どうも貧困メタラー枯林です。
こんな日が本当に来るなんてねぇ...感慨深い。
私のフェイバリットバンドの一つであるHelloween。
2017年からかつてのメンバーであったMicheal Kiske(Vo)とKai Hansen(Gu、Vo)をゲストに迎えたリユニオンツアーを敢行し、その流れに乗ってなんと7人編成で16thスタジオアルバムまで作っちゃいました!
6年ぶりの新作!過去最長スパンですね。
メンツ
Andi Deris : Vocal(以下デリス氏)
Micheal Kiske : Vocal(以下キスク氏)
Michael Weikath : Guitar(以下ヴァイキー氏)
Sascha Gerstner : Guitar(以下サシャ氏)
Kai Hansen : Guitar、Vocal(以下カイ氏)
Markus Grosskopf : Bass(以下マーカス氏)
Dani Loeble : Drum(以下ダニ氏)
トリプルボーカル & トリプルギターのIron Maidenを超える大所帯。キスク氏は1993年ぶり参加、カイ氏は1988年ぶり参加。
前作「My God-given right」が個人的に凡作で「もうHelloweenを新品で買うのは止めよう。5〜6年後に安くなったら買おう」程度の熱意しか残されていなかったのにキスク氏がアルバムに参加することを知った途端にマストバイ対象になった自分の単純さに悲しくなります(けどそういう人多いはず)。
ついでに言うとここ最近のHelloweenは作品の出来不出来が激しく、12th「Gambling with the devil」でガッツポーズ!13th「7 Sinners」でガックシ、14th「Straight of the hell」でまたガッツポーズ、前述の通り15th「My God-given right」でまたガックシと浮き沈みを繰り返しています。
この流れでは今回の16thはアタリになるはず!
何はともあれリユニオンは止まることを知らず、ドラマーのダニ氏は1995年に亡くなった初代ドラマーIngo Schwichtenbergのドラムセットを使ってレコーディングに臨んだそうです。何とも7...いや7人1魂で作り出そうとする一体感が凄いですね。
しかしここまで"リユニオン"を推していながらも12年在籍したRoland Grapow(以下ローランド)と7年居たUli Kuschの2人は今回スルーされてしまいました。
ローランドは自身のバンドMasterplanで活動し、Uliは海外のwikiを見たらドラムのコーチをしているようです。両名の活動は共に時間の融通が効きそうな感じはありますが…。
とりあえずローランドはこの状況で何を思ってか、自身の作曲したHelloweenの楽曲をMasterplan名義で2017年に「Pumpkins」としてリリースしました!
自分が呼ばれないことに腹を据えかねたのか、真意は分かりませんがなかなか意味深な姿勢を露わにしましたよ...ローランドさん。
もちろん全然話題にならないしコケました...。
話を戻しまして、Helloweenは先行MVを配信。
まさかのアルバムのクロージングチューン先行公開するなんて...ねぇ。余韻も何もあったもんじゃありません。確かに似たようなことを11thでもやっていましたけど、作品をどんなふうに締めるかはとても大きな関心事の一つです。
楽曲自体はなかなか良いかと思われます。
映像の方は…お察しください。メタル界に存在する大方のMVはこんな感じなので通常運転か...。折角お金を掛けて作るのに、どうしてこう毎回トホホなのか...。まあコンセプト知らないんですけどね。
それに反比例するかのような素晴らしいアートワーク。とても超豪華な作りとなっています。中のブックレットは文字がブロック体ではないため読み辛いのが玉に瑕ですかね。
このアートワークからどうしてあのMVが出来たのか...とページを巡っていくと、SF的なコンセプトもありそうな感じ。MVに出てきたような宇宙船も載っています。見たい方は是非パッケージ版を購入して下さい。
【感想】
1. Out for the Glory
Weikath
はい、1曲目から死にました。
不穏な前奏から唐突に走り出し明るくも切ない歌メロがほぼキスク氏によって丸々歌われるのは往年のファンなら感涙ものでしょう。ただギターソロが...遠い。埋もれ気味。アナログレコーディングとはいえなぜこんな音質に…。そしてここまでキスク氏押し出しちゃって、デリス氏はどう思っているんでしょうね。
電気流されて感電しながら歌っているようなカイ氏には笑いました。
2. Fear of the Fallen
Deris
バラード調に始まりますが、まさかの2連疾走。
前曲と違いデリス氏がメイン気味にリードを取り、サビメロでは2人が絡み付くように歌われるのが新鮮。デリス氏作曲だけあり、彼の声に合っていてなかなかの良曲。「Listen〜」のくだりから再疾走するパートが1番気に入っていて、ここで3つ目に重ねられる声はカイ氏?
