どうも貧困メタラー枯林です。

Alcatrazzの4th「Born Innocent」が本当に発売されちゃいました。パチパチパチ。



今から37年前の1983年、Alcatrazzはデビュー作「No Parole from Rock 'n' Roll」をリリースし高速の豚野郎ことYngwie Malmsteen(以下インギ)をシーンに知らしめることになります。リーダーのはずだったGrahamよりもスポットライトを浴びたインギは「俺以外の奴等はみんなカス」とか「バッハが死んでから誰も作曲はしてこなかった。みんなバッハの真似なんだ。それ以後、初めて作曲をしたのは俺なのさ」と天才的な勘違いをしAlcatrazzを踏み台にして早々に脱退します。

インギ脱退後新ギタリストのオーディションが行われました。空席になったギタリストの座には当時世界最速のChris Impellitteriではなく奇才Steve Vaiが選出され毛色の違う2nd「Disturbing the Peace」をリリース。彼も早々に見切りを付け更に大物である元Van HalenのDavid Lee Rothバンドへ行きます。Alcatrazzのメンバーからしたら「またかよ、出世に利用しやがって!」と涙目でしょう。

その後Danny Johnsonなる謎のギタリストを加入させ3rd「Dangerous Games」をリリースし再起を図りますが、前2作には全然及ばずAlcatrazzは活動休止します。※ Danny Johnsonは少し後述。


新しいアルバムを10年以上前からレコーディングしていることは知っていましたが、本当にリリースされるとは思いもよりませんでした。前作「Dangerous Games」から驚異の34年ぶり!四半世紀を余裕で超えての発表に一部のメタルリスナーの間ではほんの少し話題になったとかならなかったとか。

なんせボーカルのGraham Bonnetは今年で73歳!

69歳でこの世を去ったRonnie James Dioよりも年上。晩年のRonnieは歳には勝てず衰えが激しかったです。そこでこのGrahamはどうでしょうか?彼の声を聴いたのは恐らく2002年にImpellitteriでリリースして「System X」が最後で、既に18年経っています!その時点で正直全盛期には程遠い状態でした。なのに彼の「30歳の声を維持している」とかなり強気な発言をこの前見つけてしまいました。

そう思っているのは貴方だけなんですよ。きちんと衰えているんですよ貴方は。とはいえ、18年前から声を聞いていません。気になって2年前日本にImpellitteriの来日公演で、アンコールのみ飛び入りしたライブ映像を観てみました。



思ったよりは歌えている!?

これはかなり舐めていましたね。古希でこれだけ歌えれば凄いのなんのって。歳をとって負荷の低い歌唱法に変えるのはよくあることですが、Grahamは未だ昔と同じ絶叫スタイルを貫いています。これから先、80歳、90歳も自分を変えずに進んで欲しいですね!

様々なブロガーさんのライブレポ観ているとGrahamはアルバムと同じレベルで歌おうとしてすぐ声が出なくなるなる上に、プロにあるまじきステージングを平気で行うみたいなことが書かれていました。人の感想で決め付けていましたね。決め付けは良くない。やはり自分で聴いてみないと。


○メンツ
Graham Bonnet:ボーカル
Jimmy Waldo:キーボード
Joe Stump:ギター
Mark Benquechea:ドラム
Gary Shea:ベース

オリジナルメンバーのJimmy WaldoとGary Shea復帰はALCATRAZZ感が増して良いとは思いますが、ドラマーのJan Uvenaは戻ってきませんでした。ミュージシャンを引退して就職したそうです。Wikipediaには何と会社名まで載っちゃっています。U.S. Cellular社。

また新ギタリストはJoe Stump。冷や汗が止まらない人選です...。インギと似たスタイルでこの人なのかもしれませんが、彼の作品を聴いたことがある身としては「あのギタープレイを全編で聴くことになるのか?」とイマイチ食指が動かなくなるのが本音です。バークリー音楽院卒業らしく、同じく卒業生ではMike Portnoyを想起させます。バークリーの肩書きが少々安っぽくなってしまう気が...。


そんなこんなで結構ギリギリまで(新品で)買うか迷いましたが、タワレコのポイントカードがもう少しで期限切れになってしまうことに気付き、思い切って買ってしまいました。しかも初回限定版。


