日本唯一の希望と勝手に思っているバンドDir en grey(現在は全ての綴りが大文字)。

アメリカで日本人の成功はあまり例がない上にジャンルがヘヴィロックであるに関わらず、宇多田ヒカルを鮮やかに抜き去り今やディルはヘヴィロック界では世界に通用するビッグネームとなりました。

欧州でもその人気は凄いらしく、もはや日本より海外の方が人気あるのでは?と言われるほど。現在は“世界でもっとも有名な日本のロックバンド”に君臨したわけです。ちなみに少し前まで有名だったのは先輩バンドのX Japanですが、見事に恩返ししたと言えるでしょう(セールスの面では遠く及びませんが…)。


そんな彼等がドイツで行われる世界で最も大きなメタルフェスティバルの一つ『Wacken』に参加したのです。ちなみに参加は2回目。前回の結果があまり芳しいものでは無かったそうなので、リベンジの意味でも日本人や現地のファン達の期待も高まります。私も彼等の海外での活躍に素直に喜んでいたファンの一人です。

ここまで来る彼等の道のりは並大抵のものではなかったはず。認められるのもそれなりの時間が掛かっています。


ディルは1999年にメジャーデビュー。
メンバーは

ボーカル:京
ギター :薫
ギター :Die
ベース :Toshiya
ドラム :Shinya

の5人。

当時はバリバリのビジュアル系で、ボーカルの方は表情を変えたら顔にヒビが入るんじゃないかと思わせるような真っ白なメイク。各々が特別発注した高そうな服を着ていました。んでもって音楽性も完全にビジュアルロック。拒否反応を示す人も少なくないと思います。

かと言う私も某音楽雑誌でボーカルの方が血反吐を吐きながら唄っている写真を見て「スプラッターか!?グロ過ぎだろ!!正直無いわ」と判断を下す。

その後たまたまTUTAYAに100円でレンタル落ちのシングルが売っていて何となく買ってしまい、ビジュアルはともかく音はなかなかカッコいいじゃないかと考えを改めました。

2002年に出た3rdアルバムが出た際思わず発売日に購入。

当時洋楽に塗れだった私は日本のロックなんてレベルが低いなぁと若干見下し気味でしたが、この3rdアルバムには洋楽には無い「和」を感じさせるサウンドがとても新鮮で、自分の中でディルというバンドの必然性が確立された瞬間でもありました。

以来9年間、彼等の音源はほぼ確実に発売日に買うという熱狂的ファンとなりました。
あの当時は「ああ、私は後追いファンだな」と思っていましたが、もうファン暦9年なわけですから立派な普通のファンと名乗っても良い頃だと思っています。

音楽性がどんどん変わっていくのが面白く本当に飽きないバンドの一つです。


さらに私がもっとも共感できるのが「詞や音楽の内容は個々で解釈してくれればいい。その人がどう感じるかは自由。」というバンドの考えでした。

特にボーカルの方は「実は詞で伝えたい事なんて何も無い」と言い切ってしまうほどです。
バンドの全ての作詞をしているのにその発言はどうなの?と思うのは当然ですが、一貫性があってとても素敵なスタイルだと思います。

私は詞を読むということを基本的にほとんどしません。演奏やボーカルの声色・唄い方などで勝手にどういう曲なのか判断します。そのアーティストが本当に伝えたい事なんて関係なしです。それでいいと思っています。

彼等の考えが私の考えと合っていて嬉しかった。


彼らが海外にデビューすることが決まった時、まず上手くいかないだろうと私は思っていました。海外のミュージシャンに比べると全体的に線が細く軽いサウンドが受け入れられるとはあまり思えなかったのです。

しかし現実とは逆に、彼らはとても名の知れた存在になりました。今では海外の超大物バンドとライブ共演しているくらいです。日本人未踏のことをやっているのです。


どんなライブをやっているのか気になり始めたので映像や音源を聞いたところ…

コレは…。


評価が難しいですね。ボーカル全く唄えていません。。

某音楽掲示板には演奏も取り直していて実際は最悪と言われていました。唄えないところはカラオケのように客に任せてボーカルの方はパフォーマンス。このバンドのライブはボーカルの方が一人のたうちまわっているのを拝みに行くのが主な楽しみ方なのか?

