どうも貧困メタラー枯林です。
2年ぶりにインギの通算21作目(カバーとコンチェルト含み、アコースティックセルフカバー除く)がリリースされました!
その名も「Parabellum」!
※本作を気に入っている方は読まない方が良いかと思われます。
直近のインギの活動といえば3月21日にストリーム配信ライブがありました。
信者としてほんのすこ~しだけ気にはなりましたが、2015年に観たライブと同様にリードボーカリスト不在の布陣ならわざわざ配信で観る必要もないのでスルー。
セットリストサイト
後日私の愛用するセットリストサイトに曲目が載っていましたが、これならスルーした私の判断は正しかったです。
現在のインギのやり方は好きではありません。手癖フレーズを組み替えたインストルメンタル、キーボーディストの片手間ボーカル、インギの自らのジャイアンボーカル…。肉眼で観る来日公演ならまだしも、配信では全然興味が沸きません。インギ独りの弾き語りとかの方が見てみたいです。
所謂消極的信者である私はバンド体制が崩壊した前々々作「Spellbound」前々作「World on fire」を高く評価していません。個人的にこの2作はインギのディスコグラフィ内で"駄作"ではなく"問題外"に位置します。
前作「Blue Lightning」は企画盤ですが8割カバー曲なので聴けたし、これからもインギ本人が歌うアルバムを作成するのならブルーズ路線にパワー全フリした方が寧ろ良いものが出来る感触すらありました。
しかし本作の事前情報は以下の通り前々々作、前々作を踏襲したものでした。
・全10曲
・歌物は4曲、あとはインスト
・インギ本人が歌う
・ブルーズ路線ではなくネオクラ路線
...事前情報で肩を落とすファンもいるでしょう。
私もその1人であると言わざるを得ません。
そろそろ新作(という名の過去作再構築)を買うのが信者の私でもキツい...。
長年同じ音楽性で活動していると新作を出せば出すほど過去の作品の輝きが増してしまうアーティストは世の中に沢山居ますが、インギも例に漏れることは出来ませんでした。
しかし「もしかしたら...」と、私はいつもその可能性に賭けてしまうわけです。
もはや1%くらいしかないのに。
いや、1%なんて高確率じゃなく0.1%位...。呪縛の如く気が付いたら買っている憐れな信者です...。
リリース前のインタビューでは
「ここ数年、少なくとも10年、15年くらいは、レコードを作っていたが、ツアーに出て、スタジオに1週間くらい入って、それから、またツアーに出るという感じだった。これは悪いことではなく、実際にはとても良いことなんだ。でも、ここまで集中したのは『Trilogy』以来だと思う。レコーディングだけでなく、ソングライティングもそうだ。曲を書くプロセス、アレンジ、すべてにおいて。その方向に完全に夢中になった。みんな俺のことをクラシカルなことで知っているが、これはまさにそれだ。みんなの反応を見てみたいと思うが、俺は少し離れてから、つい先日聴いた。かなり過激だ。これまで以上に速くなり、あらゆるものがある...」
と毎回同じようなことを繰り返し口にしていて、蓋を開けてみたら「はい、いつものインギでした!」なオチをここのところずっと続けています。特に心躍ることもなく期待値も低め…。
どこかでインギは現在の活動に満足している旨の発言を読んだことがあります。もう大きな成功を狙う野心や新たなファン層を開拓しようなんて気持ちは無いのかもしれません。その覇気の無さが近年発表された作品に反映されてしまっているのかな…と。
そして必ず話題になる「専任ボーカリストを起用しているのか?」があります。
上記の通りまたもや自身で歌っちゃっています。この件に関してはかつてシンガーとして在籍したMark Boalsが2021年の4月にインタビューを受けていました。主に「インギがここ数作で正式なシンガーを使わず自分で歌っていること」に関して。
Mark Boals インタビュー
要約すると下記。
『僕は彼の声を知っている。1999年のレコーディングの時にインギが「俺は8年ボーカルレッスンをやっている。何が問題なんだ?俺は何が間違っているんだ?」と聞いてきたよ。
彼の声色は歌を歌うには合っていない。心地の良い歌声にならないんだ。僕は彼になんて言ってあげればいいのか分からなかったよ。それが真実だ。しかし彼は本当に歌うことに一生懸命なんだよ。
シンガーと楽器演奏者は全く違う球技者のようなものだよ。もし君(インタビュアー)がDIOやIan Gillanのように歌いたくても肉体的に限界があるんだ。そしてそれは才能なんだよ。インギはギタリストだ。なぜ彼が自ら歌うべきだと考えたのかは、僕は分からない。』
