流石に寒くなってきました。

もう12月中旬です。


そんな寒い日々に、更に心を凍てつかせる出来事がありました。

先日ヘビタルに疎い人に曲を聴いてもらえる機会に恵まれたのです。私はヘビメタが好きで、もうウン十年も続けているベテランリスナーの1人です。

そんな人間がふとした瞬間に「ちょっとヘビメタ流してみて。」と言われてどう思うか?


2020年現在ヘビメタは超大物バンドを除いて最早日陰の存在で、今後メインストリームに浮上してくる可能性も低いはずです。

素直に「この良さを理解してもらえるチャンスかもしれない」と前向きに考えてしまったわけですよ。

普段は恥ずかしいので公共の場や人前で流すチャンスがあったとしても決してチョイスはしませんが、ここぞとばかりにスイッチをオン!




その数秒後、その気持ちは後悔に変わりました。





「これダサくねぇ?なんかこの後ろで鳴っている音がダサい!」








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ガーン!



※以下真面目なメタルファンは読まない方が吉。非メタラー向けの記事です。




後ろで鳴っている?



何が鳴っているの?



あー、キーボード(シンセサイザー)のことですか。確かに鳴ってますね。そこにまず耳が行くのかぁ...。


私が社会人1年目の時、同僚でメタル好む方と知り合うことができました。

その彼曰く「キーボードの入っているバンドは好きじゃない。シンセサイザーの音が聴きなれない」そうで、「メタルならバンドサウンドで勝負しろ!ボーカル、ギター、ベース、ドラム!シンプルイズベスト!」なんて強気なことを豪語していました。


メタル先進国であるヨーロッパの友人はキーボーディストが在籍するバンドを"ち○こメタル"と言い切りました。

「ウチの国では本当にヘヴィじゃないとメタルと認められない。キーボードがポロロロンって入った音楽はポップスだ。子供向け。」




…なんと私がヘヴィメタルだと思っていたものは、ヨーロッパでは"ちん○メタル"だったのです!この衝撃は当時計り知れないものがあり、今後自分の好きなジャンルを語る際には"○んこメタル"と自己申告する必要すら考えたものです。

私にとってキーボードが入っているのは普通の感覚でしたが、意外にキーボードが苦手な人って多いのかもしれませんね。





「後ろでファーファー鳴っている音のこと?」



「そう!それが古い!火サス時代のセンス!」






...火曜サスペンス劇場のセンスかよ...。



『火曜の夜9時に会いましょう!!!』


1981年9月29日から2005年9月27日にかけて、日本テレビで毎週火曜日に放送された2時間ドラマ枠。略称は“火サス”原則として21:00 - 22:54[注 2](JST)に毎週1話完結(極稀に前後編形式の作品もある)のサスペンスドラマを放送していた番組タイトルの通り、サスペンスドラマ専門の放送枠である。一部の放送回ではホラーや時代劇、特撮テレビ番組も放送した。

※Wikiより出典


いつの間にかこの世から消えてしまった文化ですが、まだ記憶にある方は少なくないと思っています。火サスで流れる音楽は劇的なシンセサイザー(またはオーケストラ)が導入されており、人間の悲劇や憎愛を表現するに相応しい手法だとばかり思っていました…。



「なぜ演奏の後ろでファーファーと音が鳴っているの?」


「なぜって…、楽曲を劇的に盛り上げられるし、神秘的な感じが出せない?」


「いやいや、今2020年!古い!」


「ファーファーメタル…だめ?」


「だめ。」



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ファーファーメタルよりファーファメタルの方が締まりが良いので2度目の伸ばし棒は省きます。



…そうですか。

ファーファメタルは"ち○こメタル"で、さらには時代遅れなんですね…。

もちろん古いことは理解してはいましたが、愛聴している身としては心苦しさで一杯ですわ…。その理論で言うと有名曲「Final Countdown」や「Jump」なんかも時代遅れになっちゃいますが、あれは市民権あるのでセーフにしてほしい…。




ではどんな条件下で火サス化するのか?


