どうも貧困メタラー枯林です。

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Edu Falaschiの3rdソロアルバムが5/12に世に放たれました。1st、2ndともにセルフカバーも含めたバラードアルバムでしたので「もっと値段が落ちてからでいいか」な気構えで完全スルー。


ただ本作に関してはスルー厳禁な雰囲気が立ち込めていたので迷わず購入です!


Edu Falaschi(以下エドゥ)といえば、昨年「Temple of Shadows in Concert」をリリースしています。

かつて所属していたブラジルのバンドANGRA時代の超名盤「Temple of Shadows」をオーケストラやゲストボーカルを迎えて完全再現するコンサートで、内容は文句無しの素晴らしいものでした。

エドゥは2012年に逆流性食道炎と長年の高音過多な楽曲の歌い過ぎにより咽喉を痛め長い声明文を残しANGRAを脱退(アルコール依存症説あり)。

復調後にANGRAと同時並行で活動していた自身がリーダーであるバンドALMAHにて活動を再開するとのことでした。


すっかり元気になったようで何よりです。



で、なぜスルー厳禁な雰囲気を感じたかというと、2018年にリリースされたEP「The Glory of Sacred Truth」が典型的なパワーメタルでかなり良かったから(聴いたのは2020年...)に他なりません。




超ANGRAタイプなのにALMAH名義ではなく自分の名前を使っている理由は分かりませんが、エドゥの創作力は相変わらずですし歌声も1番酷い頃に比べたら十分に回復した感じ。


そんな現在のエドゥが出すソロアルバムです。事前情報も含め、「これまでやってきた得意の方向」に向かうと思っていたのは私だけではないでしょう。


○メンバークレジット
Edu Falaschi - Vocal, Keyboard, Accoustic Guitar
Diogo Mafra - Rhythm & Solo Guitar
Roberto Barros - Solo Guitar
Raphael Dafras - Bass
Aquiles Priester - Drums
Fábio Laguna - Piano on #4、#10

Solo Guitarというのは、Lead Guitarも込みの話ですかね?表記がちょっとよく分かりません。

Keyboard Orchestrationは全てPablo Greg氏によるもの。ただエドゥも監修をしているそうです。

ProduceがエドゥとRoberto Barros連名で、なぜかCo Produceに突然現れた元Shamanの Thiago Bianchi...。


次にスペシャルサンクスですが、エドゥの欄にANGRAメンバーの表記はありません。それもそのはず、5月11日の激ロックインタビューでは

「うーん......申し訳ないけど、もう"友達"って感じではないんだよね。ファンのためにもそのへんは正直に言うようにしているんだ。俺が2012年に脱退してからも連絡を取り合うようにはしていたけど、いろいろすれ違いがあってね。」

彼等の道を尊重していたようなニュアンスも書かれていましたが、今後エドゥがANGRAに復帰なんてことは無さそうで寂しくなりました。

あと激ロックインタビューにてエドゥが離婚していて、元嫁さんが日系(チエミさん)なのも知りませんでした。見た目の人柄からあまり離婚しなそうに見えましたが、エドゥにも色々あるのでしょうね。


【感想】
1. Burden
Music : Pablo Greg

プロローグのインスト。物語によれば、ジョージなる赤子が修道院で拾われるシーン。


2. The Ancestry
Lyrics:エドゥ
Music : エドゥ,Roberto Barros

インスト→スピードチューンというパワーメタルのお手本のような流れでキメてきます。オ、オープニングからピロピロが乱舞している!しかもツインピロピロでバッキングすらオーバーダブされていない徹底ぶり...。お陰でボディがガラ空きだぜ!(パクリ)

チェストボイスという発声法でかつてのハイトーンを出そうとしていて、ここまで高いエドゥの声は久しいですね。無理しているのではなく、絶好調の証だと強く願っております。


3. Sea Of Uncertainties
Lyrics & Music : エドゥ

2曲目もアグレッシブでリフがカッコいい。エドゥのボーカルとクワイア部隊との掛け合いから、ハイトーン気味で歌われるサビメロも良いですなぁ。締め方も好きです。

間奏でスピード上がるところも曲順的にAngels and Demonsを意識しているのかもしれませんね。


4. Skies In Your Eyes
Lyrics & Music : エドゥ

恐らくエドゥのアコースティックギターから始まるバラード。キーボードオーケストレーションもFábio Lagunaのピアノもかなり情感溢れている上に、バグパイプみたいな音色が良いメロディ奏でております。これもWishing Wellを意識していそう。


5. Frol De La Mar
Music : Pablo Greg

1分弱のインタルード。ほぼ次曲の前奏に近い内容。


6. Crosses
Lyrics & Music : エドゥ

どシンプル超オーセンティックなクラシカルメロスピ。世に溢れているどころかエドゥ自身でも過去に何度もやっているタイプの楽曲。もちろん真新しさは全然ありません。

でも、まあいいじゃないですか、そんなことはどうでもいいです。わたしゃー涙腺崩壊寸前で悶絶死するかと思いました...。落ち付かず部屋をウロウロしながらリピートの嵐...。


7. Land Ahoy
Lyrics : エドゥ
Music : エドゥ,Roberto Barros

エドゥ曰く、本作で1番重要な楽曲。イントロではアコギ、ハイハット、ベースが中心に進み南国感あります。コンガみたいなパーカッションも加わり、サビでは一気にシンフォニック。間奏で弾かれているアコギがエドゥ本人?良いプレイしますね。走ったりテンポダウンしたり長い間奏を経てまたビックコーラスに戻り終曲。

