どうも貧困メタラー枯林です。

IN FLAMEの13thです。こんなに早期に出るのは完全に予想外でした。



なんせ4thから参加していたベースのPeter Iwersが脱退、更には前作で加入したドラマーのJoe Rickardも早々に脱退し、残されたメンバーはボーカルのAnders Fridén、ギターのBjörn Gelotte・Niclas Engelinの3人だけ。

2010年からギターのJesper Strömbladが脱退してから丸9年でAnders FridénとのBjörn Gelotteの2人以外全員脱退してしまうこの非常事態...。まあ色々思うことはありますが、結局この2人が居ればIN FLAMESなのです。もちろん異論は認めます。


今回先行配信は3曲。
そのどれも私は敢えて聴いていませんが、視聴した方が某サイトにて「Come Clarity以来の傑作になりそう」と書き込んでいるのを見て、な〜んか嫌な予感が止まらなくなりました...。更に某有名CDショップの解説を読むと下記のように記載がありました。

『メタル・シーンに革命をもたらしたイエテボリの奇跡=イン・フレイムス、前作『バトルズ』以来 約2年半ぶりとなる最新スタジオ・アルバムが完成!ここ数作では鳴りを潜めていたアンダース・フリーデンのグロウルを大々的にフィーチュア、メロディアスかつキャッチーでありながらも重厚感と疾走感を両立した復活作!』


...次はそろそろ非疾走ノーグロウルアルバム来るか⁉︎と昨今の変化を踏まえた上で前向きに身構えていたのに『過去の武器』を大々的にフューチャーですか。某サイトにあった疾走感の記載と前述した某サイトの書き込みから察するに、少し前の音楽性に揺り戻した作風?

過去と同じような作品を作ることを良しとはしないとBjörn氏は言っていたのに、まさか前作のUSチャートアクションが60位と大幅に下がったから若干音楽性を昔に戻してしまったんですか!

前作のBATTLES、前々作のSIREN CHARMSが滅茶苦茶気に入っていただけにそれはちょい待ちと声を大にして言いたい。確かにCome Clarityは世間的にも個人的にもNo.1の名盤ですが、せっかくメロデス路線からオルタナティヴメタル路線に見事な変化だったのに...。

IN FLAMESに対して未だに「メロデスやってくれ」とおっしゃる方が居るのも知っていますし、気持ちも分かるんですが、それなら1stから5thまでを聴けばいいじゃないですか...と元も子もないことを言いたくなってしまう。


で、音楽性問題の他にもう一つ問題がありまして。そもそもメンバー自体ちゃんと固まってなくない?ドラマーのJoe Rickard辞めちゃったんじゃないの?何故こんな再建すら終わっていないタイミングで新作発表?またJoe Rickard氏みたいなテキトーな人を入れたらすぐ辞めそうです。

その辺りのことはライナーノーツには殆ど載っていません。ただ単に現在の正式メンバーが載っているだけ。今回のライナーノーツ、あまり興味深いことが書かれてないですね。今時CD買うメリットなんてライナーとブックレットしかないんだから、こういう所に力入れろやコノヤロー!と文句言ってみる。

強いて言うなら「Andersが短期間ながらボーカルレッスンを受け、ハイトーンが強化された」の部分。前作でもHere until foreverやSave meでかなりの高音を細くなり過ぎず出せていたので、更にパワーアップしたとなれば大変楽しみになります。


現在のラインナップ
Anders Fridén -Vocal
Björn Gelotte -Lead Guitar
Niclas Engelin -Rhythm Guitar
Bryce Paul -Bass
Tanner Wayne -Drums

クレジットページの字が小っさ!

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わざわざギタリスト2人に役割を明示した理由は何か理由があるのか。ドラムは前任者のテイクも使用しているらしいです。それなら細かくどの曲がそうなのか書いておいてほしい。

May the force be with youの記載は見付かりませんでした。前作はどうだったか、今度実家帰ったら確認してみます。



【適当な感想】
01. Voices
Dir en GreyのSa birと間違えそうな低音イントロからグロウル。Bメロでのシンセが中々劇的で良い。


02. I, The Mask
先行公開されたファストナンバー。なるほど。「In Flamesの作品なんだから疾走曲は1曲位は必要」と安易に作られた感アリアリな最近の疾走系と違い、スピードに必然性を感じる。ブリッジをサビと勘違いし、久々にテンポダウンしないサビメロ来たか⁉︎なんて嬉々としたのも束の間、サビはキッチリ歌いやすいリズムへ。疾走パートのリフが没個性的で弱い。あとこのスピードのツーバスが入ってるのは珍しい。


