2019年6月8日、彼は亡くなりました。

Andre Matos氏(以下マトス)はブラジル出身の享年47歳。人生100年時代と言われ始めている昨今において、流石に早すぎる死に驚愕しました。




そんなバカな。


急逝⁉︎


なぜですか!


俄かに信じられません。47歳ですよ!

将来的に正式なシンガーの存在しないAngraに正ボーカルとして出戻り「AQUA」に続く真の8thアルバムをリリースする日が来るのではと一人勝手に妄想していたのに...。

彼を軽く紹介させていただくと、1987年にViper「Soldiers of Sunrise」でデビュー。メタル界のカウンターテナーと言われたファルセットを使う独特の唱法は、細めながら聴けば1発でわかる個性を有していました。

1987年よりViperでメジャーシーンにデビュー。1989年に隠れた(?)名盤「Theatre of Fate」をリリースし時の人となりますが、その時点でマトスは既にバンドを去っています...。

1993年にAngraより歴史的名盤「Angels Cry」をリリースし、日本でも人気が爆発します。風呂場でマトスの真似をして家族に迷惑を掛けたのも良い思い出です。


その後マネージメントのやり方でウンザリしたのか、脱退します。一説では「自分が居なくなったらAngraは終わりだ。いい気味だ。」位のネガティブな感情を抱いて出て行ったとされています。

ところが古巣Angraは新メンバーを見事に加えパワーアップを果たし、まさに再誕を遂げるのでした。マトスのAngra自然崩壊への道は脆くも崩れ去り、残るは実力で黙らせるしか無い状況下に置かれてしまいます。

出遅れた形でAngraの後を追うように新バンドShamanで「Ritual」をリリース。新生Angraの威光が凄まじく影に隠れる形になってしまったものの、こちらもとても優れた作品でした。

その後、すでに先にShaman名義のバンドが存在しただとか、売れるバンドの秘訣は7文字だとか、当時のインタビューで読んだ覚えがあります。Shaamanに変更。パッと見わかりませんが、aが一つ増えています。初見で感想を述べるなら、大概の人は「なんじゃこりゃ」だと思います。

Shaamanは2nd「Reason」をリリースするも挑戦した作風に馴染めなかったリスナーは去っていき、前回前々回と同様に自分から始めておいて脱退。理由は私の知る限りでは全く表には出ませんでしたが、思うにマトスはあまり一つのプロジェクトを長く続けられない人なのではないかと個人的には思います。

満を持して自分名義のバンドAndre Matosを2007年に結成するも、2012年にリリースが止まります。詳細は分かりませんが「またか...」とよくある事柄の一つに過ぎないと考えていました。今度は自分名義のバンドを脱退か⁉︎

いや、違います。2012年になんと彼はかつて所属していたViperに復帰していたのです。この件に関しては「そっちかよ!?」と声を大にして叫んだのは私だけでは無いと信じています。


また、2012年にAngraから前任ボーカルが「体力の限界」を理由に脱退した際に、マトスは復帰の打診を受けていました。が、マトス曰く「Viperのメンバーとは、バンドを辞めた後も友人だったんだよ。だから復帰した。でもAngraのメンバーとは友達じゃなかった。Angraはもうすべてを終わらせた方がいい。」的な発言をしていて、マトスの心はもうAngraには無いのだととても悲しくなったことを覚えています。

しかし、唐突にマトスは2018年からSha(a?)manのリユニオンツアーを始めてくれました。Angraは置いておき、第3の故郷となるSha(a?)manでこのまま順調に活動を行い、5thをリリースしてくれないかなぁ!と私の期待が高まり始めた矢先、今回の出来事が。


彼との出会いは意外な作品で、駄作のないAngraの作品群内でも物議を醸した「Fireworks」です。正直これではハマりませんでした。大抵の皆様と同様に、やはり「Angels Cry」で昇天した身です。他にもViperやVirgoと、考えたら彼の専任ボーカルの作品は全部持っていますね。Symfoniaとか2nd聴いてみたかった。リユニオンしたShamanの新作も聴いてみたかった。もう友達じゃない発言していたAngraの元ギタリストとも「20年ぶりに一緒にプレイしてみたい」的な話を先週していたそうです。蟠りは無くなりつつあった!Angraに戻って8th作って欲しかったです、切実に。

...してほしかったという願望ばかり語ってしまいますね。超個性派シンガーであり、素晴らしい作曲家でした。


しかも死因は心臓発作ですよ!47歳でつい5日前にステージに上がっていた人が!何故なんでしょう。デスノートに名前でも書かれた?

ネットによると「彼の意志に従い、今日(9日)親族のみ参列する中、火葬される」と記載されていましたが、心臓発作の人間の意思に従いってどういうこと?突然苦しみ出して「お、俺の葬式は、親族のみ...で...か そ ぅ...グフ!」って亡くなったわけですか?それとも47歳の人間が遺書を書いていて「葬式は親族のみ、火葬希望」と載っていたのですか?謎が多い。

あるジャンルの一時代を築いた名ボーカリストの人生がこんな形で終わってしまうなんて、悲し過ぎます。私が勝手に作った野望なので本人からしたら知ったこっちゃないわけですが、それでもこんな終わり方は、何と言えばいいのかわかりません。

と嘆きつつも、つい先日NHKドキュメンタリー番組で、安楽死を選んだ女性が「人の死にいいタイミングなんてない」と語っていましたが、その通りだと思います。10年後亡くなろうが、明日亡くなろうが、いつだって今じゃない。

これからまだまだやりたいことがあったろうに、嗚呼...悲しい。これから暫くはマトスのディスコグラフィーを聴きまくるつもりです。そんなこと言っておきながら、この記事を作りながら流していたのはDevin Townsend「Ziltoid the Omniscient」でした。ごめんなさい。