この曲、先行公開されていたのね。
3. Best Time
Gerstner/Deris
コンパクトでシンプルなため、昔だったらシングル候補になった感じの楽曲。リフが超Helloweenしています。サビメロがキスク氏が歌うのはいいんですが、デリス氏のターンも個人的には欲しかった。最後に少しだけ絡みますが。
4. Mass Pollution
Deris
これまた前曲と似たリズムの曲を並べてきました。リフが昔のパーティ風味ですが、サビに行けばいつもの感じ。デリス氏メインですが、人によってはキスク氏をメインにしろという方も居そうです。私はデリス氏も好きな人間なので、これで良いと思います。
5. Angels
Gerstner
マーカス氏のベースとキスク氏のアカペラから開始。ようやくミドルテンポきたかと思ったらサビで軽めに疾走します。アップテンポの楽曲が多いですね。ベースが目立つのにマーカス氏作ではありません。
楽曲を覆う不穏な雰囲気がHelloweenにあまり無いので面白い作りになっています。
6. Rise Without Chains
Deris
これも疾走かい!直球のクサいリフではなく、技アリなリフが個性的。ライブでサビメロ時にデリス氏とキスク氏の二人が前面に出て歌いあう姿が目に浮かびます。ライブ映えしそう。
7. Indestructible
Grosskopf
これは即効性高い!曲知らなくてもライブで2番から一緒に歌えそうなサビを備えております。合いの手のように出てくるカイ氏の声もいい味出しています。
マーカス氏は11th「Rabbit don't come easy」から欠かせないソングライターになりましたね。まあ、今更ですね。そもそも「Rabbit don't come easy」って19年前の作品…ええ!?
8. Robot King
Weikath
アートワークに描かれていたロボットの楽曲?キスク氏が自身のキャリアで最高レベルの高い声を出しています。こんなのライブじゃ歌えないでしょ。下を歌うデリス氏はあまり目立ちません。
中盤以降のゆっくりとした展開のボーカリゼーションも見事。
9. Cyanide
Deris
シアン化合って。何かの比喩か。少々毛色の違う歌メロを持ってくるあたりデリス氏のセンスが光ります。ちょっと箸休め的な役割なのかもしれませんが、最後のドラムで結局引き戻されます。
10. Down in the Dumps
Weikath
これもアップテンポやん。リフより歌メロで引っ張るタイプ。サビメロはかなり力押し…と思いきや2回サビがあるような変わった構成にされています。力押しのほうはデリス氏、2回目はほとんど超高音のキスク劇場。なかなか激的。
カイ氏のリードボーカルが少しですが出てきます!
11. Orbit
Hansen
次曲の前奏。QueenのBijou的な。ギター1本とキーボードのみで構成されていて、Helloweenとしては非常に珍しい形態の楽曲です。個人的にはもっと2分くらいにしてじっくり聴かせるメロディを独奏してくれたらと思いますね。
12. Skyfall
Hansen
先行公開された12分のトラック。Keeperを意識した大曲をシメに持ってくる辺り、多少なりともかつての栄光を意識しているのでしょうかね。
キスク氏の「The dark~」の低音が好み。
Bonus tracks
13. Golden Times
Gerstner
イントロのデモ音源レベルの生々しいギター音をどう捉えるかはリスナー次第ですが、それ以降は走ります。もう少しデリス氏にも活躍の場をあげてほしい…。
14. Save My Hide
Deris
オルゴール調イントロからようやくミドルチューン。デリス節が存分に発揮されていて少し安心しました。
15. Pumpkins United
Hansen/Deris/Weikath
以前リリースした音源と同じ。アルバムのボーカル比率もこれくらいのバランスを多く揃えた方がリユニオン感がありベターな気がしなくもない…と思うのは私だけでしょうか。
16. We Are Real
Grosskopf
カイ氏のボーカルから始まる唯一の楽曲。これがまた明るめ100%Helloweenな内容です!本編の楽曲を喰いかねないクオリティ。なんだったら⑫の後に収録しても流れてとして成立しそうです。
ベースソロまで飛び出すマーカス氏渾身の1曲かと!
【まとめ】
バラード1曲も無しかよ!攻めるな!
