どうも貧困メタラー枯林です。

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5年ぶりの新作です。6th。

ギターのJimが「新作は何年も空けたくない」と2016年くらいに動いていたのに、結局はあまり変わらないスパンでの発表となりました。

前作に引き続きこの5年間の道中も彼等にとっては決して楽なものではなく、今年に入ってパーカッションのChrisが金銭的な問題で脱退。

スリップノットはかつて「9人の絆」を前面に押し出したバンドでした。大所帯にも関わらず、メジャーデビューの1999年から2010年までは1度もメンバーチェンジが起こらなかったある意味奇跡のバンド。

環境の変化とメンバー間の蟠りも乗り越えて3rdがリリースされ、メンバー全員が草むらで佇むジャケの4thと、見ている方も結束力の高さを窺い知ることができました。

それが今では欠員が出たら順次新メンバーを加入させるアイドルグループになりかけています(汗)ショーンも「次作が俺に取って最後になる気がする」と言っている以上、このアルバムの一連の出来事が落ち着いたら脱退を自ら選んでしまうのかもしれません。

AKBやモー娘。等のように、メンバー入れ替え性バンドになってしまうのは個人的に嫌なので、それならこの作品を最後に潔く解散するのもありではないか?CoreyとShawnのシンドイ宣言や、Jimが首と腰を手術したりと確実に終わりが近付いているように思えます。とても悲しいですが。

以下、現メンバー

(#8) Corey Taylor 以下コリー
(#7) Mick Thomson 以下 ミック
(#4) Jim Root 以下ジム
Alessandro Venturella 以下アレッサンドロ
Jay Weinberg 以下ジェイ
(#6) Shawn Crahan 以下ショーン
(#0) Sid Wilson 以下シド
(#5) Craig "133" Jones 以下グレイグ

海外のWikiより。もうメンバーの番号は1〜3まで欠番なので、他のメンバーのナンバー表記も無くしてしまってもよい気もします。正式にはどういう形なのか気になりますが、ブックレットにはメンバーの固有名詞すら出てきませんでした。凄いことだと思います。

パーカッションの欠員に新メンバーに下記一名が追加。

Tortilla Face - percussion

トルティーヤマンだそうです。まだツアーのみでレコーディングには参加していないそうです。ブックレットに顔は載っています。

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で、今回の作品に対してバンド側は「バンドの持つ要素すべてが注入され、いい意味でファンの予想を裏切る作品にしたかった」というメッセージを添えていました。

変化することを否定するつもりは全然ありません。例えばIn Flamesなんかは、初期のメロデス時代より現在のメタルコア〜オルタナティブメタルの方が好きなくらいです。

唯一やらないでほしいのが、その他のプロジェクトと同じ方向性の音楽。これは擁護出来ないし、するつもりもありません。ここで言いたいことはよく言われるStone Sourとの類似性。明示的な方向性の違いを提示してほしいものです。


今回通常盤のみのリリースですが、何年後かにスペシャルエディション詐欺が炸裂するのかなぁと今から震えが止まりません。それでも買わずにはいられない哀れなファン。


【個人的カンソウ】
1. Insert Coin
ゲーセンでお金を投入するシーンをイメージしている雰囲気...といえるのか?電子音がかなり良い。普段は見失いがちになるパーカッションがいきなり大活躍。噂のトルティーヤマン?

2. Unsainted
5thからそれ以前にあったトゲトゲしさが薄れ、今回更に洗練された印象を受けます。神々しい高音のコーラスまで入ったビッグな展開を見せます。

正味な話をするとこれまでスリップノットは2曲目に破壊力のある曲を置くのが伝統みたいになっているわけですが、メタルコア的なサビが少々弱めな気がします。ただそれ以外の重低音や疾走感が凄いので、サビはアッサリで正解かも。

3. Birth Of The Cruel
パーカッション?から始るのが珍しい。クリーンボーカルがメタルコアで、ストーンサワーチック。

4. Death Because Of Death
ノイズとパーカッションのインタールード。これを広げて1つの楽曲にしたら面白そう。

5. Nero Forte
イントロ部分がスリップノットっぽい。ボーカルメロディがリズミックで、かつてのジョナサン・デイビスを思い起こさせるのニューメタル成分多めのボーカルが懐かしい。ライブ演奏において、サビメロはクリス亡き今、誰がグロウルを担当するのか気になるところです。

