富の偏在も、貧困も、戦争も、世界の不幸は全てバイアスから産まれる。

「バイアス」という言葉は、電子工学でも使われるが、

社会学的には「偏見」「固定観念」「先入観」といった意味でも使われるとのこと。

ここでは分かり易く「偏り」という意味にしておきましょう。

この「偏る」現象は不思議だ。

たまたま、アットランダムに、どこかに集まってしまうのではない。

何かの力で吸い寄せられるように、どこかの特異点に、過度に集中するのである。

富とか金は、まさに特定の人に偏る。

世界の富は、1割の人が７６％を所有しているという。

世界の1%の超富裕層の資産は、世界全体の個人資産の４割近くを占めている。

「偏る」ということは、いつの間にか、どこかに過度に集中してしまう事でもある。

何兆円もの資産を持つビル＝ゲイツやジェフ＝ベゾスやマーク＝ザッカーバーグは、

ふつうの人々より、何千倍も何万倍も働いたのか？何千倍も何万倍も偉いのか？

彼らはすばらしいひらめきを得て、必死に働いてきたのは確かだろう。

でもたまたまうまくいったお陰で、宝くじが当たったように巨万の富を得た。

一度成功すると、世の金や富が倍々ゲームのように集まってきてしまい、偏る。

その上、一度偏った富は容易に元には戻らない。

下々の貧しい人たちに分配されたらいいと思うが、絶対そうはならない。

ロスチャイルド家は、今も大金持ちであり続けている。

成功するスタートラインはみな同じで公平かと言うと、決してそんなことはない。

大金持ちのトランプさんの父親は、ニューヨークの有名な不動産屋さんだった。

日本でも、先祖代々から都会にいい土地を持つものは、初めから大金持ちだ。

人類が、狩猟社会から農耕社会に移行していった時から、富の偏在は始まっている。

あれこれと知恵を巡らして、悪い奴が大量の穀物を独占していったのだろう。

当然、富の偏在を巡って人々の間で争いが起こり、戦争の歴史が始まる。

工業社会になると、資源の獲得を巡って、世界大戦まで起きるようになった。

地球のことなので仕方ないのだが、石油の世界の資源分布も偏在している。

太平洋戦争の原因も、日本がアメリカに石油を止められたことが大きい。

今でも、石油の産油国と輸入国との間で、仁義なき駆け引き・闘いが行われている。

芸能界や芸術の世界でも、人気や権威や富が一部の人々に偏り、バイアスがかかる。

例えば、なぜ矢沢永吉やユーミンがいつまでも人気があり、大金を稼げるのか？

これもバイアスの力で、そのお陰で、多くの有能な才能が埋没して浮かばれない。

昔からこのことを、「一将功なりて万骨枯る」と言う。

明治以来の”立身出世”が活きていた頃は、みな必死に勉強し、いい大学を目指した。

高度成長期には、身を削って死ぬほど働いて、会社の中の立身出世を目指した。

でも今は、子どもたちの勉強意欲は低下し、大人も必死に働くことはなくなった。

国が落ちぶれて、日本人の活気が落ち込んでいる原因は、次のことが大きいのでは。

・初めからのスタートラインの差は、個人ががんばったところで是正されないこと。

・私有財産制度がある限り、富の偏在はほとんど是正されることがないこと。

これらの事実が、ボディーブローのように国民に効いてしまっているのだろう。

人間そのものも、バイアスがかかり過ぎると特異な人となる。英雄たちがそうだ。

常人にはない集中力を発揮し、歴史を動かしたり、大発明・大発見したりする。

でも、このバイアスが強くかかった人と暮らすことほど、大変なことはない。

フリードリヒ＝ニーチェは言った。「女子供の前に英雄はいない」

全ての不幸はバイアスから産まれる！ (>_<)