DIR EN GREYが日本ビジュアル界唯一の希望なら、X JAPANは希望の始まりと言えます。

彼らは奇抜なメイクと派手なパフォーマンスにきちんと考えられた戦略により90年代前半にはスーパーバンドになりました。晩年は一年に新曲を一曲だけ出し年末に東京ドームでライブをするだけというやや消極的なYOSHIKIのソロプロジェクト化してしまいましたが、人気自体は解散まで大きな陰りは見えませんでした。

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私は彼らが解散したちょっと後にファンになる悲しい後追いファンに過ぎません。ギタリストのHIDEが亡くなって初めてX JAPANに興味を持ったのです。後追いファンですが、聴き始めてドップリ浸かるのに時間は掛りませんでした。

X JAPANは今で言うメロスピ(メロディアス・スピードメタル)を日本でメインストリームに流行らせたることに成功しました。メタラー観点から言うのならその功績は非常に大きく、90年代に日本が『世界中のメタル作品集結国』になったのも彼らのメロスピ布教の影響が少なからずあったと言えるでしょう。

ただビジュアル系の始祖と言われるものの、メロディの種類からして音種としては「ビジュアルロック」ではなくどちらかといったら「ヘヴィメタル」に分類されると思います。今のビジュアルロックの音楽形態は多分Luna sea以降のバンドが確立したのではと私は考えています。X JAPAN以前のビジュアル系に詳しくないので、「それは違うぜ!!」と思った方はごめんなさい。

ちなみに人によっては「X JAPANを他のビジュアル系と一緒にしないでほしい」と言う人もいるので今後X JAPANを語る際にはちょっと気をつけましょう。



で、軽くメンバーを紹介すると…

現メンバー
○Vocal:『洗脳で人生狂わされた上に自己破産せざるを得ない状況に追い込まれてしまった悲運のシンガー』TOSHI (ToshI)

○Guitar:『演奏力はイマイチながら凄いセンスの持ち主で今彼が生きていたら日本音楽界はどうなっていたのかとかどんな音楽を作っているのかとか想像するだけで本当に惜しい人を亡くしたなと思わせる』HIDE (hide)

○Guitar:『時間が止まったかのようにルックスの変化があまり見られない地味な存在』PATA

○Guitar:『Luna seaというこれまたX JAPANに匹敵する強大なバンドに所属しているためこの人の加入は何かどっちつかずになったらヤダと今でも思っている』SUGIZO

○Bass:『途中参加な上あまりに目立たないため可哀想だったが再結成後は目立ちまくれてよかった!』HEATH

○Drum:『技術力はそこまでではないが魅せる点に置いては一流のドラマー』YOSHIKI

元メンバー
○『結構凄い技量を持っていたらしいが人間的に少々問題があり今年自殺という非常に残念な形で亡くなられたのでご冥福を祈ります』TAIJI


全部で関係者は7人です。

少し申し訳ない言い方をするとメンバーだった人達は誰も彼もあまり幸せな人生を送っていないというか、ぶっちゃけ不幸になったイメージがあります。昔はスーパースターで金持ちに見えたんですが…。


ディスコグラフィ的には、彼らはその長い活動期間のワリに作品数は非常に少ない。オリジナルアルバムがインディーズ作品を含み4作品…。それもこれもドラマーのYOSHIKIが原因で、細部に渡るボーカルアレンジに拘り過ぎて多くの曲を世に残すことに失敗ました(これはYOSHIKI自体が数より質を求める傾向が強いからでもある)。

現在は2009年頃から5作品目をずっとレコーディング中。さらに言えば2011年の夏に「最後の曲を仕上げている」というアナウンスがあったのに今日までまだレコーディングしているわけです。信じられないです。どんだけ歌えないのTOSHI…と捉えるのはニワカ的で、YOSHIKIの要求が高すぎると想定されます。


正直どっちでもいいです。どんな理由であろうと、消費者には関係ない話です。当時TOSHIのボーカルは非常にキーが高く一般人どころかプロの歌手でも歌うことができる人はそうそう居ないレベルだったわけですが、今では普通にいるし高音対決だったらDIR EN GREYの京には敵わないし、そういった意味でもうそんな「X JAPANのボーカルはスゲーんだぜ!?」的な見栄張らなくてもいいじゃないかいYOSHIKIさん?