Burrn!のMark風に訳しました。
やはりMarkもインギの歌声は「無いわ」と露骨に発言しています。私も同じです。
なぜインギは昔以上にバランスという言葉を忘れてしまったのか。
その答えを、なんとなくこの記事から悟れた気がします。
インギインタビュー
「俺は1984年からソロでやってる。だから、それ以降一緒にやってきた人たちは雇ったに過ぎない。」
雇っていたに過ぎない
雇っていたに過ぎない
…なるほど。
インギが持っていた感覚はバンド活動ではなくあくまでソロ活動だったのです。
そこが私を含めた大半のリスナーとインギとの認識の違いを生じさせていたと。私や大半のリスナーはインギがバンド活動をやっていたのだと捉えていたと思います。なぜならきちんと歌えるボーカリストを起用した歌モノ楽曲が多かったから。
ただインギのソロ活動ならライブで5〜6分するインストを何曲も演奏するのも勝手。20分のギターソロをライブでやるのも勝手。自分のステージなのだから他のメンバーが目立つのは決して許さない。
なぜならインギのソロ活動なので、何をどうしようとインギの勝手なわけです…。
…もしかしたらまた昔みたいに超絶なボーカリストと組んでシーンに殴り込みをかけてくれる日がいつか来るのかもしれないなんて夢も、このアルバムと上のインタビューで本格的に潰えた気がしてなりません。
この文章を作成している段階ではまだアルバムを聴いていませんが、既に悲しくて泣きそうです。
悲しい、本当に。
本格的に諦める必要が出てきたとなると、作品の質を改善するためにはやはりネオクラシカル路線を捨てブルース作品を作っていく方向へシフトすることですね…。
と散々文句言いましたが、インギが歌おうがなんだろうが、結局楽曲が良ければそれでいいのです。優先されるのは完成されたアウトプットの結果であり、それを作るための素材は結果さえ良ければ極端な話、何でもいいのですね。
なので圧倒的な結果を提示して私を黙らせてくれ!でも出来たら別の人に歌ってもらってくれ!
○メンツ
Yngwie J.Malmsteen (Gu、Vo)
Lawrence Lannerbach (Ds)
【感想】
※悪口ばかりになってしまうのも嫌なので、感想に関しては全肯定するポジティブシンキングで行こうと思います!
01. Wolves At The Door
いきなりピロピロ。パガニーニの24のカプリースを間奏にまたまたフューチャー。最近の日本で言うなら「揉み消して冬」というドラマのメインメロディで使われたことが記憶に新しいです。ちなみに2000年にリリースされたアルバムの「Prophet of doom」でインギは既に24のカプリースを間奏に組み込んでいます。
「過去のことなど俺には関係ない。俺には未来しか見えていない!」とリスナーの心など一切無視した強気の姿勢が見て取れますね!素晴らしい!
02. Presto Vivace in C# minor
いつもと全く同じのフレーズを延々と畳みかけます!間奏に当たる部分でVengeanceとTide of Desireのキメがまたもや登場。これからは「このフレーズを1アルバムに付き1回は使って浸透させていこう!」という気概が感じられますね。これぞインギだ!
03. Relentless Fury
Only the Strong系のパワーリフが結構良い。歌メロもなかなかだし、歌はインギだけにしか出せない味がある気がします!
04. (Si Vis Pacem) Parabellum
いつもよりハイテンションな音がピョー!と飛び出し、インギ史上最速のビートや泣きっぽいピロピロと多展開ですが、出てくるものはいつもと同じ。これぞインギだ!
05. Eternal Bliss
お!荘厳なコーラスから始まり期待できそうな雰囲気を裏切らず、歌に関しては普通に良いのではないでしょうか!歌メロをそのまま使ったギターソロはエモーショナル。
06. Toccata
よく弾くフレーズをメインにしたインスト。作成途中に聴き返したりしていないのか…。レコーディングが終わったら振り返ったりはしない!これぞインギだ!
07. God Particle
過剰装飾ですがいい感じのアコースティックから開始。途中でバンドが入りいつもと同じになりますが、サビに該当するフレーズが雰囲気あってちょっと良い!これぞインギだ!
08. Magic Bullet
もはやフレーズではなくピロピロのスピードで楽曲の区別を付けようとしている気すらしてきます。流石目の付け所が違う!これぞインギだ!