6. Critical Darling
リフはスリップノットっぽくていいが、サビはやはりクリーンのメタルコア方式。しかも⑤と少し似た系統。③も同系統と言えなくもない。少々曲順が悪いかも。曲名と曲の一致に時間が掛かりました。終曲後、SEが続きます。ため息で終わっておけば...。

7. A Liar’s Funeral
本作で1番ピンときました。こういうスローな曲で重いギターがよく合います。葬式とは上手く言ったものです。ソロとは言わないまでも、各所に挟まれるギターメロディが素晴らしい。アコースティックに始まり、アコースティックに終わる締め方も良い。

8. Red Flag
激しい。けどリフ以外あまり印象に残らない気が...。Negative Oneの焼き直し的ポジション。

9. What’s Next
後ろの曲へ繋がるインタルード。

10. Spiders
ショーン作。こういうのはストーンサワーかコリーのソロでやってもらいたいですな...。

そんな愚かなファーストインプレッションでした。今では怪しい歌メロ、ノイズ寸前のムーディーなソロ、中間部の「スパイダーズ、スパイダーズ、スパイダーズ、スパイダーズ、スパイダーズ」のボイス裏で不協和音電子音が狂ってて最高過ぎです。狂気をきっちり感じます。

11. Orphan
サビでスピード落とすメタルコアのセオリーは何とかならんもんですかね。たまにならいいんですが、毎回これだと芸がないというか...せめてサビでスピードを落とさないとか。そう感じてしまうのも、かつてのスリップノットはもっと工夫するバンドだった気がしたから故の贅沢な思考です...。

12. My Pain
全然メタルではありません。が、ここまで異質な雰囲気だと逆にスリップノットっぽい思えてくるから不思議。ただ似たようなことはLinkin Parkが9年前位にやっています。

13. Not Long For This World
イントロのペンペン鳴ってるギターはいい感じ。サビはストーンサワーですが、パーカッションとスクラッチ等で独自の味付けを施しており、中々良い塩梅。これも後半SEが入ります。謎。

14. Solway Firth
勢いだけで流れていっちゃう感じ。耳に引っかかる要素があまり無い。これが締めですか...?

これまで歴代の作品は、1stのおどろおどろしい前半から後半狂気のボーカリゼーションとドラミングが凄じいScissors、2ndの気怠くも圧倒的な世界観と暗黒感を味わえるSlipknot最長曲のIowa、3rdの燃え尽きたような脱力感とメロディが見事に融合したDanger Keep - Away、4thのアルバム全体のダウナーな雰囲気を吹き飛ばす核爆弾のようなAll Hope Is Gone、5thのメロディアスながらも陰鬱で地獄の底にいるような曲調のIf Rain Is What You Wantと、どれもこれも強烈でした。このシメ方には疑問符が浮かびまくり。今までのスリップノットで言えばラスト手前に配置されている印象の楽曲。単純に曲が弱い。

Bt. All out Life
先行公開されたものですが、ボーナストラック扱いです。外されたのはパーカッションにクリスが参加している影響が多少はあるかもしれません。ブラストビート部分のギターがカッケー。サビの合いの手「ハァイ!」がちょっと面白い。

これをラストにした方がアルバムが締まる。


【個人的まとめ】
ももクロの5thを聴いている気分でした。

攻めてはいますが、5thの唯一無二感が薄くなり聴きやすい方向性を継承しています。悪口に聞こえそうですが、いい意味でその分リスナーの間口が広がる予感はあります。事実これまでヘヴィロックを聴かない知人から「なかなか良かった」とラインが着ました。

ただ前述した5thはバランスがとてもいいと感じたのに、本作は...なんとも言えない。ようは、コリーの「Iowa並みにヘヴィ」発言を体現すべく意図的にヘヴィな曲を作ろうとした部分にあるのではないでしょうか。個人的には完成度としては一歩劣ります。

Amazonレビュー読むと絶賛している方が多いですが、私は最初の1週間は全ッッたく頭に残りませんでした。垂れ流して電車に座っていたら、気が付いたらループしている程。最近になってようやく全容が掴めました。


あと上の感想でメタルコアがどうこう言っていますが誤解なきように、メタルコアを否定しているわけでなく、あれはあれで好きなジャンルです。しかし(私の知っている段階での)Killswitch Engage並みの激メロならともかく、即効性が低めなサビメロが続くと、インパクトも薄い。激メロにしないのは敢えてでしょうが、今回はあまりプラスに働いていないような...。