ゲストはかなり多いです。

Chris Impellitteri:#1のギターと作曲
若井望:#3のギターと作曲
Donnie Kendall Jones:#4のギターと作曲
Bob Kulick:#8,#12のギターと作曲
Dario Mollo:#10,#14のギターと作曲
Steve Vai:#7の作曲
Don Van Stavern:#1,#2,#3,#5,#7,#11のベース
Steve Mann:#15のブラス

あとミックス&マスターリングを行ったAndyHallerも必要になった箇所でベース弾いているそうです。御覧の通りバンドだけで作ったアルバムではなく、多くの外部インプットやヘルプを取り入れて作られた作品です。プロデュースはキーボードのJimmy氏とGiles Laveryの2名が実施。

まあ外部ソングライター入っているのは別に良いですよ。つまらない駄曲を量産されるより他者が作ってくれた曲を演奏する方がクオリティも高くなるし清々しい。


ただ1番肝の部分が抜けてるというか、ファンが望んでいたものが無いというか...。ブックレットでGrahamが「日本ではAlcatrazz人気が凄い」と言っていましたが、恐らく皆んなが期待しているのは結局インギなんじゃないでしょうか?Grahamとインギの共演が見たいんじゃないの?インギもインタビューで何回か「そういう話は出ている」みたいなことを言っていましたが、結局不参加です。

まあ画竜点睛を欠くような状態ですが、買ったのでとりあえずここ10日位毎日聴きました。以下、当てにならない個人的な感想。


【感想】
作詞は#5以外はGraham Bonnet。

01. Born Innocent
Music:Chris Impellitteri

1曲目からImpellitteri。しかもタイトルトラック。Impellitteriで使っているリフから始まったらどうしようなんて心配は半分的中な感じ。リフというよりピロピロ。サビメロは哀愁があって良いです。ギターソロはImpellitteriお得意のマシンガンピッキングが初めに少しあるだけで、後は勢いより丁寧に弾いてる印象。


02. Polar Bear
Music:Joe Stump

Rainbow、Richie Blackmoreっぽい。ギターの音からキーボードの音色まで雰囲気が似てる。Stump氏のギターソロは早弾きに入るまでは結構良いし、ソロ以外のリードはたどたどしく感じる部分もありますが、総じて頑張っている気がします。嬉しい誤算(苦笑)何気にJimmy氏もきっちり仕事してます。


03. Finn McCool
Music:若井望

なんてブライトなメロディ!3曲目にこれは明確に1stの流れを踏襲しています。若井氏が「Alcatrazzだったらこういう曲!」的な願望をあざとく具現化した感じ。エンディングソロはStump氏が弾いていますが、全部若井氏でいいじゃないですか。


04. We Still Remember
Music:Donnie Kendall Jones

これDonnie氏が作曲したらしいですが、ブックレットだとクレジットがDario氏に誤記されていますね。キーボードイントロからヘヴィかつ哀愁のあるリフ。キーボードが電子音とピアノ音を意図的に使い分けているアイデアはJimmy氏なのかDonnie氏なのか気になるところです。歌メロは普通ですが、キーボードとギターのセンスが光ります。終わり方が急。


05. London 1666
Lyrics:Giles Lavery
Music:Joe Stump

Graham以外が歌詞を書いた唯一の曲。何となく中東風の雰囲気を帯びて走ります。Stump氏のソロはコンパクトに半分位に短縮したらグダらず良くなったかと。あとLavery作のサビメロが何故か後期のIron maidenを歌っているBruce Dickinsonが脳裏を過ぎりました。


06. Darkness Always
Music:Joe Stump

ボーナストラックかつStump氏のインスト。誤魔化しの効かないピロピロを連発。合ってんのか合ってないのか分からんギタープレイが所々炸裂します。現在のインギに匹敵するクオリティ(全然褒めてない)。Jimmy氏の装飾能力で何とか"曲"として踏ん張ってる感じ。