ありがとうございますマトスさん。
大変お疲れ様でした。



R.I.P Andre Matos

※マトスの発言に関しては、細かな語句間違いがあると思います。うる覚えです。悪しからず。



--オマケ--

過去に彼が在籍したVIPER、ANGRA、SHAMANのアルバムを時系列順に紹介します。彼が脱退後の作品も載せています。尚、彼のソロ「TIME TO BE FREE」、「MENTALIZE」「THE TURN OF THE LIGHTS」作品に関しては好きではないため割愛。「VIRGO」はよく覚えていないので割愛。

 

●Soldiers of Sunrise (1987) 参加

バンド:VIPER
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メンバー
André Matos - Vocal
Yves Passarell - Guitars
Felipe Machado - Guitars
Pit Passarell - Bass
Cassio Audi - Drum

1stにしてAndré Matosが音楽シーンで初めて世に放った正式音源。Andréのeの上になんか付いています。1971年生まれなので、単純計算16歳ですか!若さ爆発ですね。先輩方のバンドに誘われた後輩的立場だったのでしょうか。ならSkid Rowみたい。その後に関しても...(苦笑)

高低差激しいボーカルがいきなり飛び出します。おとなしいサビメロが逆に目立つ①、ドラムソロからスタート。リフがカッコいい。サビはヲーヲーヲー②、謎の声からまたまたメロディアスなリフのミドル。走るけど。ノーウィッパーがやたら覚えられる。ツインギター絡めたらソロがなんか超いい。またミドルに戻ります。なかなか良い③、これもオープニングのリフはいい。ヴァースの方が高音で歌うのはこの時期の特徴ですかねサビメロは盛り上がりに欠けるものの、悪くない④、ホームラン?一段と鋭いビート。前半にソロがある不思議な構成。あと終わりが長い⑤、タイトルトラック。7分弱と長い。しかも間奏が⑥、左右で交互に弾かれるリフがなんかチグハグ。歌も間奏ももう一つ⑦、「André Matos無しでも出来るんだ!」と楽器隊の矜持が見え隠れするインスト。悪く無いです⑧、ラストは割とゆったり目。間奏でテンポダウンして泣きのギターが入るのはHow many tearsの影響かは分かりません⑨と、全体的にスラッシーです。Helloweenの「Wall of Jericho」みたい。しかし時期的には1年しかズレていない事実。ドイツだけでなくブラジルでも同時多発的にこういう音楽が生まれていたと考えるべきなのでしょう。

まあ正直荒いしIron Maidenの影響バリバリですが、才能の原石感は迸っております。次作でいきなりシンフォニックに進む布石は全然ありませんが、それもこれもAndré Matosのインプットなのでしょう。彼脱退後の3rd以降を聴けば如実に顕在化しています。

つまり本作の楽曲はAndré Matos加入前に作られたものばかりという考え方が出来ますね。多分。

【My Top 3 Tune】
・Knights of Destruction
・Nightmares
・The Whipper

46/100点
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●Theater of Fate (1989) 参加

バンド:VIPER
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メンバー
André Matos - Vocal
Yves Passarell - Guitars
Felipe Machado - Guitars
Pit Passarell - Bass
Sérgio Facci - Drum

路線変更しまくった2nd。前作より2年のスパンでリリース。メンバーはドラマー以外変化がありません。彼も多分昔からの友人同士で仲良しなのだと思われます。ジモティ的な。

メタル界ではまさに類似型バンドのHelloweenが"Keeper旋風"を巻き起こしていた頃、ブラジルでもまさに「覚醒」の2文字が相応しい新生VIPERが誕生していました。

ギター、パーカッション、シンセの寂しげなオープニング①、「ポォォン!」と文字化の難しいAndré Matosボイスがいきなり炸裂。流麗なボーカルメロディだけでなくギターメロもいい。間奏のクラシカルパートも良い!笑えるのは間奏初めにドラムが暴走し、少しずつスピードが下がっていくのが笑える②、まずリフからして何かやってくれそうな気がします。即効性は一番かも。リフとAndré Matosが声を被せるラストとか最高な③、インストだった#1に似た世界感のギターからまた印象的なリフのミドルチューン…と見せかけて走り出します。これもリフが全般的に素晴らしい。時折荒く歌うAndré Matosも十二分にAngra時代に負けない存在感④、バラード調に始まるAndré Matosの悲しい歌声…から結局走る。冒頭のバラード調ボーカルをそのままメタルでも持ってくるのはいいアイデアかと⑤、シネマティックなリフ、構成どれをとってもThe Classical Metal。流れに全く無駄が無く最高過ぎる⑥、あまり注目されていない感のあるタイトルトラック。「ウィーアールッキンフォーザミーニンオブアワーライブス♫」なんてちょっとウルって来そう。低いところから始まるのが良いですよね。ラスサビの2回目で高くする構成は見事という他ない⑦、クラシック「月光」を引用したバラード。唯一のAndré Matos単独作詞。恐らく楽曲もほとんどそうなんでしょう。後にアレンジされますが、こっちの方が良いと私は思います⑧と、まさにAndré Matosワールド。作曲・編曲に多大なる貢献をしていたことは1st〜3rdを聴けばよくわかります。ボーカルスタイルも全盛期時点(ANGRA時)とほぼ相違ありません。

作品のクオリティはもう大化けとしか言いようのないレベルです。片鱗はありました。ただクラシカル路線に行った事はAndré Matos以外ファンも本人達も想定外だったでしょうね。唯一の共通点速い楽曲ばかりという点だけ。

そして本格的な音楽理論を学ぶためにAndré Matosは大学へ進学。この3年後にまたメタル界を震撼させることになります。

André MatosはViperを踏み台にしてメタルシーンの第一線に趣き、当のViperはひっそり静かに消えていきました...。


【My Top 3 Tune】
・At Least a Chance
・Prelude to Oblivion
・Theater of Fate

77/100点
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●Evolution (1992) 不参加

バンド:Viper
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メンバー
Pit Passarell - Vocal, Bass
Yves Passarell - Guitars
Felipe Machado - Guitars
Renato Graccia - Drum