分析を行うために、メタルにどんなファーファが存在するのかいくつか例を挙げて、都度ジャッジしてもらい検証を行いました。例が結構偏っているのは明示的に理解しやすくするため且つ私自身最近のメタル事情に付いて行っていない(2020年にリリースされた作品を聴くのは恐らく2030年位…)ためです。選曲やバンドは自分でも理解できないくらいに超適当です。


前提に言っておきますが、私は下記で紹介するアーティストや楽曲は大好きです。愛しています。あくまで第三者目線で客観的に言われたことをまとめています。

ちなみに下記が三大マイナス点だそうです。
・ファーファ
・おばさん声
・タンボイス(淡が絡んだデスボイス)



ファーケストラ型
ファーファと共に生きファーファと共に死ぬメタル。ファーファが止まる時、それは楽曲が終わる時だけ。メンバーにパーマネントなキーボーディストがいて、全編をキーボードオーケストラまたは生のオーケストラを導入したりドラマを構築します。単なるファーファなら問題ありませんが、オーケストラっぽくアレンジをするためにはその道の知識が必要なため、メンバーに出来る人が居ない場合は外注するのが基本。

・Rhapsody of fire
ファーケストラ型の超代表格。キーボーディストが外部プロデューサーと力を合わせてファーケストラと混然一体に攻める攻める!
Emelard Sword [1999]


Aquaria
少々マイナーなバンドですが、ファンタジックなファーケストラが全編を覆う楽曲を沢山発表しています。「ファーファ、ボーカルのおばさん声、構成する要素の全てが苦手」と言われてしまいました…(泣)。…声が苦手なのはちょっと分かる。
And Let The Show Begin [2005]



Cradle of Filth
シンフォニックブラックメタルの重鎮。ファーファ度も極高!特に下記の楽曲はフルオーケストラ導入且つファーファ使いまくりです。ボーカルも文句なしにおばさんの金切り声。
Hurt and Virtue [2003]



Royal Hunt
リーダーがキーボーディストなので、それはもう…ファーファの権化です。ボーカルのやや低めの声はアダルティックで良いそうですが、高音になるとおばさん声。
Tearing Down The World [1997]





ファーファ共存型
キーボーディストの楽曲支配率が非常に高く、リードを弾いたりバックで演奏を盛り上げます。ファーファ無くして楽曲は成り立ちません。こちらも基本的にメンバーにキーボーディストが存在します。

Children of Bottom
現在はモダンヘヴィネス成分多めのヘヴィロック偏重気味の音楽性ですが、かつてはネオクラシカルデスメタルな音楽性でした。ファーファリフやソロもキーボーディストは弾きまくります。分裂し活動休止中。
Mask of Sanity [2000]



Dream Theater
プログレッシブヘヴィメタルと呼ばれる総本山。楽曲を先導するファーファ指数も非常に高い。紹介する曲よりもっとファーファなものは沢山ありますが、サックスのメロディがかなり古いと言われてしまったのでこの曲。「そこが良いんだよ!」と主張するも受け入れられず…。ライブではサックスパートをキーボードが弾くので、ファーファ化します。
Another Day [1992]



Power Quest
マイナー系から。超速メロスピバンドDragon Forceの元キーボーディストがリーダーで、こちらもアップテンポな楽曲が多いです。今時小学生で聴かないかもしれない危険な音です。紛れもなくC級バンドで洗練されておらず、「これ好きなの!?」位の事を言われて泣きそう…。恐らく今回載せた動画の中で最も公衆の面前で流せないと思われます。
Neverworld(Power Quest PartⅡ) [2003]



Ride the Sky
別バンドから脱退したドラマーが結成したもののあっという間に解散してしまったバンド。冒頭のリコーダーのような音も恐らくキーボードによるもので、その後も劇的なファーファを展開します。2ndも聴いてみたかった…。
Far Beyond the Stars [2007]





ファーファ補助型
バックの方でファーファが流れているタイプ。基本的にはファーファ依存が低く味付け程度に抑えられているため、ファーファパートを外しても基本的には楽曲が成立する。

Black Sabbath
ファーファが取り入れられていたのは主にTony Martin期ですね。北欧神話コンセプトの作品なので雰囲気は最高です。注意点としてBlack Sabbathはボーカリスト毎に音楽性を変えているので、一番有名なOzzy Osbourne期は別物です。
Anno Mundi [1990]



Helloween
初期~中期はともかく、現在はほぼファーファが楽曲の背後で鳴っています。来年リリースされる7人体制のアルバムが楽しみなのでこの曲。
Pumpkins United [2017]



In Flames
メロディアスデスメタルの祖と言われた彼らですが、中期以降は大きくファーファを取り入れます。またボーカルはデスボイスではなく、タンボイスらしいです(タンボイスとは喉に淡が絡んでいるかのようなデスボイスで、喉内に絡んだ淡の粒子が細かく弾けて荒々しく聴こえる的な話だと個人的に解釈しています)。沢山名曲がありますがバラードを紹介。哀愁のデスバラード。
Evil in a Closet [2004]



