前作「Spellbound」の悲劇から早4年…

イングヴェイ・ピロ・マルムスティーンの19th「World On Fire」がリリースされてしまいました…。恐らく妄信的な信者の方達以外、ほとんどのファンが望まない方向性の作品だと思います。

20160605

※このジャケットを見ていると、身内が落雷に当たったことを嫌でも思い出します。

事前情報通り駄作となった前作を反省する…わけもなく、むしろノリノリなインギー伯爵は

「俺は長年なぜリードボーカリストがいるのか疑問だった。俺がソロを弾いている間、コイツはステージで何をやっているんだ?と思っていた。」

「ボーカリストを起用しない今回のツアーは集客数が倍くらいになったんだ!」


と勘違い発言連発。
売り上げに関しては本当なのかもしれませんが、本当なら調子に乗っちゃう気持ちも…わからなくはない、けど出来ないこと無理にしないでほしい。

前作13曲中ボーカル曲は3曲、しかもインストはほぼ適当に弾いただけのフレーズを羅列したもの。ドラムも「俺が叩いている!」と豪語していたのに実際はプログラムの打ち込み。ファンを完全に馬鹿にした格安極悪作品でした。圧倒的の低品質。


彼は昔「俺はヘヴィメタルを歌うことは出来ない」と自分の声の特性を自覚しているような発言を度々していたので、歌うにしてもブルーズナンバーに留めていました。

そのタブーを侵した前作。

今回もどうも「ネオクラシカルだ!」とインタビューで連呼していたところを見ると、自分で歌えないと言っていたヘヴィメタル曲をまた歌っちゃったアルバムなんじゃないかと不安に刈られていました。

あのインギーボイスでメタルナンバーをまた歌っちゃうのか。止めてくれ、自ら曲のクオリティを下げるような真似は止めてぇ…と悲鳴を上げること自体、すでに前作で超えちゃいけない壁を超えていたことを考慮すると、無駄なような気もします。

そして「同じシンガーで作った2作目のアルバムは失敗する」というジンクスもあります。前作は3曲とはいえ、シンガーも担当したインギー。つまり本作はジンクスに乗っとると駄作。前作よりも駄作って…果てしない。

とりあえず発売前にBurrn!誌にて歌入りは3曲しか無いことを知りました。完全な歌モノだと思っていただけに、肩透かしです。結局前作と同じくインスト中心なのね。勝手に歌モノとインストの比率が逆だと思っていました。

演奏面では前作の打ち込みドラムは流石に反省したのかMark Ellis氏なる方をきちんと起用しています。Patrick氏は脱退か。Burrn!のインタビュー曰く2013年には脱退していたみたい。長く頑張ったのにね。キーボードはツアーで歌っていたNick Marinovich氏です。といってもクレジットはadditional keyboardです。手柄を全て独り占めしたいインギーからしたら最大の譲歩だったのでしょう。


別のアーティストなら本来もっと聴き込んでから感想作るんですが、いくら聴いてもあまり発見が無さそうなのでもう上げちゃう。あと先日新宿のDisk UnionにこのCD聴きながら入ったら、大音量で流れていたChance Raspberryなるバンドに完全魅力されてしまい、イヤホンとIpodを鞄に仕舞いました。こんなの聴いている場合ではないと思わされた…。複雑です。

本作を「傑作だ!」と讃える人は読まないほうが良いかも。

【感想】

01 WORLD ON FIRE
In the name of godを彷彿とさせるアカペラから散々使い回されているDeath dealerをちょっといじったリフ。でもリズムはSeventh Signタイプ。ライナーノーツにあったように、確かに以前より自信を持ってしまったかのように感じ取れます。ボーカルパートはそんなに悪くないかも。慣れか!?Kai Hansen的な?語尾の「んはぁぁー」や「うふぅぅん」と息を吐くことを止めてくれたらもっと良いのに。「なんてセクシーなんだ!」と勘違いしてそう。

02 SORCERY
最後にチャチャーと遊んでいるフレーズが個性的と言えば言える。それ以外はピロピロ。捨て曲。

03 ABANDON
ビックリするほどにピロピロ。これを曲と形容することを止めてくださいインギー様。捨てピロ。

04 TOP DOWN, FOOT DOWN
手癖ピロピロから始まるも、ちょっと印象的なサビギター(というのかわかりませんが)。Shot across the bowの劣化版やんと初見では感じましたが、何故か悪魔城ドラキュラを思い出してしまう私的懐古メロディが好きかも。

05 LOST IN THE MACHINE
コーラス隊使っているとインタビューで言っていたからこの曲か?インギーっぽくないコーラスが入っている。可もなく不可もなく。

06 LARGO - EBM
メインメロディは良いけど、大袈裟な荘厳アレンジのせいでいつものインギー。たまにはキーボード無しでやって。コーラスマシーンを「あーあー」鳴らするのは神秘性をお手軽に醸し出せるのはわかるけどさ。

07 NO REST FOR THE WICKED
メインリフの下降ピロピロで聴く気を奪われそうになります。途中でShip of foolとInto valhallaのリフにガッチャンコ!その後転調の如くなぜかRising forceっぽい雰囲気のリフが…。粗ばかりが耳に付いてしまう…。捨て曲。

08 SOLDIER
インギーの二人いないと歌えないバラード調からまさかのメタル展開に。曲もインギーに合っている気がするため、カッコいいと思わされてしまった。なんてこったい。ソロはDemon driverのいつものフレーズをたどたどしく別の音を混ぜて展開。

09 DUF 1220
サビにあたる箇所以外ピロピロ。捨て曲。

10 ABANDON(SLIGHT RETURN)
前のトラックと繋がるように始る。頭からケツまで全て手癖。捨て曲。

11 NACHT MUSIK
どんなアコースティックギターパートも荘厳風味にしちゃうから個性があまり感じられない。Asylum Sky EuphoriaからHeavy heartのフレーズまで繋がります。インギーのインストバラード大全集!捨て曲かは人に依りますが、私は捨て曲かな。

【総評】
前作収録の「Majestic Suite 12 1,2&3」の続編「4,5&6」があるかと想像していましたが、ない。インギー忘れちゃったのか?