日本盤が出たのでそれなりに期待されていたと思われる3rd。クラシカルなヘヴィメタルというあまりにセンセーショナルな作品を名盤をリリースしてしまったViper。その核となるAndré Matosは前作リリース後脱退。

一体どうなるのォォォ!?と逆に興味が沸いてしまうファンも多かったでしょう。

ボーカルには専任シンガーではなくベースのPit Passarellが兼任。この選択をする辺り、恐らく元々Pit Passarellが歌っていたバンドにシンガーとしてAndré Matosが加入したと考えるのが自然だと思います。

サビ裏の「ナーナナナナ」が結構好き。ツインギターのソロもかなり良く出来ています①、スラッシー。無骨で攻撃的な②、合いの手のコーラス含めて南国っぽさがあり、オーディエンスと歌えそうな③、ラルクの「花葬」っぽく始まるミドルチューン。演奏といい構成といい、なかなかの完成度だと思う。この曲、ボーカルがもっとクセがなく上手ければ更に高い完成度になった気がします。惜しい④、ファンキーなリフから結局走ります。ソロがかなりしっかりしてる⑤、ミドルかと思わせておいて、少し走り出します。これまたギターメロがなかなか⑥、しっぽりと浸るような歌声でバラード調に歌い出し、中間部で結局ヘヴィになってしまうという。ただソロはいい感じ⑦、跳ねるようなリズムにやはり疾走。中間部から展開が変わり、ソロは技アリ⑧、若干ロックンロール風味。ややパーティなアリ。どちらかといえばタイトルの踊りを目指したのか?⑨、静かなバラード風の⑩、誰もが知っているQueenの名曲をアレンジ。当時本家ではロックンロールバージョンはライブでした披露されていないので、代替え用に聴いていた方もいたかもしれません(多分いない)。現代では本家の未発表音源でロックンロールバージョン出ちゃいました⑪と、2ndのシンフォニックメタルからスラッシュ&メロディな音楽性を戻したのがよく分かります。彼らの持っているバックボーンが明確になりますよね。ギタリストのセンスは本物。

次の年にAngraの「Angels Cry」が出ちゃったものだから、悪くない出来ですが影に隠れたままで終わってしまった感があります。

また何故かSascha Paeth、Thomas Rettkeがバックボーカル、Helge Engelkeがストリングスアレンジで関わっています。プロデューサーではないんですね。

この作品で来日公演出来たのはAndré Matos在籍時の勢いがまだ残っていたからだと思います。そして来日の壁が低かった。良い時代でしたね。

【My Top 3 Tune】
・Coming from the inside
・Rebel Maniac
・Dead Light

56/100点
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●Angels Cry (1993) 参加

バンド:ANGRA
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メンバー
Andre Matos - Vocal,Keybords
Kiko Loureiro - Almost Guitars
Rafael Bittencourt - Some Guitar Solo
Luís Mariutti - Bass
Marcos Antunes - Drum

メロスピ界衝撃の1st!

当時これが世に放たれメタル界がざわついたことを想像するに難しくない素晴らしい内容です。もちろんHelloweenのパクリと言う方がいたのも事実ですが、バンドとしての個性が確立されているため現在ではそのような意見は聞こえてきません。

Andre Matosのカウンターテナーボーカル、Kiko Loureiroの悶絶ギタープレイが惜しげもなく収められています。Rafael Bittencourtはまだ技術不足のため、本作では一部のギターソロ以外は全てKiko Loureiroが弾いているそうです。

またドラマーにMarcos Antunesがクレジットされていますが、実際は超絶ドラマーAlex Holzwarthが7曲目以外叩いております。最近になってWikipediaで知った話ですが、プロデューサーのCharlie BauerfeindがMarcos Antunesの技量に不安を覚え「彼を解雇してAlex Holzwarthに叩いてもらうかまたは打ち込みドラムを使うか、あるいは俺がプロデューサーを降りるか」とバンド側に問い詰めたようです。Marcos Antunes…どれだけ心許無いレベルだったんでしょうね。後任のRicardo ConfessoriがOKでMarcos AntunesはNG…。Ricardo Confessoriもそこまでスキルフルではないんですけど…。

ANGRAの幕開けはシューベルトのカバー①、Andre Matosとは如何なるシンガーか…を200%表現された②、ちょっと民族性があり上方に広がる展開が良い③、若干プログレッシブで「パガニーニ」を導入したタイトルチューン④、まさにANGRAなミドルチューン⑤、これまたプログレッシブな民族色の強い⑥、Kate Bushのカバーで中々の出来⑦、心地よく走るサビの合いの手で飛び出すシンセが美味しい⑧、ギターソロの「冬」が余計だと思うほど直前の泣きソロが爆発する全く無駄な展開がない壮麗なナンバー⑨、1部は素晴らしいバラードで2部は物語を締めくくるに相応しいインスト⑩と、クラシックと民族色を混ぜた超独特の音楽性は決してHelloweenコピーに留まった内容ではりません

完成度は4th、5thに譲るかもしれませんが、やはり一つのアルバムでANGRAを説明しろと言われたら結局このアルバムに勝るものは現時点では存在しません。今後も絶対に出てこないでしょう。

【My Top 3 Tune】
・Carry on
・Never Understand
・Lasting Child

82/100点
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●Holy Land (1996) 参加

バンド:ANGRA
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メンバー
Andre Matos - Vocal,Keybords
Kiko Loureiro - Guitars
Rafael Bittencourt - Guitars
Luís Mariutti - Bass
Ricardo Confessori - Drum

バンドとしての個性を推し進めた2nd!