03. Call My Name
2曲続けてアグレッシブ。ライナーで紹介のあった「ハイトーンをフューチャー」した曲。う〜む、前作とあまり変わりがない気がする。これがライブで再現出来たら大したものですね。


04. I Am Above
先行公開されたミドルチューン。あまり来るものがない。


05. Follow Me
正直埋もれちゃってる感があるものの、如何にもIN FLAMESなギターソロが良く出来ています。


06. (This is Our) House
今回の変わり種その1。イントロで...どう言えばいいんだろ、何かの反対運動している団体の糾弾を表したかのような過激なコーラスはかなり狙い過ぎ感が漂っています。しかしそれ以降は絶品。力強いBメロから打って変わりサビではエモーショナル。サビ裏のギターメロも上手くボーカルラインを強調するように弾かれます。曲の最後にも冒頭のコーラスは出てきますが、こちらはイントロよりは不思議と違和感なくハマっている。


07. We Will Remember
多少印象に残るリフとなかなか良く出来た歌メロを備えていますが、次の曲が素晴らしいためか頭に残らない可哀想なポジションに落ち着いてしまった印象。かなりヘヴィでいい感じなんですけどね。


08. In This Life
まあ⑦で言った通り素晴らしい。このリフなんてメロデス時代のファンも結構気に入りそうな叙情メロディじゃないですか。歌メロ良過ぎだろ!こんなのアンダース氏に作れるとは思えないけど、泣ける。プロデューサーのHoward氏の力によるところが大きいのかもしれんが、この際細かいことはスルー。ソロも短いながらも良いです。文句付けるなら、終わり方がアッサリ過ぎて余韻が無い。


09. Burn
イントロのリフはなかなか良いですが、疾走パートのボトム部がスカスカでスネアだけ走ってるように聴こえてしまいます。後半ほとんどミドルなので、もうちょい徹底してほしかった。


10. Deep Inside
これも変わり種か。中東系メロディのシンセが流れ始め、同じリフが弾かれます。それ以降は中東全然関係ないオルタナティブメタルに(汗)3回目のサビだけ、本作で唯一サビがグロウルで歌われます。ギターソロでアップテンポ気味になるパートは個人的には不要。


11. All The Pain
イントロはボーカル、そしてまさかのピアノで静かに始まり悲壮感たっぷりの最高のメロディを聴かせます。するとなぜかメタルチックなパートが躍り出て雰囲気を壊す。ギターソロも音が曲調から浮いてしまっていますし、フレーズも面白くない。現時点では、メタルパートとギターソロを省いてくれたら素晴らしい!という結論に着地。


12. Stay With Me
これまた最高のクロージング。既聴感が無いと言えば嘘になりますが、このアコギリフは魅力的です。タイトルを合いの手が入るんですが、これライブでどう再現するんだろ?IN FLAMESは他のメンバーがコーラスしないバンド。とうとうコーラスしちゃいますか?多分しないでしょう。終盤は冒頭のアコギリフをエレキに変えて同じフレーズを弾く辺りがニクい。電子音が合いの手も絡まり、最後の最後にグロウルでアウトロを劇的に彩ります。


○ボーナストラック
13. Not Alone
てっきりボートラは少し前にリリースしたカバー集が付くとばかり予想していたんですが、残念です。肝心の内容は、なんかお経みたいのが続く展開が新しい。ギターソロが本作品で一番凝ってる。ボートラなのに。



【構成と作風】
「Come Clarityを彷彿とさせる作風」

上記はステキな勘違いであり、先行公開されていた楽曲は過去のリスナーに興味を持たせる撒き餌として誇大広告に過ぎず、中身は順当にBATTLESの路線を押し進めた現代的な作り。かつプロデューサーのHowardさんが作曲に参加しているため、歌メロに関してはとても分かりやすい。また9thの頃「ヴァースでスクリームして、コーラスでクリーン・ヴォイス、ってお決まりのパターンにはうんざりした」と語っていたのに、今作はほとんどがうんざりしたはずのメタルコア形式に当てはまっています。これもHowardさんのアドバイスかな。ちなみに前作に出てきたコーラス部隊は使われていません。