少なくとも「初めてスリップノット聴くんだけど、どのアルバム聴いたらいい?」の問いを受けた場合に薦める作品にはなり得なかったかな、と私は思います。


○ボーカル
コリーが全ての歌詞、歌メロを作ったそうです。歌詞はともかく、歌メロ作りは他のメンバーも介入した方がより良いものが作れるような気が。そもそもストーンサワーもスリップノットも同じ人間が歌メロと歌詞を作ったら、似るに決まっています。かつて作曲の要だったポールとジョーイはどこまで関わったのか比率が知りたい。

そんな創作面に反して、コリーのボーカルは絶好調。3rdであれだけ弱っていたのが嘘のよう。5thから全ての面でアップグレードしています。


○ギター
リフが似たり寄ったりな気が...。ジムがインタビューで「ソロを入れる箇所をSpiders以外で作っていなかった」と語っていましたが、元々スリップノットはソロを無理に入れなくてもいいと思います。


○ドラム
前作より多少自己主張が増した印象を受けます。ツーバスが増えました。しかしそれが逆に単調な感じ。


○パーカッションとDJ
今までと同じく、引き立たせます。でもパーカッションは活躍の場が増えていますね。


○サンプリング
アルバムにおけるグレイグのポジションがよくわかりませんが電子音やピアノ音は全て彼の担当ということでオッケー?だとしたら、かなり活躍しています。All Hope is Goneのメイキングでピアノを弾いていたのは誰だったか。グレイグだったらもっと本格的にピアノを入れても良かったかも。


以上、少数派意見でした。


【蛇足】
現在ではジムとコリーが音楽的主導権を握っていますが、やはり私にとってスリップノットとは、ほとんどの曲を作っていたジョーイとポールの2人だったんですね。隙間を見つけては手数足数を叩き込む自己主張の強いソングライティングが懐かしい。前作から既にそうですが、メインソングライターが代わってかクオリティはともかく質感がガラリと変化しました。

ちなみにジョーイは復帰したがっているそうです。スリップノットの未発表曲を沢山持っているとも。クリスが脱退した際にジョーイも本格復帰させる手もあったのでは。ドラムは健康なジェイに任せ、パーカッションとして復帰するとか。

この際こんなメンバーで新生Slipknotを結成してみては?StratovariusがTolkiから実権を他メンバーに譲渡したように!

Vocal 新ボーカル
Guitar Mick
Guitar 新ギター(またはJim?)
Bass Alessandro Venturella
Drums Jay Weinberg
DJ Sid
Sampling Graig
Percussion Joey(復帰)
Percussion Chris(問題対象が辞めたから復帰)



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オマケ
 

1.Slipknot (1999)

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衝撃の1st。Slipknot がニューメタル界のリーダーと言い切るに申し分のない超名作!所謂ラップ・ヒップホップ成分の含有量が高い作風に世間と私は衝撃を大きな受けました。ミドル&スローチューンも存在するものの、全編通して聴くと疾走感に溢れています。前半はどれもこれも個性的且つ破壊力抜群!特に⑥は「こんなのアリ!?」とリアルに声を出してひっくり返ったのを覚えています。こりゃ唯一無二ですわ!

後半は勢いはあるものの少々インパクトに欠けるのは否めません。しかし最後の曲は別世界。鬱蒼とした曲調に圧巻の怒号ボーカルと悶絶ドラムソロ。最高!

当時考えもしなかったことですが、ゲテモノマスクやテキトーな豚マスクなどのアンダーグラウンド臭が漂うメンバー達の中に、1人トゲトゲしたマスクが印象的なグレイグ氏にセンスを感じています。ゲテモノ集団にに1人だけインテリが混じった感覚です。

【My Top 3 Tune】
・(sic)
・Eyeless
・Spit it out

86 /100点
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2.Iowa (2001)

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デスメタル並みのアグレッションを持ち味のキャッチーさと高次元に融合した作品になりました。音質も手伝ってか、ヘヴィさは文句無しにSlipknoT史上No.1。

前半は激烈チューンで押し捲り、後半はオドロオドロしさで押す構成は1stと共通するものを感じますが、前作の大きな魅力であったラップ・ヒップホップ成分が抑えられております。その分ヘヴィになったと言えますが、デスメタル方面に割合を振り過ぎたためか、オリジナリティは1stに軍配が上がります。

【My Top 3 Tune】
・People = Shit
・Disasterpiece
・Metabolic

84 /100点
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3.Vol.3: Subliminal Verses (2004)

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暴虐轟音路線から少々外れて聴かせる音楽としての側面を備え始めた新機軸。曲のバリエーションが多く、それでいてきちんとまとめているのは流石の一言。

