どうも貧困メタラー枯林です。

ブックオフやディスクユニオンで巡り会うその日まで待つつもりでしたが、もう我慢の限界でした。ここ最近のラプソ欲が止まらず、気が付けば密林をワンプッシュ!

この手軽さは気付けば借金に突入してしまうFXや株に通ずるものがあり、すぐに売買契約が成立してしまうこの世の中は果たして如何なものなのでしょうかと便利な反面恐ろしさを感じています。

自分で言っておいてなんですが、今はどうでもいいですそんなこと。

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分家Of fireが2019年2月に「The Eighth Mountain」をリリースし、まるで当て付けのように2019年7月に本作「Zero Gravity (Rebirth and Evolution)」をリリースしたように思えてしまう経緯があったりします。色んなアーティストを聴いてきましたが、ここまで確執が表面化した状況を久しぶりに目の当たりにした気がします。好敵手関係なら別に良いですが、第3者目線では争っているように見えます。

友好的な別れと表では語っていても、裏ではきっちりわだかまり残していたLuca氏とAlex氏。原因はわかりませんが、Alex氏がLuca氏&Fabio氏との無印RhapsodyのFarewellツアーに加わらなかったことと、そのツアー中に「俺達こそがラプソだ!」と言わんばかりにこれまた微妙なリメイクアルバムをリリースしたからか、Luca氏としては飼い犬に手を噛まれた気分でしょう。「Alex Staropoliの分際で!」という声が聞こえてきそうです。まあタイミング的には全て分裂後のことなので、分裂当初は本当に友好的だったのかもしれません。

この作品では本家の矜持を見せたかったようで、レコーディング費用を過去の作品と同じレベルまで上げるためクラウドファウンディングでお金を集めて作成を行なう気合の入りようです。

とにかく、再びLuca氏と勇者Fabio氏は手を取りバンドを組みました。その名も「Turilli / Lione Rhapsody」です!そう、Rhapsody...ではありません。残念ながら。

なぜこんなネーミングに...?

いっそのこと無印Rhapsodyを名乗ってしまえばいいのに。彼等にはその資格も実力もあります。Turilli / Lione Rhapsodyってアンタ...。それならもう昔使用していたLuca Turilli's Rhapsodyでよかったじゃない。

まあライナーを読む限りでは、Farewellツアーが想像以上の盛り上がりをみせたので「もう一儲けしようぜ!」と手を取り合って結成された感じは否めません。Luca氏は前作を最後にメタル音楽から離れてアコースティカルな方向性へシフトする考えがあったそうですし。が、どんな理由であろうが作り出されたものが優れていれば良かろうなのです。


-メンツ-
Luca Turilli - Guitar、Keyboard(1stから参加)
Fabio Lione - Vocal(1stから参加)
Dominique Leurquin - Guitar(5thからゲスト)
Patrice Guers - Bass (5thから参加)
Alex Holzwarth - Drum(3rdから参加)

流石本家Rhapsody。Pachimon of Fireとは訳が違います。8thアルバム以降のメンバーが揃い踏みで、まさに正当なRhapsodyと呼ぶに相応しい。

Luca氏、作詞作曲だけじゃなくてコーラスやオーケストラアレンジ、果てやキーボードも1人でやっているんですね...。才溢れ過ぎ。Of FireのAlex氏の存在意義って一体何だったのか...。実際はLuca氏の作った曲のオーケストラアレンジをしたりキーボードソロを足すレベルの関与で、音楽の骨子にはほぼノータッチだったのかもしれません。


本作のリズムギターパートはDGMのSimone Mularoniさんなる方が弾かれております。2ndソロと同じやり方です。Luca氏、ギタリストであることにあまり拘りが無さそうですね。技術はかなり凄いんですが、それを主張しない姿勢は近年ますます俺様ジャイアン化するインギーとは一線を画しますな。インギも少しは見習って下さい。

ちなみに初回限定版はTシャツ付き5000円超え。当然Tシャツなんて要らないので通常版。2枚組ボートラ付きとかなら迷わず初回限定版にするんですが、Tシャツなんていらん。In flamesのBattlesで懲りました。一回も着てないどころか出してすらいない。