Andre Matosは1stより高音を出さず楽曲のスピードも抑え、メタルよりも民族性をより強く押し出した音楽性になりました。これがまた彼らに根差す音楽性が表現された絶妙な落しどころでして。アルバムのアートワークも中世の世界地図を表し、その地図を航海していくコンセプチュアルな内容となっております。

ソプラノ・アルト・テナー(Andre Matos本人)・バスの4名が歌う美しいオープニング①、冒頭にブラジルのパーカッションが入るものの概ね彼ららしいメロスピ②、ガツンと来るような内容ではありませんがジワジワと良くなる③、イントロのパーカッションや独特の歌メロからメロスピへと繋がる見事な大作④、若干弱めながら変化球として機能している⑤、本作を象徴するようなタイトルトラック⑥、あまり飾り気のないシンプルなミドルチューン⑦、メロスピでもやはり本作さながらな雰囲気を持った⑧、教会の聖歌のような⑨、上手く締めたと感心する弾き語り⑩と、中盤がやはりこの作品を象徴する楽曲が揃っていて、前半と後半はなるべくこれまでのファンにも支持してもらえるような作りとなっています。

若干低音周りの音が弱いのが本作の弱点か。疾走していないと低評価をしてしまうリスナーにもあまりウケがよくなかったのも事実です。

【My Top 3 Tune】
・Carolina IV
・Holy Land
・Deep Blue

76 /100点
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●Fireworks (1998) 参加

バンド:ANGRA
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メンバー
Andre Matos - Vocal,Keybords
Kiko Loureiro - Guitars
Rafael Bittencourt - Guitars
Luís Mariutti - Bass
Ricardo Confessori - Drum

原点回帰と言われた実験作3rd!

2ndでラテン音楽寄りに作品を仕上げたためか、意図的に音楽性を戻そうとする試みがなされたようです。1stのファンは原点回帰の甘い言葉に誘われ飛びついたことでしょう。初の「フルオーケストラ導入」という謳い文句がそれを後押ししました。そしてその多くが絶望したとね。Carry on第2弾を待っていたファンは即ブックオフへ直行したと思います。

またこの頃バンド内部でも不協和音が走っていたらしく、Andre Matosも一度辞めたものの説得されレコーディングに参加したそうです。Rafael Bittencourtは「ツアー後に何らかの分裂が起きるであろう」と予想していました。

素晴らしい飛翔系イントロですがちょっと歌いずらそうな歌メロの①、ジャズっぽい始まりが新しい②、如何にもこのバンドらしい代表曲③、なんかキレが無い不思議な疾走曲④、タイトルとは裏腹に暗い⑤、やや明るめな⑥、一番の変わり種ですが良曲⑦、良いんだけどバンドに合っていない気がする⑧、ブラジリアンなバラード調のリーダートラック⑨、剛健なリフが無理している感じ⑩とこれっぽっちも原点回帰的な内容ではありません。どちらかというと柔より剛に比重を置いた作風で、あまりバンドの持っていた性質とは結び付かなかったのかもしれません。内容的には決して悪いものとは思いませんが、私もそこまで狂ったように熱中出来ませんでした。ボートラの⑪は本当に雨に打たれているかのような曲調がグッド。

音質もあまりバンドに合っていない…。

【My Top 3 Tune】
・Lisbon
・Extreme Dream
・Gentle Change

64 /100点
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●Rebirth (2001) 未参加

バンド:ANGRA
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メンバー
Edu Falaschi - Vocal
Kiko Loureiro - Guitars
Rafael Bittencourt - Guitars
Felipe Andreoli - Bass
Aquiles Priester - Drum

真の原点回帰と言える4th!

前作「Fireworks」に伴う一連の行事が終了し、Angraはギター2人を残して分裂してしまいました。Rafael Bittencourtは「まさか3人も抜けるなんて」と発言。Luís MariuttiとRicardo ConfessoriはAndre Matosが抜けることに危機感を覚え、自分の未来を彼に賭けて共に脱退します。

Andre Matosの歌はファルセットとはいえ結構な高音域を使うため、後任探しは難航されると思われていました。「こんな歌、俺以外に誰も歌えねぇだろ!俺が出て行った後どうなるか困りやがれ!」というMatosの顔が思い浮かびます。「ANGRAは終わった」などの声がチラホラ聞こえてきたのも事実です。Kiko LoureiroとRafael Bittencourtは前作レコーディング前にAndre Matosが一度抜けた時、目を付けていたEdu Falaschiと迎えてレコーディングを開始します。一応違うバンドとして再出発することも考えていたそうですが、出来上がった音源を聴き「これはANGRAだ」と確信できたためANGRA名義でリリース。

バンドはボーカルが変わると大きくイメージが変化し、中には受け入れられずファンを止めたり悪口を吐き捨てるような人達も現れます。

Edu FalaschiはANGRAと奇跡的なまでにマッチし、ほぼ全面的にファンに受け入れられたのです!ボーカル交代劇としては珍しい例の一つです。新メンバーのFelipe Andreoliは若くして前任者と同レベル、Aquiles Priesterに関しては普通に叩くのでいっぱいいっぱい(特に疾走系)だった前任者を遥かに超える技術と表現力備えており、バンドとして確実にレベルが上がりました。

新時代の幕開けインスト①、Carry on級の名曲②、Edu Falaschiの歌が冒頭で堪能できる③、クワイアを大胆に使いサビで劇的に走る④、文句なしに泣けるバラード⑤、ブラジル的間奏を交えた悶絶疾走曲⑥、鳥肌フレーズ満載のスローチューン(疾走パートは要らないような…)⑦、本作で唯一パッとしない⑧、最後のもう一山と言わんばかりの感動的なメロスピでEdu Falaschiのエンディング間近のロングトーンが最高すぎる⑨、ショッパンの楽曲をモチーフにしたクロージング⑩と、まさにアルバムタイトル通りの復活を果たしました。敢えて苦言を呈するなら1stを意識しすぎた構成でしょうかね。ボートラの⑪は確かに浮く可能性はありますが本編と何ら遜色のない素晴らしいバラード。