今まで聴いてきた中で、日本人アーティストでここまで再現性の低いボーカルも珍しい。(海外ではザラ)同じく某サイトにライブでは別のボーカル入れて今のボーカルはパフォーマンスに専念したほうがいいと書かれるのも分かる気がします。


とあるサイトで

ボーカルはゴミ以下。
ベースはグルーブ感無さすぎ。
ドラムはリズム感無さすぎ。
下手のギターは問題外。
コーラス クソ、フレーズ クソ。
なんでコイツはいるんだ?

と散々な批評をしている人がいました。辛辣…。


ところがボーカルに関しては「唄うことよりも感情を出すことを優先しているので、ライブはパフォーマンス重視。音程が外れてるかどうかはあまり気にしていない。」となんとなく言い訳くさいコメントをしています。本当は唄えるけど敢えて優先順位を下げているんだぜ!!ということですね。

それならそうしてください。貫き通してください。


しかし2009年頃にBURRN!誌にて盲目的な信者ファン以外のお客さんから失笑・憤慨を露にされて我慢の限界に達したのか「もうパフォーマンスやらなんやらを優先するのは止めて、唄うことにする。」と発言したのです。

近年のライブ映像を見るとかなり唄えててビックリ!!なんだ、できるんじゃんやる気になれば!!と今まで馬鹿にしていた人達から徐々に評価を取り戻し始めたのです。

あの発言は嘘じゃなかったんですね。
素直に見直しました。

ボーカルの方は「え、こっちのほうがいいの?前よりも今のほうがいいの?」と微妙な心境でのようです。

まあ唄あった上でのパフォーマンスだと思いますからね。

良い判断であったかと。

で、ライブバンドとしての評価を日本である程度取り戻した感のあるディルですが、先ほど述べた『Wacken』に参加したわけです。


8月3日にニューアルバムをリリースしたディル。今回のフェスでやれるところをみせてやってほしい。盲目信者や私のような客観的なファンも大いに期待しました。

ある意味満を持してという言葉が相応しいタイミング。しかも幾つかあるステージの中でメインステージでの演奏すると。彼等のライブ映像はストリーミング配信で全世界に流れます。日本代表として魂見せ付けてやってくれ!!



で、結果から申し上げますと…

一言で言うと『悲惨』でした…。

周りが凄腕過ぎて明らかに弱弱しい。ボーカルはグロウル(低音でゴボゴボ唄うこと)は上手くなっていましたが基本的に音程外し過ぎ、高音出ない、の割にはパフォーマンスは普通。

ギターは…。

ギターソロパートのたどたどしさは生まれたての小鹿の如し…。

ドラムはズレるわは軽いわでいい所が無い。

特にパワー不足が痛いな…。


が、それ以上に問題なのがセットリスト。

一曲目からダウナーなスローチューンを持ってきて掴みは思いっ切り失敗。二曲目もバラードなんて持ってきちゃったからノリ辛いったらありゃしない。盲目信者専用セットリストと敬称していいような選曲。

こんな曲順、ディルを初めて見る人には敷居高すぎます。フェスなんだから!ワンマンじゃないんだから!初っ端から盛り上がれて暴れられる曲を選ぶ方が得策ですよ。

PAの悪さも折り紙つきです。

ステージの返し(ステージに向って出力される音)がほとんど無かったらしいです。スタッフ間で食い違いがあったのか。

ボーカルの方は普段は「自分のために唄う」というスタンスでそれをファンが見に行って楽しむわけですが、今日はボーカルの方が皆を盛り上げようと頑張っていたのが印象的でした。

そもそもメンバーの中で盛り上げようと努力しているのがボーカルの方のみで、他の連中はあまり動かず淡々と演奏するだけで見ていてやる気が感じられませんでした。


彼らは一体何を目的として参加したのでしょうか?新規ファンを増やしたいという欲は無いのでしょうか?お客さん達を楽しませたいという考えはないのでしょうか?ライブを楽しみにしてたお客さん達はどう思ったのでしょうか?ボーカルの方が「多くの人にライブを見てもらいたい。」とインタビューで話していたことを私は忘れていませんよ!!