本作で最もプログレッシブ。Shadow Hunter的。


8. Fire With Fire
Lyrics & Music : エドゥ

スローテンポで始まるもののサビメロやソロではソフトに走ったりする多展開で、最後には大円団とばかりにRunning Alone的なクワイアで締める!肩肘張った演奏ではないため心地良くてとても聴きやすい。

...Metallicaを思い出すタイトルですな。


9. Mirror Of Delusion
Lyrics & Music : エドゥ

フラメンコチックなアコギで変わり種来たか!?と思いきや途中から優雅なメロスピに。歌メロが主役なのは言うまでもありませんが、そこまで高音でもなく余裕を持って綺麗に歌い上げております。

中盤過ぎのハイトーン後にAQUARIA的なキーボードでファンタジー展開を想起させ、ラストにまたまたRunning Alone的なビッククワイアで感動的に締める...かと思いきや楽曲の冒頭に出てきたアコースティックギターが鳴り響きます...ちょっと余韻を壊す演出な気がしますが、恐らくこれもコンセプトの一部なのでしょう。


10. Bonfire Of The Vanities
Lyrics & Music : エドゥ

これもエドゥのアコギと歌から始まります。バンドが入ってからは全編が壮麗なクワイアに覆われた豪華な作り。サビの後に一度また静かめになるところが良い。ギターソロよりもエンディングに進むにつれ弾かれるメロディがいいですな。

最後はまたアコギと歌だけに戻り終曲。捻りのない純粋なバラードで大好きですが、3分半は少々短い気が...。シンプルなのが悪いわけではありませんが、もう1分くらい長尺にした方が憂いが増したと思うのは贅沢な話か。


11. Face Of The Storm
Lyrics : エドゥ,Max Cavalera
Music : エドゥ,Max Cavalera,Roberto Barros

フューチャリング Max Cavalera
ヘヴィロックの重鎮で同郷のMax Cavaleraが参加している以上、ソフトな楽曲になる可能性は0。

トライバルかモダンヘヴィネスみたいなスロー楽曲かと思ったらプログレッシブ要素を微妙に入れたメロスピ。この手のジャンルでは珍しい表打ち疾走で組み立てられている特徴。剛の雰囲気がよく出ていますし、Unholy War的な組み立て方をされていて起伏があります。

5:26から切り込むようにギターソロが炸裂する瞬間は何度聴いても圧巻の一言!


12. Rainha do Luar
Lyrics:エドゥ,Vivian Cabrini,Isadora Bertoli
Music : エドゥ

フューチャリング Elba Ramalho
デュエット相手Elba Ramalhoさんはブラジルではとても有名な歌姫で、エドゥが子供の頃からのファンだとか。お年もお年だけにややおばあさん気味の声質ですが、逆にMetallicaのThe Memory Remainsのような色褪せた哀愁が感じられ、悲し気な曲調への相乗効果でより劇的になっております。Late Redemption的な終曲。

そして間奏にまさかの「白鳥の湖」が飛び出てきます...。なぜこんな有名なメロディを引用したんですか...?正直、いらん。

ちなみに作詞にクレジットされているVivian Cabriniさんは現在のお嫁さんっぽいです。Isadora Bertoliは不明。



【まとめ】
いやー...こりゃとんでもねぇの作ってきましたね。

「Temple of Shadow」を意識した構成で、個人的体感ではANGRA時代の名盤「Rebirth」を超えた感すらありますわコレは...冗談抜きで。ほぼ1人でこれだけの楽曲を揃えるなんて全盛期から全く翳りのないコンポージング能力には脱帽。

ANGRAの現状を考えると、初期1st〜3rdは前任ボーカル、その後4th〜7thはエドゥの才能によって支えられていたのかもしれません(9thは未聴)。


激ロックインタビューにもありましたが、ALMAH名義でなく自分の名前で作成したのは典型的なパワーメタルではなく多展開なプログレッシブ的要素を含んだ方向性を狙っているからだそうです。とはいえガツンとくる楽曲は十分に揃っています。

アルバムコンセプトに関しては割愛します。語り出したら長くなること間違いないので。


○ボーカル
文句無しの素晴らしい歌声。自身の本領声域であるバリトンによる低音〜中音域はもちろん、久々に初期の発声テクニックを使ったというハイトーンもバッチリ決まっています。

○ギター
超絶テクニシャンなのはよく分かりますが、少々Diogo Mafra、Roberto Barros両名のギターが節操なく無駄にピロピロし過ぎ...。といっても一応曲を壊さない程度に止められている...と思うのでご安心を。

○ベース
気にならない程に溶け込んでいます。#7では目立っています。

○ドラム
ソツなくコナしております。ほんの気持ち音量を下げてくれた方が全体バランスが良かった気がしなくもない...。

○キーボード
専門家と共に作り上げただけあって、抜かりない出来だと思います。



100点中84点!

ちなみに「Rebirth」は83点。「Temple of Shadow」が86点ってとこですか。一応まだあっちの方が良いと思っていますが、今後どうなるかは全然分かりません。



この作品を聴いてAngra勢も「コリャやべえ。遊んでいる場合じゃない!」と気合を入れてくれることを祈っています。Fabio LioneをRhapsodyに専念させ、超絶シンガーを加入させて欲しいです。

ついでにAlirio Nettoなるシンガーを加入させたらしいShamanも触発されて本格的に活動再開してくれェ〜!