Edu Falaschiはライブでも過去の楽曲を見事に歌いこなし、Andre Matosはさぞ悔しかったことでしょう。

【My Top 3 Tune】
・Nova Era
・Hero of Sand
・Unholy War

83 /100点
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●Virgo (2001) 参加

ユニット:Virgo
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メンバー
Andre Matos – Vocals, Piano
Sascha Paeth – Guitars, Bass
Robert Hunecke Rizzo – Drums
Michael "Miro" Rodenberger – Keyboards

Sasha Peathとのコンビプロジェクト。アダルトなAORやR&Bを狙ったメタルから悲鳴が上がる内容となっています。ドラマーは元Heaven's gateのベーシストRobert Hunecke-Rizzoですが、メタルドラマーにこんなの叩かせてもなぁ~。よく覚えていませんが、①が結構好きでした。⑩はSasha Peathの歌声が聴ける貴重なトラック。

【My Top 3 Tune】
・To Be

44 /100点
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●Ritual (2002) 参加

バンド:SHAMAN
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メンバー
Andre Matos - Vocal,Keybords
Hugo Mariutti - Guitars
Luís Mariutti - Bass
Ricardo Confessori - Drum

打倒ANGRA?の1st!

ANGRA脱退後、本業であるメタルを一旦お休みして2001年に「VIRGO」というプロジェクトを作っていました。メタルとは無関係の音楽性ですが、彼のファンは基本的にメタルファンなので商業的にあまり上手くいかなかったようです。

満を持してAndre Matosメタル界に復活…と騒がれるより先に本家ANGRAが「Rebirth」であまりにも見事すぎるカムバックをかましてしまい、想像以上に盛り上がってしまったANGRAの陰に少し隠れる形でシーンに戻りました。本作より「VIRGO」プロジェクトを優先して行ったのは、恐らく自身の脱退によりANGRAはもう何をやってもダメでメインシーンに戻ってくることはないだろうという驕りがあったのだと思いますね。

Andre MatosのみではなくRicardo ConfessoriとLuis Mariutti、その弟Hugo Mariuttiの4人で新たに結成されたSHAMANですが、恐らくANGRAの未来に不安を覚えてAndre Matosに付いていったRicardo Confessoriは「ヤバイ!失敗した!付いていく方間違った!」なんて当時は思っていたのかもしれません。

大河ドラマのような見事な①、シーンから忘れ去られることを恐れ曲名を付けたであろう一部の隙も無い健在を示すリーダートラック②、このバンドの本質を表すアップテンポチューン③、笛やラテン系エッセンスを導入したこのバンドの方向性を明示している④、悲壮感溢れるピアノイントロの雰囲気を最後まで維持しているアップテンポ気味のミドルチューン⑤、激情の歌メロを備えたプログレッシブな⑥、文句なしに代表曲となりえるバラード⑦、明るく軽快で盛り上がりそうな⑧、怪しいイントロで掴み処が無い変わった⑨、Tobias Sammetと共演したパーティメタル⑩と、ANGRAの2ndを推し進めたようなラテンフィーリングを強めに取り入れた個性的な作品となっています。十分な完成度ですが、⑩で余韻をぶち壊すやり方は賛否両論。そのどちらの意見も私には理解できます。

まずAndre Matosの声。荒れ声です。あの流麗なボーカルは消え去り、全編に渡り荒れています。ワザだとだそうですが、別にここまで無理に違いを出さなくても良かったと思います。

とはいえ、この当時は「やった!好きなバンドが2つに増えた!」と楽観的に考えていたんですよね…。

【My Top 3 Tune】
・Here I Am
・For Tomorrow
・Over Your Head

75 /100点
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●Temple of Shadows (2004) 未参加

バンド:ANGRA
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メンバー
Edu Falaschi - Vocal
Kiko Loureiro - Guitars,Piano
Rafael Bittencourt - Guitars
Felipe Andreoli - Bass
Aquiles Priester - Drum

ANGRA史上最高傑作の5th!

Andre MatosもSHAMANでメタルシーンに復活し、益々群雄割拠を迎えたパワーメタルシーン。本作を発表したANGRAは2004年その頂点に到達したと私は感じました。同じ感覚になった方も少なくないと思います。私にとってANGRAが特別なのも、恐らくこの頃の熱量が忘れられないからなのだと思います。

Rafael Bittencourtがコンセプトと全歌詞を担当し、11世紀後半の十字軍戦士「シャドウ・ハンター」の一大絵巻を描きます。

イントロ①、明快なリードギターからEdu Falaschiとクワイアの掛け合いでテンション上がりまくる②、前曲に続いてアグレッシブに攻める③、Dream theater的なプログレッシブ要素のあるミドルチューン④、イントロから本編まで南国系のバラード⑤、Kai Hansenがゲスト参加して楽曲のクオリティを下げてしまっている⑥、アダルトでダークなイントロから流れるように展開するプログレッシブミドルチューン⑦、Sabine Edelsbacherの優雅な歌声が暗色な楽曲に光を齎す⑧、Hansi Kürschが参加するアグレッシブな⑨、作品のコンセプトを象徴するような曲調が美味しい⑩、タイトル通りの夜明けを感じさせる⑪、ゲストのMilton Nascimentoの暗めで深い歌声がマッチするまさに終曲といえる⑫、物語のエンドロールを可聴化した⑬と、大抵のパワーメタルバンドはラストかラスト前にもう一度テンションを上げようと強烈なのを持ってくるケースが多いですが、本作に関しては後半かなり大人しめにアルバムが終わっていきます。これが既成概念を覆し真新しさ感じまくりです!この曲順を決断したバンドに惜しみない称賛を捧げたくなりますね!いや、捧げます!まあこの当時大人気だったDragon Forceみたいなバンドが好きな人からしたら暴れたりない内容かもしれませんが、シーン10年目のANGRAが放つ技アリ!の作風には見事と言う他ありませんでした。

次作ではもっと凄いものを作れそうな余裕というかポテンシャルを感じたので、6thが楽しみで仕方なかったのですよ…この頃は…。

ANGRAは本作をピークに下降線を辿っていくのでした…悲しい。

【My Top 3 Tune】
・Spread Your Fire
・Wishing Well
・The Shadow Hunter

88 /100点
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●Reason (2005) 参加

バンド:SHAAMAN
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メンバー
Andre Matos - Vocal,Keybords
Hugo Mariutti - Guitars
Luís Mariutti - Bass
Ricardo Confessori - Drum

上ではなく前を見た2nd!

