あらすじ

サナエ(小川あん)は、今年大学受験を控えている女子高生だ。
ただ、同性のグループであったり、人と交わるのが少し苦手である。
”大人にならなくちゃ”と、自分でも思ってはいるけれど、中々うまくはいかない。
夏休みになり、東京の大学に通っていた姉が帰ってくると、サナエも受験を控えている手前、両親の都合で、家に家政夫を雇うことになる。
家政夫の裕介(石田法嗣)は、無骨で少し恐く感じる。謎が多いと周りも言っている。けど、彼を知っていくうちに、どこか自分と似ている部分や、重なる思いに気づき始める・・・。
それは、サナエの”甘い”初恋であるとともに、裕介の”苦い”思い出を巡る、旅の始まりであった―。

 

 

  感想

ほぼ情報0で観てきました。

人と交わるのが苦手な女子高生と訳ありな家政夫とのラブストーリーではあるものの、相手に同族間を感じる女子高生サナエに対して、ある苦い過去から世間から拒絶して生きている家政夫の裕介との世界線のすれ違いがあって、そこに干渉してくる父親の会社の部下の関係も絡まって、ビターでは収まりきらない苦み強めのラブストーリーになっていて、これを書いている50過ぎのおじさんでも、ギリギリ鑑賞に堪えられる作品になっていました。

 

基本的にはサナエの目線の物語なので、裕介の罪がどれほどだったかは表現されないのですが、恋愛に対する盲目さで言えば、サナエの執着心も暴力性を秘めていないだけで、裕介と合わせ鏡のように見えて、怖さを感じるし、受け入れがたい理由付けとしては充分に納得できるものはありました。

 

ただ、全体的に台詞で物語を説明している描写が多く、現代らしいのですが、若干物足りなさは残りましたが、映像自体は自由度が高く、予測がつきにくい行動導線がかなりあって、展開が読みにくかったり、陰鬱とした部分のサナエのショットであったり、ラブストーリーというカテゴライズから外れた部分もあって、どのように物語を着地させるのか予測していく楽しみはありました。

 

今作を観た理由として、裕介役の石田法嗣さんの演技を観たいというのがありました。

失礼ながら大人になられてからの作品より少年時代に主演された塩田明彦監督の「カナリア」での無骨さが未だに印象強く、その雰囲気が今作でもあって、そこは裏切られなくて良かったです。

前作にあたる「アーリーサマー」も観てみたいと思いました。

 

表面的な初恋のほろ苦さと恋愛の重さ=罪深さが相対的に描かれていて、終盤にあるまっすぐな思いだけではない時間経過も描かれていて、大人になっていく複雑さがあって、味わいがある作品だと感じました。

 

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