本編12曲中10曲がアップテンポという割合…。いくらHelloweenがスピード&メロディのパイオニア的存在だからといって、この比率はReign in Bloodほどではないにせよかなり極端に変わりないです。
本編の楽曲とボートラの⑭、⑯を交換した方がメリハリが生まれた気がしますね~。楽曲単体でしたらどれもこれも粒揃いなんですけど。
トリプルボーカルはもっとアイドルグループみたくコロコロ変わるくらいやってくれた方が面白かったです。1番のサビはキスク氏が歌ったら2番はデリス氏が歌うとか。カイ氏はほとんど他2人に歌を任せたまに顔を出す程度に留まっています。初の試みなので試行錯誤もあったかと。
トリプルギターは…Iron Maiden同様にあまり生かされている感じはないです。ブックレットにギターソロの担当書いて無かったのが不満と言えば残念。
そんな充実した内容に比例しなかったのが音質。デジタルレコーディングではなくアナログに拘りテープ録音で撮られたらためか荒い。私個人の感性では現代のテクノロジーを駆使した超高音質が好みなのでマイナス。霞がかっただけでなくギターソロも埋もれたりとかなり時代に逆行しています。
まあそれくらいですかね。文句は。
総括として、往年(2nd、3rd)の再現を期待していたのならコレジャナイと感じるかもしれませんが、失ったものをフォーカスせず新しく得たもの楽しめる方なら文句無しにオススメ。
7月に「見えてる地雷」を敢えて踏みに行く身としては、本作はユートピアで心の栄養を沢山補充することに成功しました。
これで爆死する覚悟が決まりました!7月はカミカゼ特攻します!
Helloweenによるリユニオンの一連の流れを見て思ったのは、AlcatrazzもJoe Stumpなんてショボいこと言わずにYngwieとVaiのツインギターで4thをリリースすべきでした。そんなんだから(?)バンドが分裂するんです。
...嘘です、事情は不明。
まさかの元NevermoreのJeff Loomis参加という信じ難い人選に驚きつつ、Graham Bonnet's Alcatrazzの方が本家(?)Alcatrazzへの期待値を上回ってしまったのは私だけではないと思われます。
にしてもこれだけアニバーサリーなことをしてしまったHelloween。
メンバーの年齢的にもそろそろキャリアを終える機会を伺っている可能性もあります。これで終わりになっても、最後の最後に優秀の美を飾ったと十分に言えますね。
果たして次作はあるのか?
あったとしても、キスク氏とカイ氏は参加するのか?
カイ氏は今回ソングライティングで⑪と⑫にしか関わっていないそうなので、カイ氏はヘソ曲げているかもしれません。そもそもキスク作曲も今回無し。
なんとな~く不協和音を既に感じています…。
杞憂ならいいんですけど。
【オマケ】
さて今回Helloweenの新譜を聴くに辺り、ローランドが自身のバンドMasterplanで上げた魂の絶叫とも言える「Pumpkins」を購入してみました。しかも新品で!貧困メタラーに何て大金使わせんの!
発売した当時はリリースされたことを知った上で完全にスルー。
1st、2ndと名作をリリースしたのにメタルシーン最高峰のボーカリストJørn Landeが脱退(後に再加入、再脱退)、更には同じくバンドの柱だったUli Kuschも脱退。生きる屍と化したMasterplanから出る怨念の塊ような作品です。そりゃスルーが賢い行いってヤツです。
しかしですね、何と言いますか、沸々と湧き上がる好奇心に耐えられず気が付けば購入...。
果たしてこの作品が意味するものは何なのか?
日本盤に入っているライナーノーツに望みを賭けましたが、内容があまりにも薄過ぎて情報媒体として意味を成していませんでした。担当したライターさん、仕事適当過ぎです。
なので勝手に予測します。
リリースの真意は
①Helloweenリユニオンに便乗して稼ごうとした
②Helloweenリユニオンに混ぜて欲しかった
③Helloweenへの復讐
④純粋に俺の方が凄い!と世間に認知させたかった
この4つの内どれかだと思います。作品を手に取れば解明出来る気がしたのです。
ブックレットを確認してみると、スペシャルサンクスにかつてのメンバーJørn Lande、Jan S. Eckert、Uli Kusch、そしてまさかのHelloweenの文字列がクレジットされていました!
復讐しようとする人間がこんなことをするか?少なくとも表向きに。
また2012年のインタビューにてローランドは「彼らは俺がリーダーになりたがっていたと誤解している。」と答えている旨がWikiに載っていました。
「俺がどういう人間かを、お前達は勘違いしている!」とHelloweenに訴えたかったのかもしれませんね。
Pumpkinsの真意...