初めの2~3曲辺りでお客さんが減っていく現実。演奏されている最中は半分くらいの人がノーリアクション。なのに曲が終わる毎に拍手や「ディルアングレイ」とコールしてくれるお客さん達の暖かさが逆に泣ける。


やはりがディルはライブ上手くない…。今まで水面下に隠してた問題が一気に表面化したかも。海外での評価を落としたかも…。全世界に配信されていたのが痛かったかも。ただ2005年に買ったライブDVDよりは面白かったかな。あのDVDは眠かったです…というか寝ました。

やはり他のバンドが上手すぎただけに浮きまくったことでしょう。ワーストパフォーマンスに選ばれる可能性すら考えられます…。



ライブ後ボーカルの方がツイッターで「皆ゴメン…俺が力不足な為にWacken最低やった。 血が吹き出ようが努力に死すのみ。俺は俺に絶対に負けへんからなっ」と呟いていました。

物凄く悔しい思いをしているだけに、やはり今回のライブはあらゆる方面にアピールするチャンスだときちんと認識した上でライブに臨んでいたようですね。

でもあれじゃ厳しいです。なんであんな風になっちゃったんだろ?緊張してたのか?

実際次の日のオランダ公演はまずまずの出来だったそうです。

でもあのライブはWackenの歴史に刻まれた。

ディルの黒歴史にもなるかもしれません…。大舞台で実力を発揮できなかったから仕方ないですけど。


スタジオバンドって言われるんだろうな。

ライブでできんことアルバムですんな!!って言われるんだろな。こんだけ醜態晒して日本代表とかふざけんな!!って思う人もいるな。悔しくて悔しくてたまらんだろうな。大ファンなのでこのピンチを乗り切ってほしいです。

頑張ってくださいディル。

これから挽回できるはずです。



以下はDir en greyの感想

EP.MISSA (1997)


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インディーズにて初音源。アートワークやメンバーの服装は今では考えられない程見事なV系。V系界隈は当時(今もか)女性っぽい格好が流行っていましたからね。この辺はやはりX Japanで唯一女性っぽい格好をしていたYoshikiの系譜と言えます。

Luna Seaの"Shade"や"Chess"直径のスラッシュビート。全然洗練されてはいませんがメロディは結構いいんじゃないですかね①、リメイクの際に聴き直して「聴いていて恥ずかしくなった」とメンバー達が語ってた②、完コピで演奏を取り直してくれたらカッコよくなりそうな③、不協和音チックなリフは混沌な感じがいい④、正統派V系メロディに溢れた佳曲⑤、酷い歌詞ですが楽曲自体はこの時期独自の不協和音っぽいボーカリゼーションが個性的な⑥と、如何にもという感じの作品です。演奏は微妙で京も正直上手くなく普通に外れていたりします。

バンドの歴史を追う上での参考資料としてはかなり上質。

【MY TOP 3 TUNES】
・霧と繭
・GARDEN
・秒「」深

30 /100点
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01.GAUZE (1999)


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残-zan-によりMステ視聴者に衝撃を与えたDirの満を持しての1stフルアルバムリリース。

インディーズ8cmシングル"I'll"の収録は見送られました。理由は分かりませんが、5曲もシングルが収録されていたので省かれたのかもしれません。2曲はイントロ、アウトロなので新曲は実質6曲。バランス悪かった。

初回盤はケースが非常に凝っていてお得な気分になれます。

ワヒャワヒャしたイントロ①、ドイツ語カウントから走りだします。そこまで抑揚ないですがカッコいい②、典型的なVロック③、この頃の個性が出た④、ようやくミドルテンポ。日本っぽい⑤、エログロVロック⑥、昔は疾走感を失わせる「one sexual~」の部分は不要だと思っていましたが、今はこれがあってこその個性だと思う⑦、長くてダルいので基本的に飛ばしてしまう⑧、割と爽やかめなポップス調⑨、ドラムは忙しないものの他の楽曲に比べるとシンプルな⑩、このバンドを象徴する暴れ曲。ブラストビート、グロウルと当時地上波に持ち込まれなかった要素が満載⑪、若干明るめのバラード⑫、アウトロ⑬と、紛れもなくV系。のちの作品と比べると垢抜けていませんが、十分に彼等の個性が反映された作品になっています。エログロ中二病の世界観がこれでもかと詰め込まれているのは好みで評価が変わるでしょう。