07. Dirty Like the City
Music:Steve Vai

他の楽曲では作曲者が自ら演奏していますが、Vaiは曲提供のみ。Vaiらしく都会的なサウンドで、若干パーティ風味。Jimmy氏の妻さんがセリフで登場する辺り如何にもVai。Grahamが最後に出すファルセットが凄い。昔より声色の種類が増えた感覚になりました。


08. I Am the King
Music:Bob Kulick

サビメロがキャッチャー。ソロが全体的にアラビア〜ン。それくらいか...。


09. Reality
Music:Joe Stump

ボートラその2。これもまたRichie臭のするリフからGrahamっぽい歌メロ。ソロは色気のない早弾き。まあまあ良い。


10. Something That I Am Missing
Music:Dario Mollo

Stump氏に任せてらんないと思ったのか、キーボードがほぼリフをなぞります。ギターソロがちゃんとしてると思ったらDario氏が弾いてるのか。なるほど。正直重苦しいサビがあまり面白くない。またBruce Dickinsonを想起させる歌い回し。


11. Paper Flags
Music:Jimmy Waldo

Jimmy氏、Alcatrazz以前も以降も経歴は全然知りませんが、曲を作れる人だったんですね。失礼ながらそこにまず驚きました。ちょっと時代を感じる音色ですが、キーボードイントロカッケー!ギターソロも長過ぎるが良い箇所はある。


12. The Wound Is Open
Music:Bob Kulick

今度は帯の方にBobの名前が抜けています。ブックレットが正式なクレジットなので、単なるミスでしょう。変な声から始まるミドルチューンで、これも重い。それくらいか。


13. Body Beautiful
Music:Joe Stump

冒頭にギターの独奏があり、それがちょっと良い。それくらいか。


14. Warth Lane
Music:Dario Mollo

まさにAlcatrazz版Spirit Carries On。
なるほどDario氏の曲ですか。ここまでやるかと逆に感心する程クロージング感満載。Grahamがワザとなのか1発録りなのか曲の後半は消耗感半端ない声で歌う。ギターソロがなかなか味わい深いのは、弾いているがDario氏だからでしょう。


15. For Tony
Music:Graham Bonnet

Grahamが亡き兄に贈った追悼のバラード。演奏はブラスバンドとボーカルのみでメタル感は皆無。エピローグ的で良いです。


【まとめ】
Grahamは未だ現役ですね。比較に挙げたRonnieの遺作「Devil you know」より元気だし、ナイスパフォーマンスです。18年前の「System X」より高音出てるかも。唯一無二の声色とボーカルスタイルは素晴らしいです。Jimmy氏も負けじと結構自分出していました。Stump氏は相変わらず余裕が無く苦しいプレイですが、"聴かせる"という点に関しては昔より良さ気な感じ。リズム隊の2人は、まあ無難に仕事をこなしています。

楽曲自体の内容に関しては...まあ「注ぎ込んだ年月とクオリティは正比例しない定義」に該当しています(汗)15曲という長丁場を聴かせきるクオリティは備わっておらず、冗長に感じてしまうのが本音です。点数的には45/100。例えインギが参加したとしても大差無さそう。いや、むしろ今のインギの力ではクオリティアップに繋がるはずが無い!だからこれでいい!



○付録のDVDについて
GrahamとJimmy氏がこのアルバムや過去について色々語っています。ほぼJimmy氏の語り。2人が映され淡々と語りますが、実はゲスト参加した若井氏がGrahamの横に座っています。若井氏は全く喋らず、カメラにたまに一瞬映ります。

興味深い点だけ抜粋。


Jimmy--
わざわざ名前はあげないけど自分のことしか考えていないギタリストは欲しくなかった


→これはどう考えてもインギ様のことですね。はい、間違いありません。


Jimmy--
スターになりたい、自分のことしか考えないギタリストはいらないのさ。名前は挙げないけど、バンドを踏み台にするギタリストは欲しくない


→2回も同じことを言うなんて、余程インギに対して恨み節が溜まっているのかねぇ...。大丈夫です!リスナーですら最近の彼には付いていくのが困難な状況です。まさに天上天下唯我独尊!


Interviewer--
インギのことが頭にあるのでしょうか


→はい。私も受け取りました。このインタビューを見ている人達の心をきちんと代弁してくれました。


Jimmy--
インギはバンドを踏み台にしようと思ったわけではないと思うよ


→えええええ!?