【kansou】
01. Phoenix Rising
いつものオーケストレーションにサイバー感あるキーボードときちんとしたギターリフが!リズムギターはSimoneさんが弾いているそうですが、リードはLuca氏がプレイしているのでしょうか。歌メロはこの作品の中では従来のラプソっぽい気がします。

中間部では女性のスキャット(?)が入りピロピロとメロディを混ぜ合わせたソロの後にキーボードの早弾きまで!大した方です。


02. D.N.A. (Demon And Angel)
AMARANTHEのElize Rydさんがデュエット。女性とデュエルしてる時点でかなり攻めてますね。トランス風キーボードとギターリフとユニゾンしています。リズムギターはこれまでのラプソと比べると太くて重い。メロディとノイズって、SUGIZOやん。ソロではピロピロ成分を控え目にネオクラシカルに決めます。歌メロも印象的。


03. Zero Gravity
これまた淡いトランス風シンセがイントロからピロピロ。STRATOのアルバム「NEMESIS」が浮かぶ。あの作品での変化も含めて。

タイトルトラックだけあってかなりの破壊力!アップテンポ(だと思います)で、余裕のある艶やかな中音域サビメロが素晴らしい。また最期のサビでは少し歌メロを変えているのがこれまでの彼ららしくない拘りが感じられます。中間部に呪術的な民族チックなパートを挟み、まさに夜明けのようソロ。隙のない構成です。


04. Fast Radio Burst
これもサイバートランス風のキーボードリフ。ラプソでは無かった(?)変拍子を使っています。エフェクター処理しているものの、本作で唯一Fabio氏のグロウル気味の歌唱が聴けます。ソロパート時に変拍子が盛り込みますが、拍を減らしたためか疾走感と躍動感が生まれます。カックイイ同じメロディを繰り返した後、この作品は一体どうしたの!?なギターソロも飛び出す。Luca氏ラプソでの残念なピロピロは一体なんだったんですか、出し惜しみ?


05. Decoding The Multiverse
ピアノでしっとりしていたのにノイジーなギターリフが対比的。バースでは静かにタメて、サビメロでは爆発とまでは行かないもどかしさを感じます。ただユニゾンしているキーボードはとても良い。

中間部のクイーンを彷彿とさせるパートが。間髪入れず炸裂するギターソロが滅茶滅茶イケてるだとぉ!?と思ってたらSimoneさんが弾いていました。本作唯一の裏打ちパートが出てきます。ほとんどの人が全編この速さの楽曲を望んでいるのでしょうかね。ギターソロの終わりにキーボードの速弾きソロで被せてなんとか美味しいところ持っていこうとするLuca氏。凄い速弾きですな。多才な方だ。


06. Origins
曲てよりinterludeですな。オーケストレーションに鬼気迫るクワイアが絡みつく。終わり頃にこれまた脱力したFabio氏の声。変わってる...。


07. Multidimensional
前曲とは関連性無さそうなキーボードリフで始まり、だんだん上がっていくバースは息継ぎが大変そう。女性声とユニゾンするソロの最中「俺はギターだけじゃねぇぜ!」と主張するキーボード速弾きが。あんまり面白いソロじゃない点は残念。他の曲に比べるとバース以外はちょっと弱い。


08. Amata Immortale
こういうの、古参のファンはどう感じるのでしょうか。私は素晴らしいと思いました。もはやギターすら使わない。Luca氏の一朝一夕では無い流麗なピアノプレイとFabio氏の通常声とオペラ声を半々くらいに混ぜたハイブリッドチックな唱法がとにかく最高!メタルであるかどうかなんて些細なことですね。なぜかオーケストラのメロディでドラクエが脳裏に浮かんだ。


09. I Am
DGMのMark Basileさんとデュエット。
イントロからまた同じようなキーボードが入りますが、リードはギターが取っています。なんとアダルティックなサックスみたいな音も入ってきます。クレジットが無いのでサンプリングかもしれませんが、新しい風を投入し、それでいて違和感がない。間奏部分もミュージカル調でまたまたクイーンぽい。歌メロなんて、少々スペイシーですが勇壮じゃないですか。