ちなみにプロデュースにYoshiki氏が関わったりしているそうです。初めにメンバーに会った時「みんな背が高いねぇ」なんて言われたとか。厚底ですからね。

【MY TOP 3 TUNES】
・cage
・予感
・残-ZAN

55/100
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02.MACABRE (2000)


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前作の流れを汲んでより暗くなった2nd。

前作ではThe V系な音楽を提示した本バンド。本作でもその流れを継いだものの、ケースを含めたアートワークも非常に暗い。メンバーの格好はまだ前作を踏襲しています。

Shinyaが嫌いなツーバスを敢えて導入した①、典型的なエログロVロック②、凄くカッコいいミドルチューン。当時のインタビューでは京氏の最高音域を意識したとDie氏が語っていました③、変わり種且つ気持ち悪い④、打ち込みからバンドに繋がりひたすらシャウトする⑤、暗い田舎の水場を揺らめく蛍が目に浮かぶ⑥、童話の歌詞を流用した古風ささえ感じるスピードチューン⑦、夫婦仲を強引に解決する銃弾を弾く子供視点のスピードチューン⑧、タイトルトラック大作⑨、飾り気のないロックンロール⑩、和風デスラッシュの名曲⑪、暗い大作バラード⑫、明るく儚げなポップロック⑬と、様々なタイプの楽曲があります。それでも散漫に感じないのは作品として流れが良いからか。

バンドのソングライティング力をきっちり証明出来ています。和を思わせる雰囲気が強いのも個性的で良いですね。拘りすら感じるほど。なおシングル「ain't afraid to die」は収録時間の関係で省かれました。

【MY TOP 3 TUNES】
・蛍火
・audrey
・羅刹国

62/100
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03.鬼葬 (2002)


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V系から乖離した方向性に推し進めた3rd。

この辺りからメンバーの服装が変わりました。女性のような恰好を止め、派手目な兄ちゃんな感じに。雑誌でも普通にオッサンになっていました。音楽性だけでなく見た目も変えていく。V系から距離を置こうとする意思の表れかと。

どことなく和風でサビに爆走する①、メカニカルでアグレッシブな②、これも和を感じさせるバラード③、歌詞はちょっと狙い過ぎですがサビで突如メロディアスになるのがメタルコア的精神性を感じる④、Toshiya氏のベースラインが世界観を作り出す⑤、インタールード⑥、キチガイソング。同性愛が肯定される世の中になりましたが、これが肯定される日は永遠に来ないだろ。そりゃシングルで歌詞変更させられるわ⑦、この時点では珍しい裏声から始まる汚い感じの⑧、タイトルからして嗚呼。楽曲自体は好き⑨、タイトルを凄い発音で使うバラード⑩、京氏のボーカルスタイルが活きたバラード⑪、インタールード⑫、この作品で唯一光を感じさせる明るめなメロコア。捻りもなく爽快⑬、中間部の和風メロが素晴らしいですが、歌詞はお察し⑭、残にも迫るShinyaの高速ビート暴れ曲⑮、美しいピアノバラードに打ち込みビートを合わせるセンスが流石⑯と、アコースティック色が強く、退廃的なイッちゃった和風の世界観が素晴らしいです。若干バラードが多めなのが賛否が問われる内容かもしれません。

余談ですが、ブックレットに日本語の歌詞がなく、アルバム買った時「シングルは全部英語になっているのか!」と驚いたわけですが、全然普通に日本語でした。どこに仕舞ってあるかすら、3年後に同級生から聞くまで気づかなかったです。

個人的に文句なしにこの時点で最高傑作。

【MY TOP 3 TUNES】
・embryo
・蟲
・Jessica

68/100
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EP.six Ugly (2002)


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時流を汲んだ重低音を取り入れた暴虐轟音ニューメタル路線。この少し前にIn Flamesがニューメタル要素を音楽に取り込み始めました。Slipknotの影響があるなんて囁かれていましたが、本人達は「Slipknotより前から速くてグラインドするバンドはいくらでもいた」と否定。しかしDirもその要素を取り入れ始めました。