かつて袂を分かったANGRAは最早手も届かない程の高みへと昇ってしまい、Andre Matosは更に複雑な気持ちに陥ったと推測されます。「俺が脱退した後に大きな成功を納めやがって…」的なポジティブではない感情が少なからず存在したでしょう。

そこでAndre Matosはあろうことか、バンド名のSHAMANのAを1つ増やしてSHAAMANを名乗る決意を固めます。

これに関しては私が知っているだけで2つの説があり、1つ目はFinlandに先にSHAMANを名乗っていたバンドが存在したため変えた説、2つ目は成功しているバンドは7文字が多いので変えた説。前者は確かライナーノーツに載っていて、後者は後にリーダーに就任するRicardo Confessoriが2010年にBurrn!誌で語っていました。

当時この変更にファンは戸惑いを覚え、かなりも作品を作ったにも関わらずバンド内部がなんとなく上手くいっていない雰囲気を察し始めます。

作品内容に関しては大きく路線変更をしていて、スラッシーなリフでアグレッシブに攻める①、唐突にゴシックになるも耽美的な②、カバーながら作品の世界観に溶け込む③、従来の路線に近いバラード④、盛り上がりに欠けるもののサビメロは流石な⑤ノイジーなギターとシンセが合わさったこの作品ならではの雰囲気を持つ⑥、アートワークを表現したかのような神秘性を感じる⑦、シンセが楽曲を劇的に彩るアップテンポチューン⑧、歌うようなリフと作品に合ったBPMで走る⑨、純粋なバラードをヘヴィにしたクロージングバラード⑩と、パワーメタルファンが期待しているような音を敢えて外し違うエッセンスを混ぜて到達したような作品です。ゴシック的な楽曲が多くて残念と感じたファンも多かったわけですが、個人的にはスルメ作品なので末永く聴いてみてほしいです。アルバム単位の世界観はかなりの完成度。

この作品により大きく売り上げを落としたSHAAMAN。挑戦するのは素晴らしいことですが、売れることを目指すのならある程度ファンに寄る必要があります。当時のAndre Matosの心境が気になるところです。

【My Top 3 Tune】
・Turn Away
・Innocence
・Iron Soul

65 /100点
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●Aurora Consurgens (2006) 未参加

バンド:ANGRA
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メンバー
Edu Falaschi - Vocal
Kiko Loureiro - Guitars
Rafael Bittencourt - Guitars
Felipe Andreoli - Bass
Aquiles Priester - Drum

プログレッシブな方向へ舵を切った6th!

なんとEdu Falaschiが5thのツアー段階で既に咽喉を痛め始めていたとインタビューで語っていました。また自身の逆流性食道炎が咽喉へ大きな悪影響を及ぼしているとも語っており、それ故に歌のキーが下げられ音域も低めになっています。元々テノールではなくバリトンだそうです。

また音楽性も若干プログレッシブな方向へ向けられており、これはライブで盛り上がるのか大きな疑問が浮かびました。倣う形でギターソロも前作までの構築されたものではなく、感覚に訴えるようなプログレッシブなものが使われています。バンドの新たな方向性の落とし所としては悪いものでないかもしれませんが、発売当時は新たに手にしたものと失ったものの釣り合いが取れていなさ過ぎてマイナス面しか耳に着きませんでしたね…。

トライバルなリズムと感情的表現を避けたかのような感覚的ギターが本作の敷居を上げている①、イントロのギターでテンションが上がるがこの手の楽曲にしては史上初ではと思う程サビメロを敢えて目立たせない②、まさにプログレッシブなリフとよく聴けば良質な歌メロの③、一聴すると5thのWishing wellの劣化版バラードと思うかもしれませんがラテン成分が多く明るめな④、キーが下がっているためテンションは他作品に譲るものの歌メロはメロディアスで良く出来ている⑤、如何にもプログレッシブな展開から突然メロスピする良曲⑥、5thのファンタジー観がEdu Falaschiのスタイルとマッチした⑦、ベースのFelipe Andreoliが初めて作曲した空間的プログレッシブチューン⑧、ラスト手前なのに終盤締めを放棄しプログレッシブに攻めた⑨、Edu Falaschiの魅力たっぷりな低音をフューチャーしたアコースティックバラード⑩と、パワーメタル本来の特色を少々抑えた結果、全体的なテンションは低いものの、クオリティは決して低くない技アリ作品と言えるでしょう。何度も聴けば別の魅力が見つかるスルメ系。パワーメタルじゃないと受け入れられない方には無理。

ああ、ボーナストラック⑪でRafael Bittencourtが歌っていますが、彼がわざわざ歌う必要性は無いように感じました。自身のソロだけに留めてほしいですね…留まらないんですけどね…嗚呼。

音質はBurrn!誌で取り上げられたように超高音質で、Dennis Wardの手腕ここに完成といったところです。それに反比例するようにEdu Falaschiの歌は荒めだったりとこれまでに無かった課題も出てきたり…。

これがANGRA凋落の始まりだと感じたファンは少なくなかったと思います。

【My Top 3 Tune】
・Ego Painted Grey
・Window to Nowhere
・Abandoned Fate

67 /100点
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●Time to Be Free (2007) 参加

バンド:ソロバンド
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メンバー
Andre Matos - Vocal,Keybords
Andre Hernandes – Guitars
Hugo Mariutti – Guitars
Luís Mariutti – Bass
Rafael Rosa – Drum
Fábio Ribeiro – Keyboards

もう失敗は許されなかったのか、自分のやりたいことではなくファンが望むことを具現化したような内容。とは言え、個人的にはあまり面白くはなかったです。きちんとした楽曲を作成できるメンツにサポートしてもらうべきでした。

Andre Matosの歌声はShaman時代の無理な荒れ声を止め普通に歌おうとしてはいるものの、一度無理に濁らせた声は元には戻らないのか所々掠れ気味。

53 /100点
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●Immortal (2007) 未参加

バンド:SHAMAN
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メンバー
Thiago Bianchi - Vocal
Léo Mancini - Guitars
Fernando Quesada - Bass
Ricardo Confessori - Drum

メンバーを一新しパワーメタルに戻った3rd!