何を急に!?Jimmyのインギに対するフォローのはずなのに、逆に爆弾発言みたいに感じちゃいます。

インギの迷言の一つに『グラハムには何もなかった。曲のアイディアも何もなかったから「これはいい!勝手にやれる!」と思って彼のバンドに入ることにした。これもまた、いい踏み台だと思っていた』があります。

更に辞めた当時を表すセリフに以下があります。

『(インギの)ソロ(タイム)が終わった後は"Since You Been Gone"って決まっているんだ。俺が大嫌いな曲でね。グラハムの栄光の時代の曲だから弾いてやっているだけなんだよ。「俺はRAINBOWにいたんだァ~」って曲だよね。1週間しかいなかったくせに! ま、それで弾き始めると突然ギターの音が止まったんだ。振り向くとグラハムがマーシャルの後ろから出てきたんだ。あのクソヤロウがアンプからプラグを抜きやがったんだ。バカな男は、自分の曲を台無しにしたんだ!ソロは終わっていたから、俺は痛くも痒くもなかったね!あいつはバカだよ!俺はステージにギターを叩きつけたね。因みにこれはライヴの最中にやっているんだよ。「お前なんて地獄に堕ちろ!」って怒鳴ると、あいつは(震えた声で)「いつもお前なんだ!いつもお前なんだ!自分が総てだと思っているだろう!」って言ってマイクを俺の腹にぶつけてくるんだ。「ふざけんな!!」ってステージの端に投げ飛ばして(中指を突き出して)出ていったね。それが終わりだった。(笑)観客の顔を想像できるかい?皆こんな感じ(口をポカンと開ける)だったよ(笑)』

全てインギ談です。グラハムのやり取りがあまりに生々しいので上のセリフを吐いて辞めたのかと思っていたら、控え室で言い争いになったと主張しています。どちらが真実かは分かりません。


Jimmy--
Steve VaiにはDavid Lee Rothバンドも踏み台に過ぎなかったと思う


→マジで!?

上での恨み辛みはインギだけではなく、むしろVaiに向けたものだったんですか。そりゃVaiもアッサリ辞めたのでネクストステージを視野に入れた加入かもしれません。Vaiも本来紳士なんですけどね。インギとは喧嘩別れ、Vaiは何も言わずに去っていった...そんな感じですか。私はVaiが辞めた当時の状況は詳しく知りません。作曲提供のみなのはそういうことか。


以上です。結局ほぼJimmy氏しか喋らず、Grahamはたまにしか喋りませんでした。若井氏は一言も喋りませんでした。インタビューの感想以上です。MVとMVのメイキングは見ていません。



○ Danny Johnsonについて
最後の最後にこの話題で締めるのも変な感じがしてしますが、恐らく日本でDanny Johnsonに興味がある人は1〜2人も存在しないと思われるためこういう措置を取りました。もちろん私も興味が無い側の人間です。Blaze Bayleyですら日本に3人のファンが確認されているのに...(大差無いとか言わないで)。

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今回ネットで色々検索してみたところ、英語版のWikipediaすらありません。誰か作ってよこの野郎!代わりに何とオフィシャルホームページがありました。これ本当に弾いた人と同一人物?

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ありました。間違いないです。「Alcatraz」の文字があります。zが1つ少ないけど。

何よりビビったのが、Rod Stewartの名前が!何故そんな超超超大物が?「Tonight I'm Yours」という作品で1曲弾いています。Alcatrazzに参加する前のことです。Alice Cooperでもやっていました。何気に大物と共演が多い!更にDannyの1億倍以上有名なスーパーギタリストEddie Van Halenにプライベートをプロデュースされたとはどういうこと??

気になってEddieのWikipedia全部検索してみたけど、Dannyの文字は見つかりませんでしたよ?別のDannyのことを言ったのに、間違えて「俺はEddieに私生活をプロデュースされた」と勝手に思っているだけなんじゃないですかね?(汗)

引退されて一般社会人になったとばかり思っていましたが、お元気そうで良かったです。ちなみに彼の参加した「Dangerous Games」は聴いたことないです。今回も不参加...(汗)