09. (Fight) The Good Fight
冒頭の「あー」というコーラスにアコースティックギターのピロピロ。まさにインギのお家芸と言えます。そこからメタルに突入!これも歌メロがナカナカ。
10. Sea Of Tranquility
アルバムを締めるクロージングインスト。所々新たなフレーズの息吹を感じさせるのはインギの技巧の為せる技と言えますね。これぞインギだ!
【まとめ】
最初から最後まで無感情に聴いてみました。皮肉になってしまったのは謝ります。誓いますが、書く前は本当にもっと明るいことを書くつもりでした。
いつも通り期待できない予告をされ、いつも通り期待せず、いつも通りの結果を叩きつけられ、それに対して「騙された!」と口にするのは愚かな行為であり、私にできることは結局はただ肩を落とすことだけ…。
がッ!がッ!
インストはどれもこれもトホホですが、歌モノは雲間に多少ですが光が差し込むような出来のものが多い気がします。新しいギターのメロディを作るのは無理でも、歌メロ創作力はまだそこまで枯れていない!
やはりインギが歌うのは勿体無いので、アルバムだけでもきちんとしたシンガーを使ってくれ!
ライブはインギで我慢するので、この点だけは切実にお願いしたい。
・ボーカル
可も無く不可も無く。お願いだから…スタジオ版だけはきちんと歌えるシンガーにして…。貴方の声はやはりメタルには合わないですよね。
・ギター
ぴろぴろ。
・ドラム
ここ最近の作品は全て同じ傾向にあります。これ本当に人間が叩いています?ハイハットなんて2012年の作品からずっと同じですし、スネアはバケツを叩いたような音。バスドラも変な音…。ライナーノーツにも「打ち込みだと思われる」と記載がありました。本当はLawrence Lannerbach氏なんてこの世に存在しないのかもしれませんね。
・音質
2021年とは思えない音質。
あれだけ音楽に他者を介入させないと語っているインギがマスタリングを自由にやらせているとは考え辛い。ここはインギの耳が壊れているか、こういう音が好みなのだと考えられます。
紹介文章に『日本盤のみBlu-spec CD仕様でサウンド・プロダクションも良好、細かなギター・プレイまでクリアに再現した渾身作! !』の記載があります。恐らく「Blu-spec CD仕様だし2021年だし、良い音なんだろうなぁ」と一度も聴きもせず適当に書かれたものでしょう。
Blu-spec CD仕様ですら、インギの前には風の前の塵に同じということか。
・ジャケット
今回は自画像。インギのマネージメントを取り仕切る嫁のApril氏が世界中の孤児や里親になってしまった子達に希望を与える活動を始めたらしく、詳しい説明は省きますがその一環でこういうジャケになったそうです。
インギの音楽に関して只管安価で悪い方向に持っていくのに、そんな活動を始めていたんですね。これを機にマネージメントは有能な方に任せてそちらの活動に専念されてはどうでしょうか。
・結論
前々々作は8点、前々作は7点なので流れに乗って6点!
…といきたいところですが、少しだけ復調を思わせる感覚に陥ってしまったのも事実。
なので13点!
とはいえまだまだ紛れもない選りすぐりの信者専用であることは否めません。生半可な信者では太刀打ちは不可能。マーケティングターゲットは私のような「インギだったらクオリティ関係なく購入!」といった信者に限ります。
自身のボーカル4作目ですもんね。「ボーカリストは最多でも2作で変わるジンクス」など余裕でぶっちぎってますもんね。
そもそも、もう彼に「こんな作品を作って欲しい」と期待すること自体が酷な事なのかも...なんて気持ちが沸いてくる作品でした。アーティストがファンの期待に応える必要はないと常日頃から主張していますが、それは結果的に想定していたものと同じか同等のクオリティがアウトプット出来る前提で言っています。
今残っているファンの多くはインギの楽曲内容なんてどうでもよく、元気よくピロピロしていれば最高!という方が多いのかもしれません。
愛し方は違いますが、私も彼の大ファンとして文句を言いつつもインギが燃え尽きて灰になるまで見守り続けるつもりです。
・後書き
インギに興味の無い方がこの記事を読んでいることは考えにくいですが、もし居たらこれを聴いて「ほう、これが枯林の妄信するインギね~」なんて勘違いされたら悲しい話なので、初心者でも聴きやすい作品を挙げておきます。
〇おススメ
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