終盤に3曲バラード調が並び、人を選ぶかもしれない構成です。⑨が疾走なのかミドルなのか分からなくなるような中途半端な出来なのが拍車を掛けてしまいます。いっそのこと全編スラッシュビート&グロウルで突っ走ってくれれば残りの3曲がより活きた気がしなくも無い。

またソロの後一旦静かになってまた盛り上がる展開を①④⑧⑩⑪で使っています。5曲も似た流れをやってちゃワンパターンと思われてしまっても仕方ないですよ。


最後に、作品としては間違いなく好きなんですが、唯一無二感というか、言葉に言い表しにくいのですが、そういったものが前作より少し弱くなってしまった印象が何故か付きまといます。なんでしょう、この感覚。


【音質】
個人的に残念。ギターにもーちょいエッジがほしいです。ドラムはスネア音が跳ねるような軽さが速い曲だとイマイチ合わない。てか②と⑨、ツーバスの有無等で別人が叩いてる雰囲気が感じ取れます。どちらが叩いているかクレジットがほしかった。


【演奏】
リフは基本的に弱めです。たまにおっ⁉︎となる程度です。リフメーカーがこのバンドには欲しい。一番良いのはJesper氏が戻ってくることなんですが、今更それも望み薄だろうし。

ギターソロもBjörn氏はフレーズをデータベース化して同じようなメロディを弾かないように注意を図っていくべきではなかろうか。それかコレ系の音種なら一時期実施していたようにソロ排除しちゃってもいいんじゃない?


【総評】
前作がお好きな方なら文句無しに気にいると思います。それ以前のファンの方は、ちょっとわかりません。ただ先行公開された曲よりアルバム曲の方が私はかなり好みでした。

前作のツアーでライブ作品はリリースされなかったし、この作品で回ったツアーでBlu-rayが出ることを祈っています。どんなセットリストになるのか...とても楽しみです。


【チャート】
ビルボードチャートまた下がった...。


121位?前作が60位で倍近く順位が下がってます。


はぁ。

これで益々「ほら見ろ!メロデスやらないからだ!」層の方々が勢いを付けてしまいますね。


それだけでなくフィンランドで初登場4位?

確かにフィンランドの方々が好きな音種では無くなっているかもしれませんがショック...。


【MY TOP 3 TUNES】
・(This is Our) House
・In This Life
・Stay With Me

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オマケ
 

1.Lunar Strain (1994)


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これを代表作に挙げるリスナーもいますが、どの曲もあまり洗練はされておらず正直無駄と思える箇所も少なくない。メジャー感は無く、サウンドスタイルの変化に伴い全くライブで演奏されなくなった作品。それも致し方ないことかもしれません(①は今でもたまに演奏されます)。

しかしインディーズ時代に出した音源を超えられないバンドが多く存在するのも事実で、このアルバムにもきちんと良いところはあります。他の作品より露骨なドラッド・フォーク色が強いパートが多く、メタルパートを更に削りそちらの割合を増やしてくれた方が尚も素晴らしい作品になったと個人的には思います。

⑨バンド名を冠した曲を作るには早過ぎた。おかげでほとんど演奏されずに眠ってしまったのが残念。「バンド名曲はトレードマークだから」と止むを得ず演奏し続けているバンドは知っていますが、In Flamesはこの曲を切りました。賢明な判断かと。

【My Top 3 Tune】
・Behind Space
・Everlost (Part I)

57 /100点
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1.5.Subterranean (1995)


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【感想】
かつての代表曲であった①は、今聞くとDark TranquillityのPunish my heavenと同様にB!誌に祭り上げられたイメージしかありません良いっちゃいいんですが、あの時代のこの曲に対する熱狂振りは少々異常でした。それ以外もなんとも言えない感じの曲ばかり。

【My Top 3 Tune】
・-

34 /100点
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2.The Jester Race (1995)


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【感想】
Andersがボーカルを務めた初の作品。中途半端なデスラッシュパートがあり、そこを削って基本全曲ミドルテンポに統一したら更に纏りが出たかと。

前作より曲の水準が高く、耳を引くフレーズが多々あります。④は未だに演奏される人気ナンバーですし、謎のキーボードが突如入り乱れてくる見事なインスト⑨も良いです。

【My Top 3 Tune】
・The Jester Race
・Moonshield
・Wayfaerer

58 /100点
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3.Whoracle (1997)