前作の不評によりバンドに見切りをつけたのか「俺は感謝している。こんな素晴らしいバンドで6年も活動できたんた。」の言葉を残してAndre Matosは脱退。更にHugo MariuttiとLuís Mariuttiも脱退する非常事態に陥りました。メンバーが3/4も居なくなってしまったわけです。最早解散と同じようなもの。

ANGRA時代から苦楽を共にしたであろうRicardo Confessori。こんどばかりは袂を分かつことにしました。腹に据えかねることでもあったのかもしれませんし、バンドを作ってはすぐに辞めていくAndre Matosに愛想を尽かしたのかもしれません。Andre Matosは継続が苦手なのかも。Ricardo Confessoriは新たなるメンバーを3人集めバンドを再構築。ドラマーしか残っていなかったら大抵は解散の道を選ぶと思いますが、そうしなかったのはRicardo Confessoriがコンポーザーとして自身の才能を信じていたからでしょうね。

サポートキーボーディスト作曲でコーラスも荘厳に決まったまさに「不滅」なイントロ①、最後の倍速パートがカッコよすぎて復活の狼煙を十分に感じることができる②、剛のリフと静かなAメロから咽喉が壊れそうになる荒々しいサビで攻め、ソロの入りがファンキーで面白い③、ドラムソロみたいな始まり方SHAMANらしい民族色も組み込まれた④、SHAMANのコマーシャルな部分を集約したような曲調で、私はこの曲を先行配信で聴いてこのバンドは大丈夫だと確信した⑤、サビはありきたりだがThiago Bianchiの脱力した歌唱が素晴らしいバラード⑥、サビは敢えて抑え目でも他のパートが良い⑦、SHAMANらしく素晴らしいサビメロの⑧、見事なリードギターの3発目の疾走⑨、パラダイスみたいな明るいクロージングチューン⑩と、後半疾走3連発するアグレッシブな作風です。それでいてHolyland的なSHAMAN色も盛り込んでいる良いとこどり。ちまたではキラーチューンが無いと言われていますが、私は十分優れた楽曲は揃っていると思いますね。歌メロが派手でないものが多いからか。

何よりThiago Bianchiの表現力。Andre Matosと同じく細めですが、ウィスパー、中音~高音、ファルセット、更にはグロウル手前のが鳴り声まで使っています。Léo ManciniもHugo MariuttiどころかKiko Loureiro並みのスムーズなプレイは脱帽。

【My Top 3 Tune】
・Inside Chains
・In the Dark
・Freedom

70 /100点
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●Mentalize (2009) 参加

バンド:ソロバンド
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メンバー
Andre Matos – Vocals, Piano
Andre Hernandes – Guitars
Hugo Mariutti – Guitars
Luis Mariutti – Bass
Eloy Casagrande – Drums
Fabio Ribeiro - Keyboards

アートワークが非常に凝っていて、ギミックまで搭載しているお金の掛かった仕様です。タイトルの通りコンセプトは精神世界。テーマに沿ったディープで暗い音楽性を目指したようで、メタラー御用達的なアップテンポな楽曲は数曲しかありません。個人的には「売れるためにやろう」的な前作よりは好感触。

本編に無かった疾走感を補填してくれる⑬、Queenのカバーは皮肉にもFreddieの凄さを再認識させてくれた⑭と、まあまあな感じ。

【My Top 3 Tune】
・Leading On
・Power Stream

56 /100点
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●Aqua (2010) 未参加

バンド:ANGRA
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メンバー
Edu Falaschi - Vocal
Kiko Loureiro - Guitars
Rafael Bittencourt - Guitars
Felipe Andreoli - Bass
Ricardo Confessori - Drum

ややストレートに回帰したコンセプト作品7th!

SHA(A)MANを脱退し自国でソロとして大成功したAndre Matos。一方、前作でどことなく勢いを失った感をチラつかせたANGRA。Andre Matosは「ファンが期待しているものを出そう」と狙ったのに対し、ANGRAは新しい方向に挑戦しイマイチファンの心を掴めなかった感があり、両者の差はそこで生まれてしまったのかもしれません。私はAndre Matosの1stよりANGRAの6thの方が好きですけど。

作品については、まずEdu Falaschiの歌声。これが非常に聴き辛いレベルで劣化しています。咽喉を更に痛め、得意の中音域ですらままなりません。前作から4年のインターバルがあります。休養しているのかと思いきや自身のバンドAlmahで2ndをリリースしたりツアーしたりと、創作活動のみならずライブもやっていました。そりゃ咽喉も休まらんわ…。何気にRicardo Confessoriが復帰していますが、そんなのEduの状態に比べたら些細な事。いや、もちろんAquiles Priesterの脱退は痛かったですが…。

内容としては、本作はシェークスピアの戯曲テンペストを題材としたコンセプト作品。水には記憶があり、大気から降り注いだ雨は川を流れたり場合によっては飲料水になったりします。水の一連の流れを物語として表現しようとした…と私は記憶しています。

