”ぶちかまし”は、相撲の立ち合いで頭同士をぶつける技である。
テレビで視聴しても、ぶつかった瞬間、”ゴツン”という大きな鈍い音が聴こえる。
頭蓋骨が割れたり、額を切ったりしないのが不思議だ。
立ち合いの衝撃は、1トンを超えると言われている。
それは、軽自動車がこちらに突っ込んでくるのと同じ衝撃とのこと。
それに耐えられるよう、力士たちは毎日ぶつかり稽古に励むと言う。
力士たちはぶちかましを受けた際、一瞬で息ができなくなることもあると言う。
いくら毎日鍛えても、まともに頭同士がぶつかったときは意識を失うのだろう。
貴景勝が首を痛めているのは、このぶちかましの積み重ねからきているに違いない。
女性にも世界中に相撲選手がおり、相撲に親しむ人も多い。
彼女たちも、ぶちかましをしているのだろうか?
少年相撲ではぶちかましを怖がる子が多く、それが鬼門になると言う。
大相撲のしきたりやルールは、歴史的な由緒あるものだ。
ぶちかましも当然、相撲取りが江戸時代から使ってきた技であろう。
でも、現代のスポーツ・格闘技として、ぶちかましは許される技なのだろうか?
相撲は、闘牛であってはいけない!
第52代横綱の北の富士は、こう語っている。
「僕は頭でいくのがこわいから、やったことがない」
「新弟子の頃に脳震とうを起こして…。それからこわくて、突っ張る相撲になった」
「あんなこわいぶちかましの相撲はもう嫌です。人間のやることじゃない」
もちろん、ぶちかましだけが危険なのではない。ある力士が言った。
「200キロある人がぶつかってくる、毎日が交通事故です」
ケガで休場する力士は多く、おまけに長く休むと一気に番付が下がる仕組みもある。
引退した力士がよく相撲中継の解説をしているが、こんなことを言う。
「この力士がこんなにけがをするのは、しっかり稽古していないからですよ…」
結局、昔ながらの根性論で一刀両断にする。
上げ馬神事は、「馬の虐待だ!」という叫びで、既に改善が実現されている。
大相撲も、「力士の虐待だ!」という声がそのうち上がるかもしれない。
馬だと虐待になって、力士だと虐待にならないというのは、やっぱり不合理だ。