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【感想】
まさにメロディアス・デスメタル。作品として纏まりが出て方向性が明確になった感じ。彼等のステージがインディーズからメジャーに上がったようにすら思えるレベルアップぶり。

タイトルトラック⑫はドラマティックなインストで、現在でもライブ後のSEに使えそうな厳粛な雰囲気が素晴らしい。曲によってはスクリームだけではなく、歌と呼べるレベルではありませんが、ボソボソ呟いたクリーンを混ぜて緩急を付けています。

【My Top 3 Tune】
・The Hive
・Jester Script Transfigured
・Whoracle

65 /100点
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4.Colony (1999)


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【感想】
前作の叙情性をそのままに、より普遍的なヘヴィメタル方面に舵を取った作品。ドラッド・フォーク要素をきちんと感じ取れ、文句無しに当時の代表作でありオススメ。

①は根強い人気を誇り、リフの破壊力は本物。中間部のアコースティックパートが美味しすぎる⑤、故郷の民謡をカバーしたアコースティックナンバー⑥、 吠えるだけでなく歌心も示そうとした意欲作兼キーマルセロのソロも含め名曲⑦、タイトルとメロディから大樹を連想させる⑧、リメイクを本編に入れるのは止めてほしいし要らない⑨、珍しくツーバス裏打ち疾走を組み込んだまさにタイトル通りのナンバー⑪と完成度の高い楽曲が並びます。

ただし1stの再録である⑨は蛇足。流れにも作風にも全然合わないし、是非iTunesからも外しましょう!

【My Top 3 Tune】
・Embody the Invisible
・Zombie Inc.
・Coerced Coexistence

74 /100点
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5.Clayman (2000)


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【感想】
更にドライな正統派に進化した名作。前作より方向性を絞り、曲毎のカラーが統一された印象を受けます。今やバンドのトレードマークでもあり、アレキシライホも聴いた瞬間背筋が凍ったという代表曲③を始め、曇り空から光が覗くチンダル現象が脳裏に浮かぶ(?)ギターソロが最高な⑪と良曲の目白押し。このアルバム以降はシンセサイザーが大胆に導入されるので、余計に硬派なバンドサウンドに感じます。

私のインフレイムス初体験作でもあります。

【My Top 3 Tune】
・Bullet Ride
・Only for the Weak
・Swim

75 /100点
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6.Reroute to Remain (2002)


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【感想】
拒絶反応を示した方も数多くいますが、私としてはバラエティの富み方が絶妙な超名盤。

本作はかなり大胆にクリーンボーカル&キーボード&モダンヘヴィネス調のギターを導入し大きな変化を迎えました。なぜかボーカルを引っ込み気味にしたりリードギターの輪郭をボヤけさせたりリズムギターの音量が大きくした辺り、過去のメロディアス要素が残っていることを表面上隠そうとしているように取れます。なら完全に排除してしまえばいいのにと個人的には思うのですが、それじゃあ昔のファンが誰一人納得しないことを危惧した苦肉の策なのかもしれません。

シンセメロディに導かれるように始まり、メタルコア形式ブライトなサビを備えた名曲①、アグレッシブさとメランコリーなメロディが光る②、久々にストレートな裏打ちスラッシーな③、往年のリフとクリーンボーカルのサビが見事調和した④、ビョーン氏お気に入りのリフなのか演奏回数No.1の⑤、モダヘヴィと混血の隠れた名曲⑥、鬱蒼としたクリーンが映える⑦、珍しくサビまで疾走する明朗な曲調が素晴らしい⑧、オルゴール風イントロも音量小さめのソロもGoodな⑪、サビ以外はかつてのファンも納得しそうな過去作に通ずる曲調⑫、問題作にして民謡風名曲⑬、今後の方向を指し示すオルタナティブメタル⑭。個人的には曲数多めながらキチンとキャラ立ちした楽曲がバランス良くまとまっていると思います。

何より歌メロ。ちゃんと作り始めて日が浅いためか王道の定石から外れたようなメロディが多く、独特の浮遊感を伴いこの作品をより個性的にしていると思います。

唯一の不満はこの霞みがかった音質。切実にリマスターして直してほしい。

【My Top 3 Tune】
・Trigger
・Egonomic
・Metaphor

80 /100点
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7.Soundtrack to Your Escape (2004)


