普段、難聴とは縁のない人に、
「息子が難聴で…」
と言うと、
「えっ…そうなの…?」
「それじゃ、聞こえないの…?」
とすごく深刻そうな顔をされる。
慌てて、
「あっでも、まったく聞こえてないわけではないんです。」
と言うと、
「そうなんだ!」
とホッとされ、
「じゃあ、どれくらい聞こえるの?」
「今話してる声は?」
と聞かれるので、
「こうやって普通に話すくらいの大きさの音なら聞こえます。」
と言うと、
「そうなんだー(*^▽^*)」
「じゃあ、補聴器付けたらかなり聞こえるね!」
「よかったね!」
と、ハッピーエンド的な展開になりがちです。
障害なんてない方がいい、あまり触れずに同じように付き合ってあげた方がいい、という優しい気持ちからそう言ってくださるのだと思います。
しかし!!
私としては、ここからが本題なのです!!
話を終わらせないで、どうか聞いてほしい。
難聴について…
私も前は思ってました。
医学や科学の力で、健聴と変わらない聞こえ方を確保できるのだと。
弱視で眼鏡をかけてる子もいるし、歯の矯正をしてる子もいる。
補聴器を付けるってこと以外に、特別な配慮はいらないよね?
今の私の考え方は違います。
難聴は音が小さく聞こえる、だけじゃない!
補聴器をつければオッケー、じゃない!
聞こえる=意味わかってる、じゃない!
障害についてあんまり聞いちゃいけない…そんなことない!
特別な配慮…聞き取りに関してはして欲しい!!
でも、それを説明しようとすると、
「難聴にはレベルがあって〜」
「40dBって〜」
「感音難聴っていうのは〜」
「補聴器って〜」
っという感じで、なんか長くなっちゃうし、その割にはあんまり伝わらない…
だから、体験してもらうのが早いと思うんです。
私は、最初に支援学校に行ったとき、難聴の人の聞こえ方を想定した音声を聞かせてもらったんですが、それがすごく衝撃的で。
あ〜これが息子が聞いているかもしれない音の世界なんだ、ってそこではじめてわかってあげられた気がしたんです。
あの体験を、なるべくたくさんの方にしてもらえたら!(少なくとも息子がお世話になる方々には…)
きっと、言葉で語る以上に伝わるはず。
そうしたら、「補聴器を付けて、なるべくたくさん言葉を聞かせてあげたいんです」「ゆっくりはっきり話してほしいんです」「集団生活の中では聞き漏らしやすいのでサポートをお願いしたいんです」などと、言わなくても!!
言わなくても、動いていただける可能性が高まるんじゃないだろうか…
もし周りの人がそうなってくれたら、それってすごく救われると思うんです。
最近別の方のブログを拝見していたときにも感じたのですが。
難聴児の育児をしていて辛いことのひとつは、この人はわかってくれてると思ったけど、そうじゃなかったんだ…って思い知らされるときだと思うんです。
例えば私だったら、
夫が息子の声に「うるさい」と言ったとき。
(息子は声のコントロールがまだ苦手だから大目にみてあげてほしいし、「声が大きいよ。もう少し小さくしよう。」って教えてあげるチャンスでもあるのに…)
親戚に「なーんだ、よく聞こえてるじゃん!」と言われたとき。
(褒めてるか励ましてくれてるつもりなんだろうけど、何もしなくても大丈夫じゃん!と言われてるようにも聞こえる…)
娘の園の先生が息子に早口で話しかけたとき。
(難聴ってことはご存知なのに…他の子にするのと変わらない話しかけ方だな。)
難聴に関する資料を提出した役所の人に「あ、これはいらないです。」と言われたとき。
(作ってきてって言われたから作ったのに…書類上必要ないとわかったら、一読すらしないのか…難聴について知ろうという気持ちは無いんだ…)
周りの人は私と同じ気持ちじゃなかった!と気づかされると、意外とショックで落ち込みます…
(もちろん他の人にとっては息子も私も大勢の中の一人なわけだし、そもそも自分と全く同じ人なんて存在しないし、当たり前なんですけどね)
でも、なんとかするしかないから、その都度できるだけ伝えようとするんだけど、これがけっこうしんどい…
説明にしてもお願いにしても、私が発信するばかりだから、なんだか自分が相手に求めすぎてるクレーマーか過保護な親にでもなったような気持ちになることすらある…
私が考えたことを実行してもらうんじゃなくて、相手自身に考えてもらえたら、もっと心が軽くなると思う。
私なんて、人としても母としても難聴児の親としても、まだまだ未熟で知らないことだらけなのに。
完全に任せられて司令塔のように扱われても、テキパキと判断したり指示を出したりなんてできない…
何かを始めるときや困ったときには、一緒に考えてもらいたい。
どう思うか、何が疑問か、どんなことができるか、相手からも発信してほしい。
で、それならまずは体験してもらえばどうかなっていう話に戻るんですけど。
私があのとき体験したように、「え、難聴の世界ってこんななの!?」ってそれまでのぼんやりした難聴に対するイメージがスパッとクリアになったら、もしかしたら、少しは何かが変わるのでは…!?