2バンド共Slipknotのエネルギーに圧倒されて取り込みたくなったのでは考えています。Dirも「鬼葬(3rd)以降誰からも影響されていない」なんて強気なことを言っていました。元々両バンド共にニューメタルを取り込むだけの萌芽が備わっていたことは事実でしょう。

いきなり骨太。しかしサビではメロウ①、手数の多いドラムから極太リフに京氏のグロウル。嚙み合いすぎな②、ライブで盛り上がりそうなサビ。最後のサビでは冒頭で使ったドラムフレーズを使っている点は芸が細かい③、キャッチーですね。乗れるリズムにラップも混ざった最高の楽曲④、カップリングの再録。よりヘヴィになっています⑤、MISSA収録の再録。BPMを落とし重低音化、全編グロウル。見事としか言いようがない⑥と、ミニアルバムにして攻める強力な楽曲が揃っています。薫氏曰く、アルバムではバランスを考える必要があるが、ミニアルバムなら気にしなくていいそうです。確かに。

私は作曲クレジットを見るのが凄く好きな人間なのですが、Shinyaが2曲あったのは凄く意外でした。どうも前作でバンドのサウンド変化に付いていかずメロディアスなものを持ち込んだら1曲も採用されなかった経緯があります。

またShinyaは録音の際にバスドラを大きめにするようエンジニアに依頼。そのためキックが刺さって低音域が引き締まっています。世の中のメタルバンドはこれくらいキックの音量上げてもいいと思う。

【MY TOP 3 TUNES】
・Ugly
・Umbrella
・秒「」深

64/100
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04.VULGAR (2003)


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メンバーも当時最強と語った4th。

前ミニアルバムで取り入れた重低音。本作ではその路線を推し進めています。シングル「Drain away」「かすみ」は和を大きく感じさせていました。この路線を予想していた方もいるかもしれませんね。

不穏な低音効果音からエフェクトかけた声、めちゃくちゃ重低音化したギター、そして全編に漂う和、掴みとしては見事としか言いようがない①、ニューメタル。イカれたイントロから全編ラップでぶちかます名曲②、この時期のDirにしか作れないハードポップ③、カテゴライズの綴りミスはワザとなのか…童謡詞をサビに使うあたりやはり和に拘りが見られる④、Nirvarnaなイントロにシンプルなハードチューン。本作唯一の非常に構築されたDieの熱いソロが飛び出す⑤、シャウトを一度も使わない⑥、真夜中の都会の混沌的なシャッフルチューン⑦、非常に京氏のボーカルで他展開に聞こえる⑧、超和風。夏を思い出す。言葉の選び方が好きですね⑨、1分ちょっとのメロコア。3分位にしてほしいです⑩、Dir式和風ハードロック。ラップ風メロディが時折混じる⑪、後半のボーカル掛け合い(一人でやっている)がライブでできるか心配になる⑫、基本ミドルだが激重爆走パートがかっこよすぎる⑬、パンキッシュなアメリカ風味。前作ミニアルバムの流れを感じる(同時発売)⑭、暗い暗黒バラード。一回目と二回目のサビが高低差あって面白い⑮と、ニューメタル要素が強くなり前作までと比べると明らかにボーカルメロディラインの即効性が抑えられています。一発でドカンと来るのではなく、輪郭が掴めたらノレる的な。京氏がVocalからProphetになった影響(?)か、定石に当て嵌まらないボーカリゼーションを好き放題やっています。これがまた素晴らしいのなんのって。演奏自体も重いし。もはやV系の表面的な面影はほぼ京の声と唱法のみに思えますが、お里は隠し切っていない感じがこの作品の唯一無二の個性と言えます。

この作品で聴くのを止めていったファンの方も多そうですね。かつての音楽性とは全くの別物ですから。

また作曲のクレジットが全部バンド名で統一されてしまいました。私的には誰が原曲提供したのか楽しみなので載せて欲しかった。

【MY TOP 3 TUNES】
・Red【em】
・a to core
・Obscure

75/100
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05.Withering to death. (2005)