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【感想】
ヘヴィネスを増量しつつ、テクノロジーを駆使したデジタルチックな新機軸も加えつつ出来上がった名作。前作に引き続きヴァースはスクリーム、サビはクリーン(一部では逆もあり)のメタルコア風味のものが多いです。アンダースのスクリームが細めでクリーンもやたら淡かったり重ねていたりの小細工が弱点を更に強調してしまっている感じ。ただそれがこの作品の個性にもなり得ているのでイーブンですかね。音質は極上で、彼等の作品中最高。

やや攻撃力不足だが(汗)何の誤魔化しもない突進系①、デジタルとの共存を見事に成功させている②、Luna Seaチックな淡いリフが美味しすぎる③、隠されたソロが光る浮遊系④、慟哭のサビメロを備えたキラーチューン⑥、サビで哀愁のデジタル音とグロウルが静かに映えるデスバラード⑦、一撃必殺の⑩、みんなで歌えるサビを持っている⑪と、抑揚の薄い叙情メロディが詰まった異色の冒険作。

焼き直しで唯一の捨て曲⑧がちょっと残念。

【My Top 3 Tune】
・Dead Alone
・My Sweet Shadow
・Evil in a Closet

71 /100点
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8.Come Clarity (2006)


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【感想】
世間では最高傑作に挙げられることが多いです。私もそれには完全同意。6thより導入されたモダン要素と、それ以前のメロデスを融合させた傑作。これまで作られたツービートデスラッシュ曲を全て過去の物にしてしまう破壊力を秘めたものばかりです。アメリカナイズされ過ぎと言う方も居ますが、これだけカッコ良ければいいじゃないですか。

スピード感を爆発させ甘すぎないサビで合唱するライブ向けの名曲①、ファルセットのようなしなやかな歌メロが印象的③、女性ボーカルと見事なコントラストを醸す④、ひたすら攻撃的でアメリカン⑤、鬱的なクリーンバラード⑥、リフが強力でスレイヤーチック⑦、ブリッジの歌メロ裏のギターが最高で、まさにインフレな曲⑨、一度目のブリッジはギターフレーズのみになる憎い演出が堪らない⑩、サビもグロウルなストレートなメロスピ⑫と白眉の出来。

ただ唯一の不満は、デスラッシュ曲①⑤⑦⑩においてサビは全てテンポダウンするため「疾走感の持続」という点で難あり(④は逆)と捉える方もいるかもしれません。また⑬のバンド演奏が入るスローパートは出来が良い上にアルバムにも無い曲調のため、独立した曲として練り上げて混ぜたら更にバラエティが増したのですが、勿体無い。

【My Top 3 Tune】
・Take This Life
・Crawl Through Knives
・Versus Terminus

83 /100点
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9.A Sense of Purpose (2008)


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【感想】
メタルコアの先駆者的な立場でありながらその手のバンドが氾濫していたことに嫌悪感を覚えたのか、「ヴァースでスクリームしコーラスでラーラーと歌うのはウンザリだ」とサビもスクリームでメロディを歌うことに挑戦しています。意気込みは買いますが、スクリームのみで歌うとメロディが明瞭にならないためか普通の声も重ねてしまっている行為が「マズイ!スクリームのみではこのバンドの現在の音楽性は成立しない!」と自ら答えを出しているようにも捉えかねられません。結果、中途半端な印象を拭えない作品。本作を聴いていると彼らの進化が止まった感覚にすら陥りました。

狙いは決して悪いものではなかったと思うのですが、楽曲自体がちょっと弱い。②⑨⑫の爆走パートを全部削り①のようなハーフ型に統一した方が作品としても個性が滲み出るし、前作との違いがくっきり浮き出る可能性があったので惜しい。音質に迫力が無いことも痛いです。ただメロディが歌えているかいないかはさて置き、ボーカルのスクリームとクリーンの中間のような発声は悪くないです。線の細さが解消されたようにすら聴こえます。

【My Top 3 Tune】
・I'm the Highway
・The Chosen Pessimist
・Drenched in Fear

55 /100点
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10.Sounds of a Playground Fading (2011)


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【感想】
前作から更に歌を聴かせる方向にチェンジした意欲作。ほとんどをミドルテンポに抑え、ボーカルはよりエモーショナルに。彼のクリーンはウッフンアッハンとクネクネしたイメージを持たれますが、徐々に芯の通った声を発生するように成長(?)しています。相変わらずスクリームとクリーンの中間の声ですがサマになってきているし、In Flamesらしさ満点のギターワークの充実も聞き逃せません。