さらに残念なのが「新作は新曲と昔の曲の英語バージョンを楽しめる」という情報があったわけです。半々くらいの割合で昔の曲の英語版が収録されているわけです。残念すぎます。別に昔の曲の英語版なんていらんし。時間掛けまくってんだから全曲新曲にしろや。

さらにその新曲もすでに配信で世に出まくり。4thアルバム状態です。4thアルバムは新曲が4曲で後の6曲がシングル発表済みの音源でした。そりゃ当時リアルタイムのファンからしたらね…、発表された曲目見た瞬間にワクワクも何も無くなってしまうんじゃないでしょうかね普通は。

今回の作品は一応未発表曲が1曲だけあるらしいです。僅か1曲だけ。もはやオリジナルアルバムじゃないですね。5thアルバムじゃなくベストアルバムみたいなもんか。どうなることやら。


それでも楽しみに待っている自分がいます。もう配信により発表済みのシングル「Jade」「Born to be free」「The scarlet love song」も今では便利なyoutubeで聴けたりできちゃうわけですが、敢えて我慢してます。

今日現在までスタジオバージョンを聴いていません。早く出ないかなー。すっかりYOSHIKIの術中です(汗)まあ少しくらい売り上げに貢献しないとね。

YOSHIKIは金持ちの雰囲気を出していますが、本当にそうなのか怪しいですもん。曲の絶対数が少ないのに「全てを失った元スター」小室哲也と同等的な感じで通しているし、メディアの扱いも超大物レベルです。

もしかしてら借金あるかもしれません…。失神破産ドラマーにならないことを祈ります。



なんでもいいから早く新譜だせぃ。再結成後折角一時期勢いがあったのに…。


…全曲新曲ならあと2年は待つよ…。



以下オマケ
 

01.Vanishing Vision (1998)


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再現ドラマ曰くレコーディング費用をYOSHIKIの母に借りて作成された本作。メンバーはこの時点でYOSHIKIに頭が上がらなくなっている感じなんですかね。

現在もYOSHIKIが全権を所持し、他のメンバーはYOSHIKIの会社と契約する体制です。普通に考えて恐い話ですよね。一緒にデビューしたのにメンバーが同じヒエラルキーに居ないなんて。

TAIJI作の緊張感あるインスト①、高速疾走チューン。この後生み出される高速な楽曲に比べるとアングラな感じだが、それが唯一無二の魅力ともなっている②、ギターリフはTAIJI作?TOSHI製の歌メロは様になっています③、この頃のバンドのギラついた雰囲気を表現したかのような名曲。ソロもいい④、語りと演奏のみなので完全歌モノにしてほしかった⑤、徹頭徹尾突っ走る狂気。終盤まで無駄が無い⑥、組曲的なバラード。文句なしに素晴らしい⑦、代表曲の英語バージョン。こっちの方がよりメタルっぽい⑧、未完成のためか途中で終わってしまう⑨と、インディーズとは思えない完成度で現在でも通用する作品です。

楽曲が9曲、歌モノが7曲、⑨をアウトロ扱いすると6曲と少なめ。出来たらBreak of DarknessやNo Connectionもリレコーディングして収録して欲しかったです。

後に知ったインタビューによれば、TAIJI曰く「スラッシュを望む人には少し物足りないと思う」的な発言をしていました。当初の予定では恐らくもっとスピーディな作品にするつもりが、色々あってバランス重視の形に落ち着いたのだと思われます。

71/100点
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02.BLUE BLOOD (1989)


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メジャー初、通算2作目。今思うと前作から1年という感覚でリリースされたことが信じられませんね。各メンバー比較的自由にやることがこの時はまだできたのかも。

Frank Marinoのカバー。本当は別の曲を作ろうとしていたそうですが、これしか頭に浮かばないかったからやっちゃったと。最高の始り方①、いきなり疾走感が爆発。メロスピではなくスラッシュのようなリズムなのにサビメロではビートを下げて情感たっぷりに歌われる②、自殺の歌。構成は見事という他ない。ギターソロに関しては「こんなに構築されたソロ他にない」レベル③、全員ジャムで作ったらしいシャッフルを使ったノリの良い楽曲。作品の流れ的にも凄くいい④、バンドタイトル楽曲。スタジオ版もいいですが、ライブでこそ真価を発揮する⑤、イントロのピアノとベースが美味しい。TOSHIの後期の綺麗な歌もいいですが、この荒れた感じも悪くないです⑥、代表曲。聴き慣れてからは最初のオーケストラは飛ばしてしまうことが多い⑦、不思議なインスト。明確なメロディがあまり感じられない。個人的には歌モノにしてほしかった⑧、3分無い爆走チューン。凄まじいテンションで駆け抜ける⑨、明るいロックンロール。もうこんな雰囲気の曲はやらないでしょうね⑩、フーガを大胆に取り込んでいます。前半のギターアレンジは素晴らしい。一瞬出るTAIJIのソロはカッコよすぎ⑪、前作の最終曲を完成させたもの。Xには珍しくシンプルなロックバラード⑫と、勢いと荒々しさ溢れた最高傑作!名インスト、バラード、疾走メタル、大作、ロックンロールと多くの要素が詰まっています。