正直前作のインストはまだ「ここをこうすればもっと良くなると思う」という改善点が具体的に想像できる内容のものが多かったわけですが、今回のはもう曲ですらないものも多くクオリティは酷い。こんなんなら全曲ボーカル入りにして。

しかしボーカル曲が良くなったおかげか全体的に完成度が底上げされた錯覚を受けます。インギーに元々歌ってほしいとは全く思っていない身なので、勿体無いという結論に到りますが…。それに引き換えギターは前作以上に「新しいフレーズが無い…」と落胆させられます。

音質は打ち込みだった前作とあんまり変わらない。ハイハットとか前作並みに無機質です。本当人間が叩いてるのこれ?

50点が普通として、前作が8点だとすると、今回は7点か8点。ほぼ同率くらい。

私はこれまでインギーの全ディスコグラフィーに触れてきた人間なので、どうしても過去の楽曲郡と比較せずに語れない業を背負っています。全く知らない人が聴いたら何点ぐらいになるのか非常に気になる。どこぞの議員同様に「第三者」に確認してもらいたい。

お布施のつもりで内容には目を瞑りながら新品購入していましたが、次回作は本当に中古で500円になるまで買わないかも。うーん、買っても文句言ってばかりで疲れちゃうし…。インタビューでも間奏で何もしないシンガーが存在するステージに疑問を持っていたと語っていたため、まだこの方向で行くつもりのようです。せめてスタジオ版くらいきちんとしたシンガーを起用してほしいという望みも、この調子では難しいでしょう。自己解決はほぼ不可能。プロデューサーを雇わなければもう無理だろうね。

目を覚ましてほしい。





さて気分を少し変えてみて…

酷評してしまったものの前述の通りボーカル曲の出来は予想外で悪くなかったです。確かにシンガーとしても成長しているのかもしれません。今まででインギーが歌った曲、結構溜まったんじゃない?数えてみると全部で13曲?デモの「Birth of the sun」抜いて。


そこで

緊急無駄企画
Singer Yngwie Album勝手に作成!

『THE BEST MALBUM!』

Angel in heat
Soldier
Let sleeping dogs lie
Repent
Look at the now
Manic depression
Freedom is not free
Cherokee warrior
Lost in the machine
Poisoned minds
Magic city
World on fire
God is god

ちなみに曲順は私が勝手に5分位で決めました。異論は認めます。ついでにちょっと解説。

【解説】
01 Angel in heat
超名作Seventh signの余韻を台無しにした驚異の存在!世間を衝撃と絶望に誘った迷曲です!…実は私は結構好き。

02 Soldier
本作より。一番破壊力があるのはやっぱりこれか。

03 Let sleeping dogs lie
手抜き第二作Spellboundより。そんなに悪くはないし、ギターソロでハッとする瞬間もある。瞬間でしかないけど…。

04 Repent
同上作より。メタル曲を初めて歌ったらしいです。ボーカルのメロディラインがそんなに悪くないだけに、歌っているのがインギーで残念。

05 Look at the now
手抜き第一弾Relentlessより。バラードチックなナンバー。冒頭のQueenみたいなギターが唯一良い。そこ以外は酷い。

06 Manic depression
カバーアルバムInspirationより。もちろんアルバム内でも屈指の捨て曲でした。

07 Freedom is not free
微妙なAttack!より。出来に関して賛否両論ある作品内でも他を圧倒的に引き離すぶっちぎりの捨て曲。要らないし流れを壊すが、この企画には必須。

08 Cherokee warrior
詰め込みすぎなUnleash the furyより。インギーの歌う曲が初めて好意的に受け止められた曲。変な歌い癖が無ければもっと良かった。あはんうふん。

09 Lost in the machine
本作より。普通。

10 Poisoned minds
Spellboundより。どっかのサイトに「精神を毒された歌」と表現されていて笑った。とても的を得ていると思います。まあ苦悶を表しているのだと私は受け取っています。

11 Magic city
シンガーが合わなかったPerpetual flameより。インギーの声に合っているため、かなり良い出来です。長いソロもかなりグッドです。是非違う人に歌ってほしかった。

12 World on fire
World on fireより。キラーチューンのつもりでインギー自身作ったようなので、気持ちを酌む意味でこの位置。

13 God is god
Alchemyボーナストラックより。歌と形容できるのか微妙。声はインギーが機械処理で変えているらしいので、アウトロに追加。ギターパートはイカしています。

【ソウヒョウ】
うーん。なんとも言えん。これにお金が払えるかと問われれば、答えは「いいえ」か「NO」のどちらかにしかならない。

と言いつつ、最終的には応援してしまう存在なんですねよ、インギーは。文句を交えて色々語ってみたわけですが、この記事作ってて思ったのがなんだかんだでやっぱりインギーが好きみたいです。こんだけどうでもいいことをブログに長々と書けるのですから。純粋に愛しているファンの方には歪んだ愛情にしか見えないかもしれませんが、そこは暖かい目で見守ってやってください。


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