サビ裏のキーが美しい①、新スタイルの彼らを象徴する曲②、ギターハーモニーが美しい⑤、初期の雰囲気を持ったギターが聴ける⑥、ギターソロが美味しい⑦、往年のサウンドを現在の型で構築した名曲⑫、明るくも哀愁溢れたメタル要素皆無のバラード⑬、と統一感ある楽曲とサウンドで纏まりがあります。昔からのファンからは疾走感が無くなったと言われますが、そもそも「疾走感が必要」というメタラーの認識に違和感がある私にとっては何らマイナスではありません。むしろ④⑩のような「とりあえずIN FLAMESのアルバムだから速いの入れておこっか」的に作られた低クオリティな曲は全然要らない。

懸念を上げるのなら、まだまだサビが似たものが多い点ですかね。またパーマネントなキーボードプレイヤーが居ないことに懸念を覚える程に電子音の装飾が施されています。ライブでは音源を流すのか、カッコ悪いけど(汗)

【My Top 3 Tune】
・Sounds of a Playground Fading
・A New Dawn
・Liberation

67 /100点
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11.Siren Charms (2014)

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【感想】
本作ではとうとうボーカルのスクリームとクリーンの比率が逆転し、③④⑤⑥⑨⑪はほぼクリーン。メロデスをやってほしいファンから悲鳴が聞こえてきそうですが、私の目にはとても素敵な挑戦に写りました。キーボードを減らしてバンドサウンドを前面に押し出し、全体を通して無機質ながらも哀愁を感じる作風が文句なしに素晴らしいです。歌メロの作りが甘い曲もいくつかありますが、かつてはスクリームでボエボエ吠えるのが関の山だったことを考えると、右肩上がりと捉えるのが素直な見方ではないでしょうか。

感想はコチラ

オルタナ路線に傾倒しているため昔からのファンには当然ウケが悪です。平均点は高いが飛び抜けたキラーチューン不在なのが拍車を掛けています。

【My Top 3 Tune】
・In Plain View
・With Eyes Wide Open
・Rusted Nail

70 /100点
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12.Battles (2016)

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【感想】
前作よりはスクリームの比重が大きくなったものの、メタルコアに飽き飽きしていたはずのAndersがヴァースはスクリーム→コーラスはクリーン路線を推し進めています。

昔からのファンの方々からは「メロデスやってくれ」や「In flamesにこんな方向性誰も望んでいないだろ」といった反応もチラホラ。こういうことを言う方々は、似たり寄ったりのメロデスが量産されて嬉しいと感じるんでしょうかね。過去の作品と比較される宿命はどんな方向性で進もうが同じでしょうし、類似した劣化品が増えるより路線を変えて行く方が賢明だし、有意義だと私は感じてしまうのですよね。

何より単純にオルタナティブメタルも大好物な私はこの方向性も大賛成。徐々にこの方向性に進んでいる過渡期に作り出された作品もそれぞれにカラーがあり、素晴らしい。これで下手にメロデスに舵を取り直したら残念です。故に⑦のようなデスラッシュの作り損ないは不要。

感想はコチラ

【My Top 3 Tune】
・The End
・Here Until Forever
・Wallflower

76 /100点


【総括】
初期からのファンの方はよく「Jesper節」がどうのこうのと語りますが、彼の元来の気質はリズムギタリスト。本人自らそうインタビューで答えています。

リードギターやソロに関してはその時代のギタリストが主に担当しているようです。Used & Abused: In Live We Trustに収録されているEmbody the InvisibleのメインリフをJesper氏は弾いていたので、少なくともColony期までは楽曲の作曲率が高そうな雰囲気を感じます。

A Sense of Purposeでのインタビューでも「ほとんどBjörnが曲を書いた。けど仕上げはAnders含めた3人でやるんだ」と語っていました。

Clayman以降はリフはともかくメイン作曲者はBjörn氏に代わっていたと考えるのが妥当ではないでしょうか?それならばメロディアスデスメタルからオルタナティブメタルへ音楽性が変わっていったのも頷けます。

もちろんJesper氏もその方向性に賛同していたからこそ、前の路線を固持しなかったのだと思います。

なのでメロデス時代のファンの方々。過去に拘らず今の路線のIn Flamesも認めてあげて下さい。



…あ、やっぱダメ?


そっか…涙