メジャーデビューにして最高傑作。このレベルのヘヴィメタル作品は日本のみならず世界的に見てもそこまで多くは無いと思います。いやマジお世辞抜きにして。

ギターソロは基本的にHIDEが作っていたそうなので、X Japanの名演と呼べる間奏はHIDEの力によって齎されたものです。本当に惜しい方を無くしました。

84/100点
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03.Jealousy (1991)


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YOSHIKIは首を痛め、TOSHIも喉に爆弾を抱えた状態でレコーディングに臨みました。これまでYOSHIKIはボーカルメロディに対して50%前後の介入をしていましたが、この作品は70%くらい拘るつもりでレコーディングしたとかしないとか。高音を出させられ続け、そこに感情を乗せるだけでなく英語の発音もこなせと高すぎる要求にTOSHIは苦しみ続けます。

レコーディングは長期化しSonyの社長が上場のため本作の売り上げが必要となり説得にアメリカまで来たためリリースは叶いましたが、それが無ければあと1年くらい掛かっていたかもしれませんね。なんせYOSHIKIは「締め切りを過ぎても頭の中は早く仕上げようではなく、もっと良くしようという発想しかなかった」とインタビューで言っていたくらいですから。自分のバンドで出す以上、下手なものを出して失敗と言われたくない気持ちは分かりますが、スタンドプレーが過ぎました。保護者のHIDEと、YOSHIKIに唯一意見できるTAIJIが居てもそんな感じでしたからね…。

ピアノインスト。最後の不協和音は自己満なので要らない①、長めの悶絶疾走。1回目のサビをちょっと変えて2回目のサビで本来のメロディを出す凝った②、ソロとか含めてメタルっぽい③、コーラスを起用して作られたアメリカンハードロック。他の楽曲と毛色が違い、多様性に一役買っている④、唯一のPATA曲。タイトル通り爽やか⑤、フルートとアコースティックギターで進行するバラード。TOSHIとTAIJIの魂の讃歌⑥、純度100%のヘヴィメタル。バンド史上最速⑦、ワルツ的なメロディ。これが歌モノに落とし込めたら凄い出来になりそうな予感がします⑧、アメリカンロックンロール。キャッチ―なメロディと何気に作り込まれた展開が素晴らしい⑨、パブリックイメージに則った長尺バラード。最後のYOSHIKI語りから上昇していくピアノが泣ける⑩と、4作品しかない彼等の作品の中で最もカラフル。YOSHIKIだけでなく他のメンバーの楽曲を大きく取り込んだバンドらしい作品です。

ただ元々の構想は2枚組で、楽曲も13曲の予定。外された3曲「Standing Sex」「Sadistic Desire(再録)」「Art of Life」は世に出たので、個人的には結果オーライですが曲順は気になります。Art of Lifeは最後として、他2曲を混ぜてどんな流れになったのでしょうか…。

てかなぜジャケットがYOSHIKIのシングルショット…。

76/100点
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EP.ART OF LIFE (1993)


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シングル(EP?)なんですが、Wikipediaではアルバム扱い。なのでその流れに沿ってみた。

元々はメジャー2ndの「Jealousy」に入るはずだった本作。「共存を拒んだ」なんてあたかも楽曲に意思があるように語っていますが、実際は単にボーカル録りが間に合わなかっただけ。

ついでに収録予定だった「Standing Sex」と「Sadistic Desire」も間に合いませんでした。私としてはSadistic DesireはVanishing Visionに収録されていため、外れてよかったと思っています。オリジナルアルバムに同じ曲が入っているのは個人的に嫌でして、Vanishing Visionのみでいいと思います。「KURENAI」と「紅」もアルバムに収録されているのは正直嫌。

「30分の曲が出来そう。」といいつつ29分で終わらせて未完成感を出させるやり方がいちいちヤキモキさせます。当然狙ってんでしょうけど。


内容はYOSHIKIのナルシズム全開の楽曲です。
29分間の中に疾走ありバラードあり自己満足ありと、非常に濃い内容となっております。hideが作ったギターソロとか超ドラマティック。Toshiが死ぬ思いで8ヶ月も掛けて録ったボーカルも炸裂しております。

またピアノソロは信者が聴けば涙の嵐かも知れません。某掲示板には「この曲はピアノソロがメインだ!」や「これを聴いて何も感じない人は人生で苦しんだことがない人だと思う」なんて妄信する方々が、当時はガチに存在していた程。