Sonic Syndicate
最近中古で買ってお気に入りです。メタルコア&オルタナティブメタルで、バックにファーファが搭載されている結構ユニークな音楽をやっています。
Encaged [2008]





○ノーファーファ型
ギター、ベース、ドラムのみで構成された硬派タイプ。スポット的にピアノやオーケストラが入る場合もあるが、基本はバンドサウンドのみ。

Metallica
冒頭で挙げた超大物バンド。例外に属しアメリカでも未だ大人気。敢えての最大ヒットアルバムのリードトラック。
Enter Sandman [1991]



Avenged Sevenfold
アメリカでもヘッドライナーを務め、チャートも常に上位にランクインするヘヴィメタルバンド。音はヘヴィメタルですが、何となくヘヴィメタルっぽくない雰囲気が新しいというか、そんな典型的な感じがしないところが未だにアメリカでも受けている要因かなーと。
Burn It Down [2005]



Blaze Bayley
メタル界の王である"メタルキング"と当ブログでは称される彼はノーファーファです。魂のボーカルに酔いしれる…ことが出来るかは大きな個人差があります。比較的最近の作品から。動画のサムネイルが強烈だったのでチョイス。
A Thousand Years [2016]


Judas Priest
メタル界の神である"メタルゴッド"と世界で称される彼らはノーファーファです。中期と後期に単発的にギターシンセサイザーやオーケストラを取り入れましたが、基本はノーファーファ。これも代表曲。それにしても素晴らしいミュージックビデオ。
Breaking the Law [1980]



Slipknot
覆面集団。Nu Metal(ラップを取り入れたメタル)とかモダンヘヴィネスとか色々言われています。彼らもアメリカでは莫大な人気があります。やはり彼らと言えばこれ。
Spit It Out [1999]



Trivium
日系アメリカ人のボーカル兼ギターのバンドで、時にスラッシー時にメロディアスな音楽性でアメリカでも人気があるヘヴィメタルバンド。ボーカリストは半分以上タンボイス(らしい)で歌われていますが、ノーマルな歌声はまさにハードロック・ヘヴィメタルに適した美声です、少なくとも私には。
Departure [2005]





オシャレファーファ型
ファーファはファーファでもオシャレなファーファはファーファに非ず!なんじゃそりゃ
Dead By April
バンドの基本コンセプトが「Backstreet Boysのようなボーイズコーラス対比的に配置するデスボイスとエレクトロニカルなキーボード」なので当然ファーファチックな雰囲気がありますが、オシャレなのでセーフだそうです。一番の代表曲。
Losing you [2009]





あ〜型
演奏のバックで「あ~」という男性のコーラスが薄っすら流れているタイプ。今の世の中生の声ではなコンピュータでもコーラスを作れてお手軽に荘厳さが醸し出せます。またはコーラス隊を使っていたり、バンドの予算との相談でクオリティが変わります。ファーケストラ型では合わせ技でこのシステムが導入されているケースも多々あります。

Yngwie Malmsteen
Yngwieは基本的にファーファ補助型に属しますが、キーボーディストに重きを置かなくなった後期の作品ではあ~型を好んで多用しています。アルバム中屈指の捨て曲ですが、一番顕著なのでこれ。
Into Valhalla (2010)





【まとめ】
と、歪んだ愛をぶつけてみました。

被験者に色々聴かせる過程で私も聴きましたが、確かにK-POPとか流行っている2020年現代の若者達の心をこの音楽で開くことは難しいと思いました。NiziUやBTSが好きな方達からしたら化石のようなものでしょう。


「メタル=ダサい&古い」定義は私自身認識しています。

これから先も一部のバンドのみが受け入れられ、その他大多数が音楽業界で日の目を見ることは無いでしょう。私自身も無理に聴いてほしい等とは全く思っていません。



ただ、もしメタルを聴いたことない方が100人中99人"古い&ダサい"と感じても、残りの1人が"カッケー"or"思ったよりは良い"的な感情を抱いてくれたらこの上ない喜びです。


なので毛嫌いせず、別の記事を検索してたまたま本ブログに辿り着いた方も最後まで読んだり聴いたりしてくれればこれ以上にありがたいことはありません。



…なんてことを最後の最後に記載しても無駄な気がしますが、ここまで飛ばさずに読んでくれた非メタラーさんは大変ありがとうございます。