ソロはSimoneさん。バカテク集団DGMのギタリストだけあり、ソロ開始時にインペリテリみたいな超速弾きから途中でキコみたいなプレイも飛び出します。DGMはTaniさんで止まっている身なので初Markさんですが、別に要らなかった気がします。スパイス程度。


10. Arcanum (Da Vinci’s Enigma)
クワイアにデジタル音が絡み付くイントロから始まります。タイトルにはエニグマですよ。なんとなく全編でEnigma的なグレゴリオ歌唱が入っている気はしていましたが、ここで脳味噌が勝手にリンクして困っています。まあそんなことは置いておき、ラストに相応しい劇的な曲調!もちろん最高!これを聴いて文句言う人の気持ちがわからん...でもないですが、足されたものと引かれたものを考えればプラマイ超プラではありませんかね?え、違う?そうですか、ごめんなさい。


Bt. Oceano
Sascha Paeth氏とAVANTASIAのArne Wiegand氏がお手伝いしていますが、ボートラ。これまた日本のドキュメンタリーに使われそうな(Adiemus的)壮大さですが、他の曲に比べるとクワイアが薄めで存分にFabioの歌が楽しめます。ボートラのクオリティとは思えない出来!確かに本編には入れる場所は無いと思いますが、収録してくれて感謝です。


【matome】
全体的に即効性が薄く感じられる方がいらっしゃるのは事実だし私自身少しそう感じましたが、そんな感覚は直ぐに吹き飛んでしまいました。

Luca氏が作った世界観なのに、散りばめられたデジタルチックなシンセ音や装飾が「なんか新しい!」と珍しい感覚に陥りました。この期に及んでLuca氏の作る音楽に新鮮味を覚えさせられたのは驚きです。似たような要素はLuca氏の2ndソロでも多少導入されていましたが、ここまで大胆に取り入れることの冒険心には惜しみない賞賛を送りたくなります。アルバムとしての纏りも統一感もあり、文句無しに素晴らしい。

ただ「かつての疾走勇壮ラプソディ」を期待していた無印Rhapsody時代のファンなんかには受け入れ難い内容かもしれません。無印とは程遠く、根本的にメタル感が少々薄め。デジタルシネマティック or オペラメタルとも言われ、ヒロイックな展開やメロディはあまりありません。

冒頭で無印Rhapsodyを名乗ればいいと言いましたが、なるほど...こんなアプローチをするのならこの名義でもありでしょう。もはやOf Fireの方がかつてのラプソらしさがあります。

私個人は「アーティストは良いものを作れるのであれば、ファンが期待するものを作る必要はない」ことを念頭に漫画や音楽に臨むので、滅茶苦茶気に入りました。他の方々の感想を読むと批判的なものが少なくないですが、個人的意見を言えば「一体これのどこに文句付けるんですか!?」と言いたい。過去の作風に囚われなければ、凄まじいクオリティですわ。100点満点中80!


にしても凄いのはLuca氏でして、オーケストレーションやキーボード装飾もお手の物!冗談抜きに無印Rhapsody時代にAlex氏は一体何をしていたんですか状態。全く困った様子も伺えません。作曲能力は抜群なのに、なぜかギターソロ作成能力は残念Luca氏ですが、本作では全体的にかなり気合が入っています。④と⑨でSimoneさんが弾いているそうですが、他の曲でも弾いてんじゃね?なんて失礼なことを考えてしまいました。

Fabio氏も個人的にこれまでのベストワークなんじゃね?と感じる白眉の出来。全体的にハイトーンは控えめにし、中音域とオペラ声で余裕を持ったパフォーマンスが堪りません。また一段階表現力も歌唱力も増した気がします。一刻も早くAngraを脱退してこちらの活動に専念すること!としつこく言ってみる。

かつての音像は分家に任せ、本家は新たなる道を歩む。デジタルオペラメタル...意味がわからんですが、それらの要素を融合させた面白いジャンルです。次作があるなら、是非また冒険して下さい!




え!?

本家と分家が逆ですって!?

まあ、いいじゃないですか、そんなこと。

いいと思っておられない方がいらっしゃったらごめんなさい...。The eigth mountainは個人的にはまあまあでした。