これは介護現場で起きた話
私の施設では12時30分までに全フロアの人達を食堂まで誘導しなければならない。
その中には車いすの人や認知症の人や、自分で歩けるがあまり行きたがらない人もいる。
その日私は1人の男性を誘導するため、その方の居室へと向かった。
いつもは快く「もうそんな時間か…行こうか」と言ってくれるのだが、
なぜかその日は「何もしたくない。もうちょっと待ってくれ」と頑なであった。
何度言っても同じ返答が返ってくるばかりでどうすることも出来なかった。
そこで私は男性のベテラン先輩に来てもらうことにした。
先輩はすぐに部屋に来てくれて「どうした?行きたくない?」と色々コミュニケーションを取ってくれたのだが
「10分待って!」と先程よりも強い口調で返ってきた。
すると先輩は「まあこういう時は時間置いておくのがいいね…他の方を先に誘導しよう」と言ったので
私は「わかりました」と言い二人で部屋を出た。
部屋の扉を閉めた後先輩がぼそっと「なんで10分かわからないけどなあ」と一言。
多分気にするところはそっちじゃない。
絶対的に「待って」の部分だと思う。
いつも快く受け入れてくれる方が「待って」と言っていたら
体が痛いのかとか、体調が悪いのかとか、お腹がすいていないのかetc…など様々な疑問が浮かんでくるはずだ。
だが先輩はそれらを全部投げ捨てて''10分''の方に飛びついた。
絶対そっちではないしなぜそこで区切ってしまったのか。
それは言うなれば、ダンディ坂野の「ゲッツ!」という一発ギャグに対して「ゲッツってなんだよww」ではなく
「なぜgetの複数形なんだろ」と思うのと一緒である。
絶対そっちではないしダンディ坂野自身も別に''複数形''に面白みを感じているわけでもないだろう。
ちなみに、3分後にまたその方のお部屋に入り声をかけると「ちょうど10分だね」と
笑いながらおっしゃっていた。
あなたが良いなら私はそれでいいですよ。