷を癒すため、イギリスの田舎街を訪れる。

そこで待っていたのは
豪華なカントリーハウスの管理人ジェフリー(ロリー・キニア)。

ハーパーが街へ出かけると少年、牧師、そして警察官など
出会う男たちが
管理人のジェフリーと全く同じ顔であることに気づく。

街に住む同じ顔の男たち、廃トンネルからついてくる謎の影、
木から大量に落ちるりんご、
そしてフラッシュバックする夫の死。

不穏な出来事が連鎖し、
“得体の知れない恐怖”が徐々に正体を現し始めるー。

  感想

「エクス・マキナ」のアレックス・ガーランド監督最新作にして、A24配給作品。

 

ホラー風の要素を含みつつ、性意識の差をビジュアライズ化された映像が素晴らしかったです。

 

夫の死を目の前で目撃してしまったハーパーが心の傷を癒すため、田舎町のカントリーハウスで静養する中、管理人やそこで出会う男たちがすべて同じ顔に見えるというお話。

 

主人公の女性が男性に感じる恐怖心や偏見が、男というカテゴライズを見分けられなくなってしまう意識を、夫以外の登場人物すべてをロリー・キニアが演じることで、観る側の見え方に特別感を与え、拡大していく恐怖と大変シンプルなラストシーンが腑に落ちる的確な表現になっていたと思いました。

ジェンダーフリーの考え方が広まり、女性の社会進出など、女性の声を取り入れる動きが盛んですが、女性尊重の中一方で、男性性、男らしさというようなものを発揮すること自体を良しとしない風潮が広まっていることに、違和感を覚えています。

 

エンタメにおいても、かつては男性が演じた主人公を女性に置き換えて、女性からの見え方として描かれている映画も多いですが、いわゆる女性映画の主義主張は、個人的なものが多く、似通った作品が増えているのも事実。

 

そういう中で、今作における性意識の差、主義主張を声高く叫ぶだけでなく、お互いの声を聴く姿勢に目を向けているところに、バランス感を感じますし、脅威に見えるビジュアルやボディホラー的な終盤の展開に、主人公がどうしていくのかという点においても、ホラーを越えた何かになっているのは、映画として趣きが深いです。

 

もう何をもってグロテスクなのか、悪夢的なのか、男性側の悪あがきなのか、判別つかないですが、男性でいることの難しさ、存在の意味が具現化されているようで、心の中でずっと拍手喝采してました。

 

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