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これまでの方向性を総括したかのような5th。

4thの意図的な即効性減退から同じ路線へ行くと思いきや、提示されたシングル「The Final」は非常にメロディアスなミドルチューンでした。次に出た「朔」は基本「残」系の暴れ曲ですがサビではメロディアスに。もしかしたら前作よりはメロディ路線に戻るのではと予測を立てていました。

アルバムのイントロ的な楽曲①、前作には無かったメロスピ的な骨子の楽曲。サビは非常にメロディアス②、速、重、暴、美が揃った③、サビで豹変する④、全体的に低音でまとめたボーカルが印象的な⑤、「排水溝に流れていく俺の子供は無能の欠片」が衝撃すぎる⑥、ルーズなファンクっぽい演奏を披露した⑦、リフが非常に個性的なパンキッシュ⑧、「これで解散だったらベタすぎでしょ」とメンバーが言ってくれたのが救いになりました。ストレート且つ劇的なDir式ハード⑨、エフェクター掛けたグロウルに裏声の対比が良い⑩、全編エフェクターグロウルの荒々しい⑪、スピーディなヴァースからスローで美しいコーラス、そして女性にあまり聞かせたくない歌詞⑫、スネアを使わないで進む幻想的なバラード⑬、個人的にLinkin ParkのNumbに匹敵するグロージングチューン。痺れるデジロック⑭と、本作では更に洋楽風味になりました。前作で提示したニューメタル路線の即効性薄めなボーカルメロディラインは消え、一発で魅了されるようなメロディに溢れています。これなら昔のファンも留飲を下げる出来かと。

京氏は昔の無理矢理な高音とは違い、かなりスムーズに高い声が出るようになっています。コツを掴んだのかも。そしてグロウルに露骨にエフェクターを使用するようになりました。もしかしたら自分の生身の声だけで出せる暴虐性に疑問を持ってしまった時期なのかもしれません。

【MY TOP 3 TUNES】
・The Final
・Beautiful Dirt
・鼓動

76/100
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06.THE MARROW OF A BONE (2007)


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とにかく荒々しい6th。

1stから常に右肩上がりで作品のクオリティを上げてきた彼ら。新作ともなれば期待値は跳ね上がります。もうこんなの超えられないだろ…。それが5thを聴いた感想でした。

6thの先駆けとなるシングル「Clever Sleazoid」を聴いてひっくり返りました。「超えちゃったよぉぉぉ!」と狂喜乱舞…、したのはいいですが、その後に出た2シングルが聴いた当時はどうにも微妙で…。期待より不安がちょっと大きかったのが当時の素直な心境です。

滲んだピアノ音にとにかく暗い演奏が映えるバラード。一旦静かになるパートが素晴らしい①、攻める楽曲。メロディアスではありませんが、組み立てられ方から生み出された展開が美味②、のっけから荒々しく重い。ボチボチ③、「Dir史上最凶の楽曲」とされていましたが、どこが…?残の方が余程狂っていると感じた④、Fuck you言い過ぎ。もうちょっと言葉を選ぶことが出来たら…。楽曲は荒々しいくまあまあ⑤、サビメロはちょっと微妙ですが、リフがいいですね。どことなくジャズ路線に挑戦した感じも〇。中間部の高い裏声が低い低音になっているのが一番の変化点⑥、前回にもあったファンクっぽいルーズな始まりが良いんですが、途中から結局ヘヴィに。ただ歌メロはきっちりしているので悪くないです⑦、またFワードでてきますね。テンションが低いパートの方が好き⑧、イントロは少し疾走感ありますが、基本バラード。後半の暴れぶりは凄い。素晴らしいです⑨、「まだ上手く生きられない」の部分が心に突き刺さるバラード。高いですね。ライブでこんなの歌えるのか⑩、激しい以外のパートはいい⑪、ずっと攻めてます⑫、再録してくれるのは嬉しいですが、単純にシングルVerの方が好きな⑬と、この時点での彼等のディスコグラフィの中で一番激しいです。激しさに重点を置いているのでメロディはイマイチ。リリース当時は賛否両論でした。聴いた当時の拒否感は半端なかったですが、今聴くと全然聞けますね。シングルをアルバムVerとして撮り直してくれるのはファンとしてありがたかったですね。買ったのが無駄にならなくて。