クリーンボーカルも大胆に取り入れ、ギターソロまで導入されました。後者に関して効果的なものから無意味なピロピロまで曲同様に様々。全体的にメロディアスになったものの、禍々しさは相変わらずです。また音質は雑誌やバンドマンの友人等は絶賛していますが、私は篭ってて好きじゃない。

作品毎に声が違うコリー氏ですが、本作では弱体化が著しいです。Slipknotは今年でデビュー20周年に辺りますが、恐らく一番コンディションが悪い時期です。

【My Top 3 Tune】
・Vermilion
・Vermilion Pt.2
・The Nameless

82 /100点
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Live.9:0 Live (2005)

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デビュー以来急激に巨大化したバンド。それに伴い様々な柵が生まれ、メンバーはフラストレーションを溜め込み解散寸前まで行きました。

再び結束を固めて作られた3rdは見事な出来で息を吹き返しました。本作はその3rdに伴うツアーのライブアルバム。長いツアーで多くの音源を撮り溜めし、ベストトラックだけを集めたとか。映像作品と違い音だけなので出来るやり方です。

2ndのツアーDVDが素晴らしい出来だったので、当然この作品にも大きな期待を寄せておりました。直前で初回限定盤が発売中止になったのもよく覚えております。中止はもうちょい早くアナウンスしてよ...。

しかし蓋を開けてみれば、Coreyのキャリア中最も弱っていた時期のライブ集に。本人達は意図していたかは分かりませんが、リスナーとしてちょっと残念な仕上がりとなっております。彼等のライブは2008年のラウパと2016年のノットフェスで拝見しました。こんなもんじゃなかったです。

聴きどころは The NamelessでのChrisとのツインボーカル、Get Thisで露骨に下げて歌っているのに最後ちょっと頑張る箇所、アルバムスタート時のThe Blister Existsにおける遊び心。

3rdレコーディング中に飲酒を止めたというCorey。「毎日声が良くなっていった」と自画自賛していたわけですが、3rdは1st、2ndに比べ軽くなった印象しかありません。

飲酒と歌の関係は知りませんが、ZIGGYのボーカリストさんが先輩に「良い歌を歌うためには酒だ」なんて伝えられ、寝る前の飲酒で実際最初の内は上手くいっていたそうです。その後酒の量が増えていきアル中の道を辿りますが。

また故Joeyの「スネアパコンパコン問題」もあります。なぜこんな音なんでしょうか?本人が亡くなってしまったので真相は闇の中。

【My Top 3 Tune】
・Everything Ends
・Purity
・The Nameless

64 /100点
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4.All Hope Is Gone (2008)

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疾走感を更に減らし、よりメロディアスになりました。商業的な成功を収めた作品の続編ではなく、よくぞここまで積極的に作風を変えられるものだと感心します。個人的にはもっとBPMを落として徹底的に遅い作品にしてしまったらより個性的な作品になったかと。

ただメンバー間は作品の出来に関して温度差があり、後年にはギターのジムが本作にあまり納得していない発言がありました。それが潜在的に反映されたのか、ほぼ4曲しか演奏されなかったりと扱いが悪いのは悲しい。インタビューを読む限り、ジョーイ色の強い作品だったと言えるのかもしれませんね。

心配されたコリー氏のボーカルですが、発生を変えてよりデスボイスっぽくなりました。お陰でパワー的には盛り返した印象を受けます。

【My Top 3 Tune】
・Psychosocial
・Gehenna
・All hope is gone

80 /100点
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5..5: The Gray Chapter (2014)
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メインソングライターを2人も失った中、ギターのジムが中心となり作られた本作。欠けてしまったピースの代わりを見付けようと、傍観者に近かったであろう他のメンバーも本気を出したかのようなパワーがあります。

このバンドは方向性がコロコロ変わるため一見いつも通りと自己解決出来る内容のような気もしますが、本作は「2人がいなくても出来るんだ!」と示すことが最優先になり、全体的な出来として散漫な印象を受けます。これまでどの作品もきちんと芯があったため、初めてコンセプトを決めずに出来た曲を収録していった感じ。これまで何かしらのテーマを持った作品ばかりであったので、メインソングライターが居なくなった違和感を埋めるのは並大抵のことでは無理なのかもしれません。

【My Top 3 Tune】
・Sarcastrophe
・Nomadic
・If Rain is what you want

76 /100点
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6.We Are Not Your Kind (2019)
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本作。

【My Top 3 Tune】
・Unsainted
・A Liar’s Funera
・Not Long For This World

70 /100点
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