ということで、難聴の擬似体験ができる音声を探してみました。
いいなっと思ったものを貼らせていただきます。
(作成してくださった方ありがとうございます)
※不安な気持ちで情報を集めている方や、今の生活が順調な方には、ただショックを与えてしまうだけかもしれませんので逆におすすめしません!!
※「人に説明するのに使いたい」「もっと具体的にイメージしたい」など、目的がはっきりしていて、前向きに捉えていただける方に聞いていただければと思います。
★やんわりお伝えするならば、テレビのインタビューなどで使われているモザイク音声に近いかな、という印象です。
★耳栓やヘッドフォンでも難聴体験ができます。
他には補聴器屋さんのサイトにも色々と音声データがあるんですが、上の動画の方が支援学校で聞かせてもらったものに近かったです。
↓「加齢性難聴」とされてますが、こちらの動画もわかりやすいと思いました。
この動画の場合は、最後まで聞いたあとに、もう一度初めに戻って聞いてみてほしいです。
そしたらもう難聴バージョンの音でも意味がある文として聞き取れます。
一度目に聞く時は、耳が慣れていないし、何て言われるのかまったく予想できない状態で聞くので、すごく聞き取りづらいんです。
2回目に聞く時は、少し音に慣れてきているし、きっとこう言われるだろうなという予想ができているし、特徴的な単語も頭に入っています。
だから、音自体は全く同じ(聞き取りづらい音)なのにも関わらず、聞き取ることができるんです!
このことから、「繰り返し聞かせてあげること」「何について話すのか事前に情報を与えてあげること」「わかる言葉の数(頭の中の言葉のストック)を増やすこと」がとても大切であるとわかります。
あと、難聴を映像で再現したものも見せていただいたことがあって、それもわかりやすいなと思いました。
音声を聞いてもらう時間がないときにも使えるし、相手に渡すこともできるし。
↓これは研修会でいただいた資料
ちなみに別のパターンのもあったんですが、資料としてもらえていないので、なんとなくこんな感じだった!という記憶を頼りに私(素人)が書いてみました
↓これ
上から、
「健聴」
「伝音難聴」
「感音難聴」
「感音難聴(騒音下での場合)」
です。
三つ目の文字を見て、「まあなんとか聞こえるじゃん」と思った人もいるかもしれませんが、ちょっと待ってください!
これは、静か〜な場所で、一対一で向かい合って、ゆっくりはっきり話してもらった場合の聞こえ方です。
そんな状況って、検査のときくらいしか無いですよね。
騒音っていうと電車の音とか、ものすごい大きな音を想像しちゃうんですけど、エアコンとか人の話し声も騒音なんだそうです。
ということは、普段の暮らしの中での聞こえ方としては、一番下の文字くらいなんだと思っておくべきなんじゃないでしょうか。
それともうひとつ大事なことは、補聴器や人工内耳のことです。
補聴器は素晴らしい機械です。
でも、もともとの聞こえ方の歪み等を直すことはできないし、色々な音の中からその時必要な音だけを選んで大きくすることもできません。
調整ができるといっても、子どものうちは「この音が苦手なのでもう少し抑えてください」なんて的確に伝える力もありません。
だから、大きい音の中で小さい音に集中したいと思っても難しいし、健聴の人だと気に留めないで済む風の音でもうるさく感じる可能性があるし、呼びかけにも気づきにくいし、一度にたくさんの人が話していたらどの音がどの人の声なのかわからないかもしれません。
逆に健聴の子がビックリして怖がるような音への反応が薄いこともあります。
(大きすぎる音は小さく調整されるので)
補聴器は万能ではないし、健聴の人の耳とは別物。
なので、補聴器を付けていても伝わる工夫は必要だし、雑音はなるべく少ない方がいいといえます。
それと、補聴器(機械)を通して聞く音は機械っぽいんだそうです。
ということは、テレビの音など機械から出る音は機械感が増し、リアルの音よりさらに聞き取りづらくなります。
マイクの音、拡声器の音、放送の音、リスニングテストなど、大事なことが機械を通して発せられるときには配慮が必要といえそうです。
難聴の方で電話が苦手という方が多いのは、顔が見えないというのもありますが、音声自体の質が落ちるからというのも理由のひとつなのかなと思います。
長くなってしまいましたが、4月から新しい生活が始まる方もいらっしゃるだろうし、私自身もまだまだ理解不足なので、いつでも思い出して活用できるように、今までの勉強のおさらいを兼ねて一気にまとめてみました。
変なところもあるかと思いますがすみません
まだまだ色々あるのですが、とりあえずここまでをいちばんに書きたかったので。
いったん区切ります。
読んでくださったみなさま、ありがとうございました。