京氏は海外の凶悪なグロウラー達に対抗しようとしてか、声にエフェクター使いまくって荒さを増そうとしているのが何とも言い難い。ギターはとにかく刺々しい。一方ドラムは重くて深い音作りから高くて細いオーガニックに変わっています。この変化は何があったのか、当時のインタビューをきちんと読んでいなかった私の手落ちです。

あとブックレットの歌詞が読めない。読ませる気もない。「何を訴えているのか気にしなくてもいい」的な姿勢は知っていました。私は元々歌詞を気にしない人間なので、彼等のやり方は特に気になりませんでした。

【MY TOP 3 TUNES】
・CONCEIVED SORROW
・艶かしき安息、躊躇いに微笑み
・THE PLEDGE

54/100
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07.UROBOROS (2009)


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宗教臭すら漂う孤高の7th。

いやぁ~ここまで来たかぁ…。深く感嘆のため息が出そうになります。

アグレッシブさを前面に押し出し攻撃性を極限まで出そうとした前作。それを引き換えにメロディが薄い楽曲が多かったです。このバンドは演奏より「声」が重要なバンドなので、京氏の声色が判別不能になるようなガナるだけの作品ではやはり存分に魅力が発揮されているとは言い難いのが私の意見です。

低い圧迫音のイントロ①、事実上1曲目にして9分の大作。静かに始まり中盤ではDani Filth系金切り声、終盤のサビはハイトーンを使い、最後には暴れて終わる隙の無い構成です。文句なしに超名曲。Dir en greyの楽曲で一番完成度が高いと思う②、ガテラルや凄い奇声、ついでに珍しくツーバスまで飛び出る③、荒々しくもサビメロはひたすら悲しく美しい④、若干取っつき辛い感じに始まりますがメロディアスなミドルチューン⑤、ピアノを取り入れた落ち着いたバラード。グロウルも一切出てきません。シングルを収録する際にアレンジしてくれるのはとても嬉しいですが、この曲は英詩になっており、世界観的に考えたら日本語の方が良かったのではと思ってします⑥、ジャムセッションのようにルーズに始まります。本当京氏は沢山の歌い方の切り替えが絶妙に上手くなりましたね。冗談抜きにDani Filthを超えています。あとToshiya氏のスラップが聴けます⑦、とにかく速くてヘヴィで混沌としています。それだけではなく狂ったクリーンギターパートや中間部では宗教的な怪しさも備えた暴れ曲⑧、これライブで歌えるんですかね…。心配になるくらい高音が続く寂しい感じのバラード⑨、不協和音みたいな演奏にグロウルとハイトーン。中盤から走って悲鳴みたいなシャウトがすげぇ⑩、穏やかなイントロから爆走しますが、サビでスピードダウンするのが如何にもオルタナティブメタル的な⑪、攻撃性の高いバラード…というよりスローチューン。これも#6同様にアルバムバージョンで英語になっていますが、世界観的にはやはり日本語のままの方が良かった気もします。後半のホイッスルが狂ってていい⑫、中絶をモチーフに書かれた歌詩らしいですが、誕生を拒まれた生命をテーマにした和風のクロージングバラード。信じられない程神々しい⑬と、この作品を聴き終えて「こんなとんでもないバンドになるとは全く想像もできなかった」ともう完全平服ですわ。

楽器隊は全員重いです。京氏はグロウルにエフェクター掛けるのを止め、声の細さも隠さず曝け出しております。5th辺りから太さを犠牲にして高音を出す発声を多用し始めましたからね。インタビューで言っていました。「海外ではクリーンとグロウルを両立させるシンガーは沢山いるけど、クリーンとグロウル+ハイトーンを使うシンガーはあまりいない」と。京氏は歌手生命を縮めてでも唯一無二になることを選びたい意思を表明した印象的なインタビューでした。