それは「昔は色々あったが俺は怒ってはいない。いつでも声を掛けてきてくれよ!」の線が濃厚な気がします。または「俺は怒っている!だけどそれと同時にお前達に敬意も払っている。どうしてもというのなら、謝るっていうのなら、参加してもいいぜ。」な感じですかね。
②だと思われます。
ただ敬意を表するのなら自分の楽曲だけをリメイクするやり方はアティチュード的に微妙な気が...。④だと受け取られかねません。彼の性格は「俺だって出来るんだ」系のエゴイスト傾向にあると感じているので、尚更そう思われる可能性が高いかも。
もちろんHelloweenはそんなローランドを完全にスルーして7人でツアー後に作品まで完成させたことは上記の通りです。
詳細は闇の中。
ついでに感想も。
1. The Chance
当時この楽曲が収録されていたPink Bubbles Go Apeでは10曲目で「終盤のとっておき」に当たります。それを1曲目からこれって、凄い曲順ですね。
リフは相変わらず素晴らしいですが、同じメロディを使ったサビメロを歌うポストJørn Landeとも言われるRick Altziのボーカルが荒々し過ぎて少々聴き苦しい...。余裕が全く感じられない。
2. Someone's Crying
Helloween自体が転換期を迎えていた時代の楽曲で、なぜか加入したばかりのローランドが1番かつてのHelloweenらしい方向性の楽曲を作っていて驚いた覚えがあります。ライナーノーツにもありますが、彼は他のメンバーが作らない穴埋め曲担当であったと言えます。
3. Mankind
原曲のダークながらサビで明るくなる明暗さがたまらなく好きなのですが、Rick Altziの張り上げる声がしゃがれを通り越してデスボイスみたいに荒れた高音を苦しそうに張り上げる様は痛々しい...。
4. Step Out Of Hell
久しぶりに聴きましたがキャッチーですね~。この曲は無難にカバーされています。
5. Mr. Ego (Take Me Down)
なんとも取っ付き辛い曲調は変わらず。ただダウナーでメロディアスな歌メロは悪くないです...って言ってもHelloweenのバージョンとそんなに変わらないんですけどね。
6. Still We Go
冒頭のSEにちょっとしたアレンジがありますが、概ね原曲通り。ソロの後にちょこっとあるローランドの歌は今回も当然収録されています。彼にシンガーの才が備わっていない事を自らリスナーに再アピールしております。
イントロとアウトロの鼻歌がキーボードに替わっているは個人的に大減点。
7. Escalation 666
これはヘヴィな曲調も含めてRick Altziに合っている!Masterplanかというとまた微妙。ギターソロは相変わらずメランコリックで良いです。
8. The Time Of The Oath
Judas PriestのJugulatorみたいなSEは変わらず。大体は前と同じなので特に言うことありませんが、ギターソロを明確なツインギターにしなかったためスケールダウンもいいところ。そこを補完する新たな魅力はありませんね。
9. Music
ホーンが入っていなければ結構Masterplanっぽいかも。アダルティックで都会の夜的な色気がJørn Landeにマッチしそうです!
にしても7分は長い。原曲も7分でしたっけ。思い出せない。
10. The Dark Ride
冒頭の遊園地SEは専任キーボーディストを生かしたアレンジが入り、Ozzy Osbourneのオマージュ「All aboard!HAHAHA!」が炸裂して思わず失笑...。
纏うように収録されていたコーラスが排除されてサビメロの輪郭が分かりづらくなってませんか。またエンディングのギターソロもちょっと改悪気味。フェードアウトせずに終わるよう変更されている点は評価できます。原曲が超名曲なので悪くは無いですが、面白いアレンジも入れていない以上ただの劣化版ですね。
11. Take Me Home
最後にロッケンローを配置するセンスは好きです。最後のツーバスにちょっと驚いたかも。
12. I Don't Wanna Cry No More
Rafael Bittencourt、Yngwie Malmsteenと歌いたがりギタリストは沢山います。彼もその1人ですが、丸々歌うのをボーナストラックまで我慢したのは偉い!
【オマケまとめ】
ボーカルのRick Altziは普段の3割増くらい荒々しく聴いていて疲れます。彼の上位互換に当たるJørn Landeだったらこうはならなかったと思いたい。
可もなく不可もなく。Pumpkinsなんて作る暇があったら6thアルバムリリースして下さい。以上、そんな感じ。
これからも良き好敵手として切磋琢磨していって下さいな!
それか、ジャーマンメタル界のSlipknotになるか。
0 Andi Deris : Vocal
1 Dani Loeble : Drum
2 Markus Grosskopf : Bass
3 Uli Kusch : Percussion
4 Sascha Gerstner : Guitar
5 Kai Hansen : Samples
6 Roland Grapow : Percussion
7 Michael Weikath : Guitar
8 Micheal Kiske : Vocal
これならさりげなくリーダーポジション。
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