あらすじ

緑豊かな郊外に建つモダニズム風一軒家の下見に訪れた中年夫婦のアランとマリー。購入すべきか迷う夫婦に怪しげな不動産業者がとっておきのセールスポイントを伝える。地下室にぽっかり空いた“穴”に入ると「12時間進んで、3日若返る」というのだ。夫婦は半信半疑でその新居に引っ越すが、やがてこの穴はふたりの生活を一変させていく……。はたして、この不思議な穴がもたらすのは幸せか、それとも破滅か。人生が激変してしまった夫婦がたどる後戻り不可能な運命とは…。

  感想

マンディブル 2人の男と巨大なハエ」と「ディアスキン 鹿革の殺人鬼」のカンタン・デュピュー監督の最新作。

 

事前に前述の2作を鑑賞してから、観ることができたので、監督が織りなす不条理劇の手法が案外ストレートに描かれている分、分かり易い映画になっていると思いました。

 

物語は、中年夫婦が下見をした郊外の物件には、地下室に穴が開いていて、その穴に入ると「12時間進んで、3日若返る」という。半信半疑で購入し引っ越しをするが、この穴の存在が二人の生活を一変させていくというお話。

 

この先は、内容のネタバレを含みます。

 

ふんわりと展開を説明すると中年夫婦の愛の境目が明確で、女性としての美しさ、若さへの憧れが激しくて、穴の若返り効果だけをひたすら信じて、穴に入る行為を繰り返す妻と、仕事に埋没していく夫とのすれ違いが、どうなっていくかがみどころです。

 

ここに近隣に住む、主人公の上司の性の欲求の果てしなさが及ぼす運命の果てが絡まって、男女の性の意識差が、穴の存在によって浮き彫りにされることで、物語が大きく動いていく後半のスピード感は圧巻です。

 

ここの時間の経過を台詞なしのモンタージュ技法で一気に見せるため、上映時間が74分という脅威の短さながら、その性欲追求の果てを映像だけで充分に伝えることができていました。

 

ただ、いきなり今作を観ると不条理劇の語り口に、あっけなく感じる部分も若干あるでしょうから、前述したカンタン・デュピュー監督作のどちらかだけでも配信で観て、免疫をつけてから今作を観ると、独特の不条理な笑いのポイントも楽しめると思います。

 

昨日観た「ブレット・トレイン」に引き続き、ヘンテコ日本が少し今作にも登場する後半のあるシーンは、バカバカしくも日本人としては面白く描かれていると感じたました。

 

家に住み着いている地域猫が意味深のように存在してるのですが、物語に関わるようでそうでもないみたいなところもあって、いろいろ気になりました。

 

正直、過去作を観て、面白みを感じるようなら、今作も観ても満足できると思いますが、観る人を選ぶ変に味わいのある作品であることは確かです。

 

 

 

 

公式サイト