私の聴いた音楽作品の中でベスト5には入る。

【MY TOP 3 TUNES】
・Vinushka
・慟哭と去りぬ
・Inconvenient Ideal

88/100
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08.Dum Spiro Spero (2011)


dum spiro spero

プログレッシブというか複雑な8th。

前作で個人的に邦バンド最強(異論はあるでしょうが)まで上り詰めたDir en grey。そういえばこのちょっと前に大文字のDIR EN GREYになりました。海外を意識してかは不明。個人的に小文字の方がベター。

前作で名実ともに日本で一番有名なHR/HMとなりました。当時海外のフェスに行けば日本人はこのバンドのことを質問されたらしいです。私も前作は超大好きで、当然本作に関しても並々ならぬ期待を持っていました。シングル「DIFFERENT SENSE」と「激しさと、この胸の中で絡み付いた灼熱の闇」の一般性皆無曲を2発連続でぶっ飛ばしてきたのにもこのバンドらしかった。事前のインタビューで京氏が「頭の中にあるものが出せれば前作(UROBOROS)を軽く超える 」なんて頼もしい言葉を口にしていたのも印象的でした。

アルバムタイトルは「息の続く限り、わたしは希望を持つ」なんて意味らしいです。ほんのちょっと前向きですね。

不穏なピアノから不協和音。ブラックメタルみたいなオープニング①、本作を象徴する楽曲です。一般性0。浮遊感と気味の悪さが持ち味で、既定の音楽定石を無視した奔放な楽曲。最後に次曲のイントロが入ります②、サビ以外はほぼグロウルで突っ走ります。薫氏の弾くギターソロではまさかのハモリまで出てきます。CLEVER SLEAZOIDを聴いた時「次の作品は5thを超えるな!」なんて感じたわけですが、それと同じ思考回路で8thは7thを超えるかも…なんて思わされた楽曲でした③、ゆっくり始まったと思ったら走り出します。サビメロは分かり易いですが、これまでの彼等を期待するとダメかも④、タイトルがワケ分かりませんが曲としてはまだ分かり易い。突然奇声を上げて走るパートは面白い⑤、カオスな展開で進み続けるものの、サビは普通に存在します。ギターの遊びフレーズがファニー⑥、変拍子ドラムから開始。何気にギターワークが凝っています。やりたい放題なボーカル⑦、シングルですが、これも重く演奏が差し替えられています。シャウトが無い珍しい曲。シンプルですね⑧、暗い。いや全部暗いけど。普通に歌い出しメロディアスなサビメロもありますが、中盤前からグロウルし疾走し出します。最後にまたノーマル歌パートへ。約10分の大作ですが本作では非常に聴き易いというか理解しやすい曲⑨、左で重めのギター(薫氏?)右でクリーントーン(Die氏?)を弾くのがちょっとLuna seaっぽい。Toshiya氏のスラップも出てきます。和風で妖怪的な楽曲⑩、Shinya氏がブラストビート、京氏がグロウル、ガテラル、金切声と大暴れ。リフがデスメタルバンドみたい。ちょっとギターソロのようなパートもあり⑪、ギターの低音化で疾走感がなくなっているのと、声が若干エフェクター?っぽくなっています。シングル版と変える試みは素晴らしいですが、これは原曲の方がいい⑫、非常にシンプルでコンパクトなアルバム曲。非常に分かり易く、この曲も切ないDie氏主体のギターソロが飛び出します。「君さえが~」の伸びが素敵⑬、イントロが癖になる。「終わり無き日差しは眩い程残酷で」の歌詞が世の中の真理の一つを突いています。中盤爆走があるものの基本バラードタイプ。素晴らしいクロージング⑭と、最高傑作に挙げる方も多い作品です。

が、個人的には好みではなかったですね。Dirは演奏云々よりも声のバンド。それもノーマルボイス。グロウルやガテラルを多用し過ぎるとそもそも誰が歌っているのか分からず、このバンドの魅力を見失いそうになる自分がいます。そう思っている人間は多分私だけではない。といいつつも今回この感想文を作るため聴き直したら思いの外聴けたので、こういう作品もありなんだろうと思います。

「このアルバムが認められない人はファンではない」なんて過激な方もいるでしょうが、恐らく本人達は「別にいいんじゃない」と言ってくれると思います。

【MY TOP 3 TUNES】
・Deferent Sense
・Vanitas
・流転の塔

65/100
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