あと1分ピアノを長く弾けば30分になったのに、こうして「無駄なパートは一瞬として無いアピール」をバッチリ効かしてきます。

私は「音楽として良いか否か」で捉えるため、その点に関しては自己満足に過ぎない不協和音はピアノソロは基本スキップ。んー気分次第。

またシューベルトの交響曲第8番ロ短調「未完成」を所々で取り入れています。これは作曲家としてどうなの?と思う方もいるかもしれません。難しい話題ですね。

これが「Jealousy」に組み込まれていたら、ホント最高のアルバムになっていましたね。この頃のX(Japan)は素晴らしかった。尚今は...。

そして改めてこのジャケット見ると...この頃からYOSHIKIは自分が一番目立つ事を念頭に置いていたのが分かりますね...。

78/100点
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04.DAHLIA (1996)


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前作から5年と長いスパンで発表されました。といっても10曲中6曲が発表済みというベスト作品状態。またもや長期化したレコーディング費用を捻出するためにリリースされたシングルを購入していたリアルタイムのファンからしたら悲鳴の嵐だと思われます。

この作品が世に出るまでにどれだけのマテリアルが捨てられたのか気になって仕方ありません。いつの日か世に出るといいですけど…。まあ出ないか。

全く隙が無い程に作り込まれた①、インダストリアル要素を大きく取り込んだ挑戦作。見事に調和し新しい魅力として機能しています。ツインボーカルバージョンをスタジオ版でレコーディングしてほしかった②、長尺バラード。ギターソロ後のサビで直ぐ終われば短くなって聴き易かったと思ってします③、シンセを大胆に取り入れてます。一般ピーポーにもアピールできると思う④、YOSHIKI節。女性ボーカルを起用する案もあったそうですが、TOSHIになって本当に良かった。女性ボーカルにするのならソロ活動でやってください⑤、ピアノ、ボーカル、オーケストラのみのバラード。素晴らしい曲ですが、これバンドなんですかね?⑥、長尺バラード。文句なしに良い曲ですが、後半の語りとかカットしてもいいと思う⑦、唯一のHEATH曲。歌モノにしてほしかった⑧、打ち込みビートがよりインダストリアル感を増す。HIDEのグロウルも非常に良いし、TOSHIの泣き声も他の楽曲とは違って面白い⑨、ボーカルとオーケストラのみ。私はバンドバージョンの方が好き⑩と、YOSHIKIのバンド私物化がより顕著になった作品です。前作より彼のナルシズムを露骨に表現するような作風になりました。YOSHIKIに意見をしても結局彼の考えで覆されたりすればメンバーの心も離れていきますわなぁ。それなのにYOSHIKIは他メンバーに「どう思う?」と問いかけ、「YOSHIKIの思うようにすればいいよ」と応答があれば「何でもいいのかよ!」とキレるとね。悪循環ですわ。

もちろん色々なものを犠牲にした甲斐あって完成度は高い。強いて言えば⑧は歌モノにしてほしかったし、シングルもアルバムバージョンにレコーディングし直してほしかった…。

てかなぜジャケットが以下略。

73/100点
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05.X Japan (????)

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2007年の再結成からずっと待っていますが、まだ出る気配すらありません。相変わらず出す出す詐欺を繰り返していますが、それも関心を惹くためのパフォーマンスに過ぎないのでしょうね...。

もういつになるのかサッパリです。多くの宗教派閥が存在するこのバンド。日夜ネット上で論争が繰り広げられていますが、私は妄信しているファンよりもきちんと時系列を追って理論的に分析しているファン側の人間です。

リリースタイミングはウェンブリーが最後のチャンスだったかと…。PATAの病気のせいにしてんじゃねぇよ。もともと間に合わせる気ねぇだろ。

01.Prologue (the last song)
02.Jade(スタジオ版未聴)
03.Beneath the skin(未聴)
04.Born to be free(未聴)
05.Angel(未聴)
06.L’arme(未発表)
07.完全未発表
08.Rock Star(未発表)
09.IV
10.Hero(未聴)
11.Kiss the sky(未発表)
12.La venus(未聴)
13.Without you(スタジオ版未聴)

上の曲目は適当です。IVは2008年に世に出ました。もう新曲という括りに入れるのはムリがある気が…。

個人的にはスピードナンバーは無理に必要ないのでミドル~スローとバラード構成で全く問題なし。Jadeにアップテンポなパートがあるのでいいじゃないですか。Born to be freeもアップテンポっぽいし。

2016年3月に発売されると一時期先走ったファンによりWikipediaに書かれていましたが、現在は跡形もなく消えています。もうリリースはYOSHIKIが天寿を全うするタイミングくらいしか無いのか?あと30年〜40年後くらい?もうちょい先になんとかして欲しい。

そもそもX JAPANの新譜なのにYOSHIKIチャンネルで発表するっておかしくない?

-/100点
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以下過去記事
第二回:アニメタル USA
第一回:Dir en grey