嵐とクワイアの雰囲気あるイントロ①、作りかけみたいなサビ以外は良く出来ている疾走②、全曲に続き連続で疾走する少々民謡フレバーのある③、ピアノリフで組み立てられサビが1回しかない変わり種な浮遊系ミドルチューン④、歌はボロボロですが楽曲は疾走佳曲⑤、ここ数作のANGRAっぽい神秘的な⑥、変拍子を交えサビは広がりを見せるアップテンポ⑦、ヴァイオリンから始まる悲し気なスローチューン⑧、土地柄感じ取れる南国風味⑨、陰鬱ながらメロディアスなバラード⑩と、楽曲の方向は前作より取っつき易いものが多いです。最後から3曲連続でミドル~スローなのはここ数作のANGRAでお決まりの流れですが、アップテンポな楽曲は4曲もありテンションも前作よりは高いし、全体的に柔らかな雰囲気に包まれているのも特徴。もしかしたら「些細なこと」と言い切ってしまったRicardo Confessoriのドラミング効果もあるかもしれません。Aquiles Priesterのようにビシバシ攻めて来ない感じが。従来のファンはすんなり吸収できるのもこちらかと思われます。

そして本作はバンド初のセルフプロデュース。前作まで超高音質なのに、本作では急にギターはモコモコ、ボーカル、ベース、ドラムも切れの無い音にどうしてこうなったのか謎でした。ブックレットの表記を見て納得です。音が良かったもっと評価も上がったと思われる点が悔しいです。

【My Top 3 Tune】
・Awake from Darkness
・Leash of Life
・Ashes

70 /100点
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●Origins (2010) 未参加

バンド:SHAMAN
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メンバー
Thiago Bianchi - Vocal
Léo Mancini - Guitars
Fernando Quesada - Bass
Ricardo Confessori - Drum

ANGRAにも復帰できたし順風満帆っぽい雰囲気を醸し出していたRicald Confessoriですが、ここにきてまさかのSHAMANの新譜をリリース。

元々はEPを出そうと考えていたそうです。音楽配信の波に押されまくりパッケージの売り上げが右肩下がりである現状を危惧し、フルアルバムとしてリリースを決意します。

アルバムコンセプトを象徴するインタルード①、かなり張り切ったスピードに限界を超えそうなTiagoの声が乗る②、ブラストビート的とライナーに書かれた始り方③、次曲の前奏④、このバンドのカラーが色濃く出たリーダートラック。サビ裏で流れるシンセが素晴らしい⑤、如何にも南国なAngra風味のトロピカルナンバー⑥、暗い。サビまでの盛り上げ方は素晴らしいんですが、サビがありきたりで少々残念⑦、元々EPのリーダートラックだったためなかなか強力なものの、どことなく2曲目と被る気がする⑧、Linkin Parkばりのシンセが出てくるミドル⑨、スケールのデカい壮大なバラード⑩と、EPから急遽フルアルバムに変更したためか、実質楽曲は8と少なめ。それでも粒は揃っています。

Ricald Confessoriは「俺のサイドプロジェクトだ」と堂々と語っていたのに、その数年後には彼にとってまたメインバンドに戻りました。何があったのか情報は明るみになっていませんが、SHAMANをサイドプロジェクト扱いしたRicald Confessoriに天罰が下ったのかもしれません。

私個人としては、収まるところに収まった感があって良かったです。

【My Top 3 Tune】
・Lethal Awakening
・Ego, Pt2
・No Mind

67 /100点
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●In Paradisum (2011)参加

バンド:Symfonia
in paradium

メンバー
Andre Matos – Vocals
Timo Tolkki – Guitars
Jari Kainulainen – Bass
Mikko Härkin – Keyboards
Uli Kusch – Drums

まさかフィンランドのTimo TolkiがブラジルのAndre Matosを呼び出し作られたバンド。ここにUli Kuschまで加入する豪華メンツ。Timo Tolki並の作曲力のあるAndreとUliが手を組むなんて、こんな面白いバンドあるんですか?

なんて思っていたら、全曲Timo Tolki…。

結局Stratovariusと同じく独裁体制でした。全員4曲ずつ出して12曲なんて収まりが良い感じでまとめて欲しかったんですけどね。内容的には定番の路線でした。別にそれは全然構わないんですが、どうにもパンチに欠ける仕上がりです。旬が過ぎてしまったメンバーだからか…。

でこのバンド、思いの外売り上げが良くなかったらしく、数回ライブをやって解散する運びになってしまいました…。Timoがまた嫌になっちゃったみたい。別のギタリストいれて続ければいいと思ったんですが。ちなみにUli Kuschはこのバンドを最後に表舞台から姿を消します。彼が何をやっているのか正確な情報はありません。引退したとの話もありますが、Masterplanに戻って欲しい。

【My Top 3 Tune】
・Fields of Avalon
・In Paradisum
・Don't Let Me Go

54 /100点
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●The Turn of the Lights (2012)参加

バンド:ソロバンド
the turn of lights

メンバー
Andre Matos – Vocals, Piano, Keyboards
Andre Hernandes – Guitars
Hugo Mariutti – Guitars
Bruno Ladislau – Bass
Rodrigo Silveira – Drums

ここに来て商業性を捨てて本来自分のやりたいことを始めたかのような遺作となる3rd。どうにも展開的に変化を盛り込み、来て欲しい進行を敢えてせず一捻り加えた楽曲が多いです。それがいい方に発揮されていればいいですが、魅力に乏しい感じで面白くないですね。

通常版にはANGRAの3rd収録Wings of Realityの再録、初回盤にはまさか日本語楽曲の氷雨を収録しています。とうとうヘビメタ界でも複数買いの時代の到来かと冷や汗を掻いたものです。

2012年にリリースされた本作以降、この名義でのリリースはありません。まさかANGRA同様に飽きてしまったんですか?マリリン・マンソンのマリリン・マンソン脱退的な?

さよなら、ありがとう。

R.I.P


以下過去記事
第九回:Chester Bennington 追悼
第八回:hide 15回忌
第七回:Ronnie James Dio 追悼
第六回:ももいろクローバーZ
第五回:Dead by April
第四回:河村隆一
第三回:X JAPAN
第二回:アニメタル USA
第一回:Dir en grey